「やめて…。私…ラージャンが嫌いなの…。」
その人は、どうしてもラージャンだけは一緒に行ってくれない。
それどころか、ラージャンの素材を見ただけで黙りこんでしまう。
僕は、それがずっと不思議だった。
母が後ろから声をかけてくる。
「今日くるお客には、ラージャンの話はいっさいするんじゃないよ。」
俺は何故か聞いてみた。
聞いた話だけどね、と母は語りだす。
彼女には、恋人だった仲間を失った過去がある。
彼女から希望を奪ったのは、激昂ラージャン。
それから数年もの間、彼女は森の中の家に閉じこもり、少年ハンターが迷い込んでくるまで街に姿を見せなかったという。
こんにちは、と少年が入ってきた。
少し遅れて、少し年上の女性も姿を見せる。
二人の注文は、装飾珠の取り付けだった。
仲の良い姉弟といった風情の2人。
帰り際、少年はぽつりと言う。
「僕、本当は、怒天を作りたいんだ。」
その言葉に、年上の女性の動きが瞬間止まる。
だが、何も無かったかのように店の入り口をくぐって行く。
少年は、彼女の背を見つめる。
母は、少年に、まあいずれは作れるようになるよと言った。
次に店に来た時、少年は自分で、怒天の胴と腕を予約注文した。
素材はこれから集めます、と凛と宣言する。
悲しげな表情で、彼女は少年ハンターに問う。
どうしてラージャンの装備が欲しいのと。
「知っているでしょう、私の大切な人は、ラージャンとの闘いで、帰らぬ人になったの。あなたには絶対に行って欲しくない…。」
少年は答える、精一杯の想いをこめて。
「貴女がこの世界で、前に進んでくれることを願うからです。」
彼女はそっと目をそらした。深い深い悲しみをたたえたその横顔。
少年は、彼女の頬に手をやり、そっと自分に向かせる。
「貴女から見たら僕はまだ非力な子どもで、貴女の胸の中の人には、遠く及ばないでしょう。」
彼女のまつげが伏せられる。
「…だけど、僕は。
必ず越えてみせます。
その人を。」
言い切る少年ハンターを、年上の女性ハンターは見つめる。
なんとも言えない表情で。
つづく
とわ&GG共著