婚前旅行 5 | 徒然とわ日記

徒然とわ日記

日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
雑記帳みたいなものです。
見てくださったら嬉しいです(^_^)/

虎姫の両親への挨拶を済ませ、村中から盛大に祝われた2人。
お土産をアプトノスの背いっぱいにもらい、2人は温かな村を後にする。

いつまでも見送ってくれる虎姫の両親。
次に彼らに会うのは、婚礼の祭典の時だ。
まだ少し、先の話。


「これからどうする?」
ワグナーは、虎姫と手をつないで、のんびり歩いていた。
アプトノスの歩みに合わせるので、自然とゆっくりになる。

虎姫、小首を傾げてワグナーを見る。
「あのね…。」

ワグナーは、可愛いなあと、微笑み返す。
「うん?」

「あたしも、ワグナーのご両親にご挨拶したいな。」

「……………」
口をつぐむワグナー。
その固い表情に、虎姫は不思議な感覚を抱く。

「どうしたの?」

ワグナーは、自分が家を出て、ハンターになった経緯を話した。

虎姫は、頷きながら、真剣に話を聞く。

「そうなの…。
…でも、それから何年も過ぎてるのよ。
きっとお父様も赦してくれるはずだわ。
だから、一緒に会いに行きましょう。」

ワグナーは考えた。
両親はたしかに心配だ。
それに姉妹たちも。

――無断で家を飛び出したわたしを、父と母は許してくれるだろうか。
…今更、のこのこと顔を出して良いのだろうか。

しかし、会ってもらえるなら、わたしの思いを話しておきたい。

「そうだな…。虎姫、キミがそこまで言うなら、一度帰ってみるか。」

ここからなら、半日もあれば到着するだろう。




「何だ、これは…。」

「どういう事なの…?」

そこにあったのは。
朽ち果てた屋敷の跡。

苔や背の低い雑草が、建物であったであろうものを覆い隠し。
当時のそびえ立つ屋敷の面影は、微塵も残っていなかった。

「………。」

ワグナーは、門扉の残骸に手を触れた。
黒く変色した、あれほど頑丈だった金属製の門。
彼の手が触れた箇所が、脆くも崩れ去る。

何も言葉が出なかった。

何年、経つのだろう…。

もとより、ここには戻るつもりは無かった。

――無かったけれど。


ワグナーは黙り込んだままだ。
「……………。」

虎姫は、そっと声をかける。
「ワグナー…」


しばらくの沈黙の後、彼は虎姫を抱きしめた。

「虎姫…キミに話しておきたい事があるんだ。
…聞いて、くれるかい?」



つづく
とわ&GG共著