「なあ、セシオス。いや、今はワグナーか。」
チコ村からの船の甲板で、ガロンはワグナーと並んで波を眺めていた。
「なんだ?」
ワグナーの銀の髪が夏の風にそよぐ。
どことなく育ちの良さそうな横顔を見ながら、ガロンは尋ねた。
「そもそも、どういう事情でおっさんとはぐれたわけ?」
おっさんというのは、わたしを幼少期から育ててくれているジョウジという爺やのことだ。
わたしは現在、大半の記憶をなくしている。
最初チコ村に流れ着いた時には、自分の名すら思い出せなかった。
何ヶ月か過ぎて、ようやく少しずつ思い出してきたところだ。
「確かあれは、夏の入り口だったな。
わたしと爺やは、ザボアザギルの狩猟依頼を受け、氷海へ赴いた。」
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「ザボアザギルの弱点って何だっけ?」
ハンターノートをぺらぺらめくるワグナー。
このノートに人から聞いた情報、実際戦った感想などを書き留めていた。
「雷、次いで火が弱点属性ですな。
部位で言えば、腹。入るダメージは、通常時、氷まとい時関係なく一律ですぞ。
若は切断系ですから、腹、背びれ、尻尾を狙うと良いでしょう。」
ワグナーはジョウジの助言を書き足していく。
ふと、バルバレで会ったトワという娘ハンターを思い出した。
彼女も色々教えてくれたな…。
…どうしているだろうか…。
「わ・か!…聞いていますか?」
ジョウジは自らの大剣に砥石をかけながら、ワグナーに問う。
ワグナーは慌てて自分の太刀を抜き、砥ごうとする。
「だから、その太刀は氷属性でしょうに。」
……そうだった……。
エルクはウルクススだった…。その素材で作ったこれも、当然氷属性だ。
鍔の耳飾りが揺れる。
「雷…雷…」
装備ボックスを漁る。
「王刀ライキリ改しか無いんだけど…いいかな…」
王牙刀【伏雷】を作るには、鎧竜の延髄が無いのだ。龍人商人に海竜の蒼玉と交換してもらう必要がある。
「集会所が6にならないと、まだ伏雷は難しいですぞ。」
ジョウジが、まるでワグナーの頭の中を見透かすように声をかけてくる。
ワグナーは苦笑いした。
なんでもお見通しか。
「油断は禁物ですぞ。
相手は大自然です。
何が起こるかわかりませんからな。」
「わかってる。」
支度を整え、ギルドの受付嬢に声をかける。