恵まれた衣食住の環境の下で,やりがいのある仕事を続けられる人は幸せだろう。
そのためには経済成長が必要になる。衣食住の環境は経済活動によって与えられ,経済活動が続くためには,人々が知恵を絞って仕事を続けなくてはならない。
経済の成長が持続する社会では,食料の供給が人々に行き渡り,医療が進歩する。栄養価の高い食料をとり続ければ,人々に糖尿病や高血圧がおこり,過食の人も増える。すると,その管理のための医療が発達するというように。
主な経済活動が,その日の食料を調達することで精いっぱいの時代では,医療と言えば,物理的なケガに対応する程度でよかった。それが基本的医療の姿である。
経済成長する社会においては,栄養状態が改善され,医学も進歩するので,日常生活を維持するための医療は十分であるのだが,やはり医療も市場を拡大して儲けたくなるのである。がんのような老化現象の延長ともいえる状態を病気と見なして,それまで対応していなかった健康状態に対して,様々な治療を行うようになった。しかし,もっと収益を上げたいということで,健康な人たちで,病院に行っていない人たちを取り込むために,定期健康診断を導入した。
定期健康診断で,コレステロールや血圧の基準を厳しくして,これらを基準内にとどめる薬を継続的に飲むように指導する。そのような技術のために医学研究が行われる。統計を操作して,エビデンスをつくる。こうして,継続的な通院と定期健康診断をセットで永続的な通院患者を発掘する。
さらに,もっともっと収益を上げたくなったら,どうすればよいだろうか。定期健康診断に引っ掛からない健康な人たちを取り込むためにはどうすればよいだろうか。
すると,定期健康診断にストレスチェックを入れて,通常の医学的検査のいらない精神医療への道もひらく。さらに,ありふれたインフルエンザ,コロナなどの感染症に対するワクチンの定期接種の道もひらく。
つまり,健康な人たちを医療の対象にするのである。市場拡大戦略である。もちろん,乳児死亡率の低下や寿命の延長もおこり、人々は幸福にもなる。しかし,過度な医療行為は人々を不幸にもする。
コロナ禍の超過死亡の増大は,100年に一度の非常に怖い感染症が引き起こしたものではない。医療界の過度なビジネス主義が引き起こしたものである。
医療の進歩も,経済成長の一つとみることができる。経済成長も過度になると,バブル崩壊や金融危機がおこり,逆に不幸な人々も増やすことがある。
必要のない治療によってお金をとられた上に,健康も害することにならないように十分に気を付けなければならない。
これを分かったうえで医療に対応することが,人々の本当の幸せをつかむことができるだろう。