以前、双極Ⅱ型障害について専門家の考えを紹介したことがある。以下はその引用:

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アメリカから来た疾患ブームの中、加藤忠史氏は著書「双極性障害」(2009年1月10日、筑摩書房)の20ページから22ページにかけて次のように書いています。

 

・(境界性パーソナリティー障害のような)患者さんに双極Ⅱ型障害という診断を付け加え、薬による治療を積極的に試みることが、正式な治療として認められるようになった

・最近アメリカでは、双極性障害の人に、パニック障害やPTSDなどの不安障害との合併が多いことも、報告されるようになっています。

・(DSM改定に向けて、双極Ⅱ型障害の)診断の適応範囲を広げようとするのは、最近のアメリカの傾向です。双極性障害の診断が広がりだした時期は、リチウム以外の双極性障害治療薬が増えてきた時期と重なります。・・ちょっと注意が必要だと思います。

 

(略)

 

DSM改定後、加藤忠史氏の本「うつ病治療の基礎知識」(筑摩書房、2014年2月15日)の195ページに次のような記述があります。

 

・どこから軽躁状態とするか判断に迷う場合もあり、診断は難しい

・特化した臨床試験は少ないために、参考になるデータは乏しいのですが、・・・

・心理社会的治療については、Ⅰ型との違いについての明確なデータはありませんので、・・・

 

(略)

 

加藤氏も執筆者の一人である日本うつ病学会治療ガイドラインⅠ.双極性障害第3回改訂版(2017年11月30日)の冒頭。

 

「なお、現在、精神疾患の診断・統計マニュアル第5 版( DSM-5)では、双極性障害はⅠ型とⅡ型に分類さ れているが、これらを分けた報告が少なかったことよ り、本章の作成にあたっては、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ 型障害を区別しなかった。同様の理由で、急速交代型 (ラピッド・サイクラー)も区別しなかった。」

 

加藤忠史氏のTwitterのリンク(https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27)から

 

「双極Ⅱ型障害は、ほとんど躁うつ病に近い場合もありますが、うつ病やパーソナリティーの問題に近い場合もあり、現状では、少々輪郭のはっきりしない病名です。」

「双極Ⅱ型障害の場合は、ほとんど双極I型障害と同じ治療で良い場合から、薬物療法だけでは不十分で、精神療法が重要になるようなケースまで、色々なタイプの方が含まれていますので、治療についても、一概には言えない部分があります。」

 

このように、専門家も、双極Ⅱ型障害という病気がかなり怪しい病気だということをはっきり発信するようになった。

 

疾患ブームとは恐ろしいものである。病気ではない人が病気とされることによってどれほどの害を被るか、とくに医師は深く考えないのだろうか。本当に重症化するという状況にあれば、様々な治療を試みるのもよくわかる。しかし、双極Ⅱ型障害の場合は、全く無症状または通常範囲の気分変動なのに、大量の薬物を投与されて思わぬ副作用で苦しんだり、場合によっては死亡したりと身体的にかなりの害を被る。さらに、病気の偏見により社会的差別をされたりもする。

 

そもそも、精神疾患というためには何らかの社会的支障が生じていなければ、治療の必要もないし、薬物投与を行うなどもってのほかである。行うにしても、きちんとインフォームドコンセントをして短期間に限るべきである。


社会的支障がないのに薬物治療を勧めてきて「重症化しないうちに薬物によって対策をとる」という精神科や心療内科の医師がいたら、すぐに「その科学的根拠は?」と問い返そう。全く答えられないはずである。多くの場合は、医師の興味本位で薬物投与をしているか、製薬会社の販売戦略でしかない。

 

パーソナリティーの問題であれば、医師は薬物投与がしにくいが、双極性障害と診断すれば、高価な抗精神病薬まで様々な薬物投与を試すことができる。

 

双極Ⅱ型障害という病気が存在し続けるのは、患者のためではなく、医療側の利益確保という側面が大きいというのが実態である。

 

精神疾患の軽症化には十分に気を付けなければならない。