これからの夫の供養のこと、仏壇など‥何もかも無知な私は、母に教えてもらった。
供養については、夫が生前話してた。
「僕は空海が好きだから、真言宗にしてくれ」
と。
私は夫の死後、急いで真言宗のあるお寺をネットで探しまくった。
有り難いことに、案外近い場所にあるのを見つけ、即電話をかけ、お寺の方が
「戒名を早く作らないといけないね。直ぐにきてお話を聞かせてください」
と言われたので急いでお寺に行った。
そこには、年老いたお坊さんが待ってくださっていた。
部屋に入り、お坊さんは何やらバタバタと探している。
「あれー?どこかなー」
「どこに何があるのかさっぱりわからんなー」
独り言を言いながら‥。
そして、それをやっと見つけたらしく、私にお茶を差出してくれた。
どうやらお茶を探していたらしい‥。
私はその時、内心
「このお坊さんで大丈夫なのかな‥」
そう思ってしまった。
そして、お坊さんは私と対面に座り、
「さて、亡くなったご主人さんのお話を聞かせてください。」
私は夫の生い立ちから亡くなる寸前のことを全て話した。
お坊さん、「素晴らしいご主人さんですね。」
お坊さんはなぜか涙目だった。
そして、お坊さんが話しだした。
「実はね、私の妻も半年前に癌で亡くなったんです。 一度は回復して家に戻ってきて家事もできていたんだけどね‥また具合が悪くなって入院してからはあっという間だった‥。だからね、奥さんの気持ちよくわかりますよ。 またね、困ったことに女房が家事も事務作業も全部やってたものだから、印鑑はどこにあるのかあれこれ毎日探しものしています。」
私はハッとした。
さっきのお茶‥
探していたんだ。
私はそんな事も知らずに‥。
と反省した。
私の夫の話をし、お坊さんの奥様のお話を聞き、約2時間もの話になっていた。
初七日までに準備しておくものなども丁寧に教えてくださった。
翌日は、母と仏壇屋に行った。
仏壇屋と戒名を入れる位牌は真言宗のもので母に選んでもらった。
それから座布団とか仏前用の食器など色々と購入した。
母が居てくれなかったら、無知で夫のいない日の中で、仏壇屋に行けてただろうか‥。
またその翌日はお坊さん(ご住職さま)から夫の戒名ができたとのことで、受け取りに行った。
夫に似合う立派な戒名をつけてくださった。
ここでも泣きそうになるのを堪えてご住職さまにお礼を言った。
そして、初七日の日がやってきた。
子供たちが学校から帰っている時間に法事の時間を設定してもらったので、午後6時から法事は始まった。
初めて聞く真言宗のお経。
じわじわと夫はもういないんだ‥という実感がでてきた‥。
こんな日が来るなんて‥一年前は全く考えもしなかったこと‥。
私も、子供たちも涙を流しながらお経を聞いていた。
そして、無事に初七日の供養が終了した。
供養終了後、ご住職さまにお茶と和菓子をお出しして、少し話をした。
ご住職さまが言った。
亡くなって49日の間は、故人の魂はものすごい速さであちらこちらへと飛んでいる。
それは故人が会いたい人や思い出の場所など。
だそうだ。
夫は誰に会いに行ったのだろう‥
きっと、S先生やあの人やあの人‥ ?
思い出の場所は沖縄、ハワイ、離島、香川、?
なんとなく想像できる。
初七日は終わった。
次の法事は49日だ。
時間が、日にちが過ぎていくのが嫌。
夫との思い出が遠くなっていくようで嫌だ。
その時の私はそういう気持ちだった。
落ち込む間もなく私にはやらないといけない大きな仕事があった。
そう。
夫の開業していたクリニックのことだ。