前回のブログにて書いたように、夫は自分の治療をした。


熱も下がり、自宅療養中、今までで一番といえるほど体調が良いのが目に見えてわかった。

私も子供たちも嬉しそうだ。


久しぶりに湯船に浸かりたいと言う夫。

お風呂を沸かして、夫を車椅子に乗せ、風呂場まで連れて行き入浴介助をした。

湯船に浸かって、フゥ~と息を吐く。

私、「気持ちいい?」

夫は「うん」と頷く。

私たちには当たり前のことが、夫には特別なことなのだ。

なかなか湯船から出ようとしない夫に付き合っていろんな話をした。

夫は「うん、うん」と頷くだけだけど、この時間はお互いに幸せだった。


高熱がさがり、ここ数日。

夫が苦しんでいない。

夫の表情が穏やかだ。


私は嬉しかった。


月は9月中旬。


夫のためにもうそろそろ冬支度を始めないと、と思っていた。


9月25日、この日も絶好調と言っていいほどの様子。

夫が寝ている姿を見れば分かる。

健康で元気であった頃の寝相だ。

脚をクロスしたり、寝返りをうったりしていた。

気切からの痰の音も聞こえず、静かな呼吸音だ。

夜8時、いつもより早く夫は寝入った。

そして子供たちは、夫が自宅療養になってから、自然と皆でリビングに布団を敷いて寝ていたが、この日に限って、三女以外は各各の部屋で寝ていた。

私はこんな静かで穏やかな夜はなかったもので、夫の呼吸音を聞きながら、散らかしっぱなしだった書類の整理をした。

もうそろそろ痛み止めの要求をしてくるかな?と夫の顔を覗いても、静かに寝ている。

窓の隙間から月の光が薄っすら差し込んでいる。

こんな静かな夜は初めてかもしれない‥。


日にち変わって深夜2時頃、私もうとうとして寝ることにした。


その2時間後の早朝4時、カタッと音がした。

私はパッと目覚めた。

(夫の自宅療養中は音に対して敏感になっていた)

直ぐに立上り、夫の方を見た。

夫はベッドから足を下ろして座り、鼻にティッシュを当てていた。

「鼻血?」

と私が聞くと夫は「うん」と頷いた。


数分間その状態で、私は止血するために保冷剤を準備していた。

私が夫の元へ戻ると、気切部から血液が流れ出していた‥。

これは‥これが阪大で言われた、「がんが取り巻いている頸動脈の破裂」

直ぐに分かった。

が、まだ夫は鼻血だけだと思っている。

私は冷静に冷静に、夫を怖がらせないように自分に言い聞かせながら、夫に

「鼻血だけだから大丈夫だからね、ちょっと痰を吸引するね」

といいながら、いつもの吸引と同じように気切部からの出血を吸引し続けた。

出血が止まらない、数分で夫も気付く。

夫が「救急車を呼んで」と口パクで言う。

私は吸引は外せないから大声で子供たちを呼び起こす。

「お父さんが出血した!早く救急車を呼んで!」

「タオルをたくさん持ってきて!」

子供たちそれぞれに指示をする。

吸引が追いつかない‥

夫の意識も朦朧としてきた。

「お父さん!お父さん!しっかりして!」

私は夫の背中を叩きながら叫んだ。

「救急車はまだなの!?」

怒り口調で長女に言う。

長女は何度も救急隊に連絡する。

まさかの道に迷ってるとのこと。

私の怒りはこれとなく高まり、電話口で話す長女に、「いい加減にしろ!とにかく早く来て!」と救急隊に聞こえるように怒鳴った。

床は血の海。

吹き出す血液は天井や壁まで飛び散っている。


末っ子は、怖がりトイレに引きこもっている。

救急車なんて待てない。

自分たちで連れて行こう。

そう思い、姉、友人に電話をかけるもさすがにこの時間、起きてくれない。

苛立つ私。

不安がり、泣き出す子供たち。


予定よりも20分も遅れて、救急車が到着した。

玄関先で救急隊が

「失礼しまーす。歩けますかー?」

また私を怒らす言葉。

「出血大量で意識は朦朧とし、自発呼吸も浅くなっています!歩けるわけないでしょ!」

救急隊「えーっとかかりつけの病院があれば診察券を出してください」

怒り狂いながら診察券を差し出す。

救急隊「阪大病院ですね。受け入れてくれるか電話してみますね」

私「そんなの救急車の中で電話できるでしょ!早く救急車に運んで!!」

救急車に夫を乗せて私たち子供たちも乗る。

末っ子が怖がってトイレにこもったままだった。

子供たちが

「お母さん、〇〇がまだトイレにいるよ」

「ほっときなさい!」

子供たちが末っ子を呼びに走って連れてきた。

私は末っ子に怒鳴りつけてしまった。


救急車の中では阪大病院に電話をする隊員、気切部からの出血を吸引する隊員。

阪大は直ぐに受け入れてくれた。

吸引も見てられなかった。

小児用の吸引チューブかってくらい細いもので吸引なんてほとんどできないし、血液が凝固して窒息するかもしれない。

私はずっと救急隊員にそのことを怒り口調で怒鳴って言った。

阪大は自宅から救急車だと15分くらいで着く、はずが、また悪徳タクシーかのように遠回りをしていた。

救急隊員は、新しい町なのでまだ道がわからないとか、言い訳をしていた。

子供たちは必死に「お父さん!お父さん!頑張ってお父さん!」と言い続けていた。

そして、やっと阪大へ到着し、救命救急センターへと夫は運ばれていった。

そして、救急隊員から、「これをご記入ください。」

与えられた用紙を記入する。

バカみたいな内容だ。

●日常の生活で健康に気をつけていたことは?

●生活習慣病と診断されたことはありますか?

他は覚えていない。

バカバカしくて。

マニュアルなのかどうか知らないけど、救急事態ということで救急隊は任務を果たすのではないのか?

苛立ちながらなぐり書きをして隊員にわたす。

あと二人の隊員は目の前で救急車の中の清掃をしていた。

今、この場でするべきことなのか。

夫の出血で付着した血液を掃除している。

決してテキパキとしているわけでもない。

隊員に対して信頼度ゼロの私はその光景を長々と見てられない‥。


そして、私の視線は、夫が運ばれた救急センターの入口へと向けていた。


そして、姉夫婦、友人がかけつけてきた。

今更、何も用はない‥

私は心の中でそう呟いていた。


続く‥




 

 



 

 



 

 


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