抗がん剤治療が1クール、やっと終わった。
終わったといえども、後から追いかけてくる後遺症…。
夫は日に日に衰弱していく‥。
シャワーにも行けなくなった。
が、部屋の中にあるトイレにだけは、自分の足で歩いて行ってた。
口渇もあり、私はガーゼに水を含み、乾いた唇に水分を当てて、夫が咽ないように少しずつ湿ったガーゼを絞り出す。
身体の清拭を看護師が行う。
が、私が自宅から病院に行き、病室を開けると、看護師さんがちょうどいて、
「身体を拭こうとしたのですが、奥さんにやってもらうと言って、ご主人さんはこうして座って奥さんが来るのを待ってたんです。」
と。
そして、夫に
「よかったね、奥さん来たよ」
夫は、頷いた。笑顔はなかった。
私にはわかってた。
ちょっとしたことかも知れないが、夫は、看護師の、少し馴れ馴れしい言い方が気にくわなかったんだ。
夫は、昔から患者さんに対して、馴れ馴れしい言葉を使わなかった。
常に敬語で、腰が低い、それは開業してからも同じで、職員の看護師や事務職員に対しても、言葉使いのことは厳しく指導していた。
私は、そのことには触れずに、夫の清拭をした。
「気持ちいい?」
夫、「気持ちいい‥」
夫の背中が細く、骨が浮き出てる‥
悲しい‥
代わりたい、夫と入れ代わりたい‥
この日から、私は毎日夫の清拭をした。
続く‥
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