少し季節はずれだけど
あれは大学の卒業式
僕は運悪く熱を出し
それでも卒業式には出たくて
朝から病院で解熱の注射をしてまで大学に向かった
それには理由があった
大学の卒業式に何か重要な意味なんてなかった
仲間との別れ
大学生活との別れ
社会への新たな出発
というのはなかった
大学院に進学が決まっていたこともあったからか
そんな卒業式を
自分たちで思い出深いものにしようと
ひとつのイベントを友人が教えてくれた
それは
リムジンに乗ろう
というものだった
最後のはなむけの道を
大学へ堂々と向かおう
僕はもちろん賛成した
そしてそのリムジンに乗りそびれるわけにはいかなかったんだ
当日僕らはひとりの家の前に集まり
最寄り駅まで向かった
せっかくのリムジンだから
皆それぞれ悪ぶった格好をした
駅に着くと
見慣れない異様に長い車体が
黒光っている
運転手が僕たちを迎えた
周りの学生達がジロジロ僕らを見た
ああ
俺達って何様だろう
そう思いつつ乗り込む
もちろん初めて乗った
助手席にひとり後ろには向かい合わせで6人
普通リムジンにこんな定員いっぱい乗らないんだろうな
大学に向かっていざ出発
最寄り駅から大学まで
距離にして2、3キロ
時間にして10分程度
僕等は子供のようにはしゃいでた
たった10分の僕等のVIPタイムはそれで終わった
1時間の貸し切り料金で
7人でワリカンしても
ひとり6000円は払ったと思う
決して安くはない
でも
思い出になったなら高くない