朝4:30に目覚める
支度をして外に出る、ひどく寒い
今日一緒に行動するメンバー
剛さん(デザイナー旅人)
ゴアさん(以後半年間旅を続ける旅人)
シンさん(チベットに深くはまる旅人)
マメくん(カップルで旅を続ける旅人、彼女は欠席)
カメくん(雰囲気充分、民族系旅人)
そして僕
ドライバーを含めて7人がトヨタランドクルーザーに乗り込む
まだ辺りは暗い
鳥葬ツアーに出発だ
早朝のラサにはまばらにヒトがいる
すでに五体投地で祈る信者の姿もある
30分ほど走れば
街の姿は消える
けれど小さな集落は、ぽつり、ぽつりと点在する
夜が明けてくる
空は曇っている
それどころか夜の間に雪が降ったらしく
周りの山々は白い
チベタンのドライバーがテープをかけた
チベタンポップス(?)が流れる
実にチープだけれど、それがなんかいい雰囲気だった
目的地までの予定所要時間は3時間
けれど道は険しい
木の生えない岩山を縫うように走る道に差しかかる
雪の山道でもランクルなら怖くない
いや、少し怖い
もうすぐ鳥葬場のある寺院に着くという場所で
雪でトラックが立ち往生している
通れない・・・
どうするの?と口々に話していると
「ウォーキング」
と告げるドライバー
歩くったって寺院は見えるけどまだかなり距離がある
「ウォーキング」
歩くしかない・・・
周りは雪に覆われた山しか見えない
ウォーキングというか、トレッキングだな、これは
しかも高度は4000mオーバー
過酷だ、寺が遠い・・・
1時間半歩いた
やっと寺院に着く
疲れも忘れる厳格な雰囲気は・・・ない
犬が居る
25元払う
見せ物にしているけれど写真撮影は厳禁だ
坊主がジェスチャーで教えてくれた
「そこの道を上がっていけ」
まだ歩くみたいだ・・・・
みんなもうあまり言葉を発しない
息苦しさと、雪道の険しさに、余裕がないのだ
20分歩く
フェンスに囲われた広場に着いた
辺りは雪で真っ白だけれど、小さな小屋などがある
そしてそこにはお経を書かれた布に包まれた
遺体が既に2体運ばれていた
広場に入り、言われるままの場所で待つ
そこではさすがにもう、疲れとか、寒さより
緊張と好奇心でいっぱいだ
ところがそこには子供までうろついている
何とその子供が掌を向けて
物乞いしてきた
何もこんな所で・・・
と、みんなすこしムッとしていた
やがて坊さんが現れ、鳥葬師が現れ
なにやら木を燃やし煙をあげ
坊さんはお経を読み始めた
鳥葬師は遺体の布をとり、そなえる
「そなえる」というのは、刃物を研ぎはじめるのだ
そうこうしているうちに
どこからか、鳥たちが集まってくる
鳥と言っても、体長2メートルはあるかというコンドルだ
あんな鳥を肉眼で見たことがない
坊さんがお経を読み終え、山を下り出す
鳥葬師が遺体に近づく
鳥葬といっても
ただ遺体を放置しておけば、
鳥が食べてくれるというわけではない
大きな刃物を使って
遺体の肉を切り分けるのだ
鳥葬師が刃物を遺体の首筋に斬りつけ
背中の肉をおとしていく
気がつけば辺りには続々とコンドルが集まり
100羽近い数のコンドルが叫び、餌を待つ
鳴くというより、叫んでいるのだ
ある程度切り落とすまで
数人の男が手を大きく振ったりしてコンドルを待たせる
「もういいだろう」
と鳥葬師が合図し、男達が鳥の制止をやめると
いっせいに肉に食らいつき
遺体の姿が見えないほどの鳥たちが
肉を取り合い、叫ぶ
10メートルほどの距離でそれは行われ
想像を絶する光景に
呆然と立ちつくす
鳥たちがばらけてくると、また鳥葬師が
次々に肉を切り離し、骨や内臓があらわになる
まるで物を扱うように(素手の者もいた)
切り落とした真っ赤な頭が
手前に転がる
不意に鼻に飛び込んできた異臭
それは死臭とも獣臭ともつかぬ強烈な臭いで
ただでさえ息苦しいのに
臭いのせいで息が吸えない
呼吸困難になりそうだ
おもわずうずくまり、首もとから上着の中に顔を埋め
ゆっくりと息をする
そして
手を合わせ祈った
僕はあの世とこの世の境目にでも居るかのような気分だった
そう思わせるような場所だったのだ
鳥葬は今でもチベットで多く行われている葬儀だ
遺体を燃やすにも燃料がない
埋めるにも乾燥した寒い大地では遺体が分解されにくい
鳥葬がもっとも合理的な葬儀なのだ
死というものを受け入れているからこそ
魂のぬけた遺体は、ただの肉のかたまりだという考えもある
鳥に食われるという行為が
まさに「天に召される」ともとれなくはない
とにかく、この経験は
僕だけでなく
一緒に見た6人みんなの人生の中で
忘れられない経験のひとつになったことは間違いない
時間なので僕らは引き返すことにした
朝は曇っていた空も
いつの間にか快晴に変わっていた
そして素晴らしい景色が目の前に拡がった
後半に続く