ルナはプレゼントだと言って、セロに金の首飾りを渡した。
もちろんセロがアリアに返した首飾りとは違うものだ。
こちらはサファイアが嵌め込まれている。
しかし、治癒率上昇の付呪が施されているのは同じだ。
セロは、不思議な偶然に驚いてしまった。
ルナは、優秀な傭兵のセロには必要ないかもしれないけど、お守り代わりに持っていて欲しいと言っている。
その時、金の首飾りを夫に渡したソーヤの気持ちが、少し解る気がした。
誰しも、大切な人には無事であって欲しい。
考え込んでしまったセロに、ルナが大丈夫かと聞いてきた。
セロはハッと我に返った。
そして自分も渡すものがあることを思い出した。
セロはルナに、包みを渡す。
ルナが開けてみると、暖かそうな毛皮の手袋だった。
それに錬金と鍛造上昇の付呪が施されている。
しかし渡してからセロは、もしかして選択を誤ったかもしれないと焦った。
ルナはカジートだ。
もともと毛皮に覆われている。
手袋など不要なのではと思ったのだ。
ところがセロの心配をよそに、ルナは凄く喜んでいる様子だ。
寒いのが苦手だから、とても嬉しいと言ってくれた。
セロは、気に入って貰えてホッとした。
そして心からホッとしている自分を感じ、奇妙な感じがした。
以前は、他人の行動に一喜一憂などしなかった。
そもそも誰かにプレゼントを渡したことも、ほとんど無い。
今まで、そんな事に神経を削るのは、煩わしかった。
誰かと、どんなにいい関係を築いたとしても、いずれ居なくなる。
セロはダークエルフだ。
エルフ以外は、セロより先に死んでいく。
親しくなればなるほど、別れが辛くなる。
それならば、最初から親しくしなければいい。
いつからか、そう思うようになっていた。
そしていつの間にか、セロは自分の周りに高い壁を築いていた。
誰も壁の内側には、入れないようにしていたのだ。
ところが最近、壁を越えてくる者が現れた。
「シセロは、忘れていたよ。
プレゼントがあったんだ。
ひひひひ・・・・。」
と、また突然シセロがやってきた。
シセロにとっては、壁など最初から無かったも同然だ・・・。
つづく