Chapter0.1「始まりの夜」
満月の夜、美月と美月を挟むようにスーツ姿の男と同じくスーツを着た女性の3人が真夜中の住宅地を歩いている。
「お父さん、ごちそうさま!」
「美味しかったか、美月」
お父さん、と呼ばれた男は柔らかな表情で美月に微笑みかける。
「うん!すっごく!」
美月は子どもらしい無邪気な笑顔を見せる。そんなやりとりを見て、美月の隣を歩いていた女性がクスクスと笑う。
「な、何よお母さん。変な笑い方して」
「だって、いつも美月はもっと口が悪いのに。お父さんの前では『女の子』になっているのを見ると、少し可笑しくて」
そう言われ、美月は返す言葉に困った。母の言うとおり、美月の口調は女の子というよりは男の子に近かった。本人もそれを自覚している。周りから何度か指摘を受けた過去はあるが、今日まで特別変えようとしたことはなかった。それが自然体だと考えているからだ。
しかし父だけは別であった。常に美月の味方をしてくれるため、つい美月も甘えてしまうのだ。
「い、いいじゃん別に」
照れから美月は頬を紅く染める。反抗はするものの、逆に母を更に笑わせるだけでしかなかった。
‐カラーン、カラーン、カラーン
「え?」
美月は後ろを振り向く。家までの帰り道。大きな道路から少し外れた住宅地は静かだ。夜にもなれば道行く人もなく、更に静かなものだ。静かだからこそ美月はその音に気づいた。
「どうした、美月」
「いや、何か変な音聞こえなかった?」
3人は足を止めて耳を澄ます。だが、
「何も聞こえないわね。でも、最近この辺りで刃物を使った殺人事件があったってニュースでしていたけれど」
美月の母が言うニュースとは、最近天海市内で起きている連続殺人事件であった。犯行はいずれもやり口は同じで、日付が変わる位の時間に斬殺され、体を6つに分けられて道路に並べて残す、という猟奇的な話であった。
‐カラーン、カラーン、カラン
母がニュースの話をしている間に、音が再開した。その音は金属が擦る様な音で、そして
‐カラーン、カラン、カラン
「こっちに、近づいてない…?」
美月が恐れていることは事実で、少しずつ音が大きくなっており、何より音の間隔が短くなっている。それは近づいている速度が上がっていることを示してもいた。
「犯人は捕まっていない、とも報じていたな」
「な、なら、もしかしてその殺人犯が?」
斬殺されたということは刃物で殺されたことを示している。美月は金属を擦る様な音から刃物を連想してしまい、恐怖から体を震わせ、涙を浮かべた。
「そんなことはないよ。でも、念のため急いで帰ろう!」
父は肩を震わせる美月をなだめ、3人は歩く速度を早めた。ただの杞憂であれば、それで構わないが。雰囲気がいかにも怪しかった。
‐カラン、カラン、カラ、カラ、カラ
「こ、こっちに来る!」
「走れ!」
いよいよ危険だと感じた父は2人にそう叫んだ。だが3人が走るよりも先に向こうの速度があがった。金属の音は更に大きくなり、そして金属の音だけではなく足音すら聞こえる程に近づいてきた。
‐カラ、カラ、カラカラカラカラカラカラカラカラ!!
音の近づいてくる方に目を向けると、曲がり角からソイツは現れた。目深に被ったフードのせいで顔は分からないが、体つきから音だと分かる。右手には何か棒状の物を手にしており、それを地面に引きずらせながら走って来る。さきほどから鳴っている金属音の正体が判明したと同時に美月は恐怖した。
「な、何あれ!?」
男が持っていたのは、腰から足までと同じ位の長さの巨大な剣だった。 そして3人はついに追いつかれた。男は持っていた剣を大きく振りかぶり、袈裟斬りの要領で一気に振り下ろした。
「危ない!」
美月の父は2人を力いっぱい突き飛ばした。そのおかけで2人は剣の間合いから外れたが、我が身を守る術のない美月の父は背中を斬られた。
「ぐぁぁぁっ!」
絶叫を上げて倒れる美月の父。2人は美月の父の元へ向かおうとしたが、
「く、来るな!2人とも逃げるんだ!」
必死で制止する美月の父。剣を持った男は狂ったように笑いながら、美月の父に向かって、もう一度剣を容赦なく振り下ろした…!
満月の夜、美月と美月を挟むようにスーツ姿の男と同じくスーツを着た女性の3人が真夜中の住宅地を歩いている。
「お父さん、ごちそうさま!」
「美味しかったか、美月」
お父さん、と呼ばれた男は柔らかな表情で美月に微笑みかける。
「うん!すっごく!」
美月は子どもらしい無邪気な笑顔を見せる。そんなやりとりを見て、美月の隣を歩いていた女性がクスクスと笑う。
「な、何よお母さん。変な笑い方して」
「だって、いつも美月はもっと口が悪いのに。お父さんの前では『女の子』になっているのを見ると、少し可笑しくて」
そう言われ、美月は返す言葉に困った。母の言うとおり、美月の口調は女の子というよりは男の子に近かった。本人もそれを自覚している。周りから何度か指摘を受けた過去はあるが、今日まで特別変えようとしたことはなかった。それが自然体だと考えているからだ。
しかし父だけは別であった。常に美月の味方をしてくれるため、つい美月も甘えてしまうのだ。
「い、いいじゃん別に」
照れから美月は頬を紅く染める。反抗はするものの、逆に母を更に笑わせるだけでしかなかった。
‐カラーン、カラーン、カラーン
「え?」
美月は後ろを振り向く。家までの帰り道。大きな道路から少し外れた住宅地は静かだ。夜にもなれば道行く人もなく、更に静かなものだ。静かだからこそ美月はその音に気づいた。
「どうした、美月」
「いや、何か変な音聞こえなかった?」
3人は足を止めて耳を澄ます。だが、
「何も聞こえないわね。でも、最近この辺りで刃物を使った殺人事件があったってニュースでしていたけれど」
美月の母が言うニュースとは、最近天海市内で起きている連続殺人事件であった。犯行はいずれもやり口は同じで、日付が変わる位の時間に斬殺され、体を6つに分けられて道路に並べて残す、という猟奇的な話であった。
‐カラーン、カラーン、カラン
母がニュースの話をしている間に、音が再開した。その音は金属が擦る様な音で、そして
‐カラーン、カラン、カラン
「こっちに、近づいてない…?」
美月が恐れていることは事実で、少しずつ音が大きくなっており、何より音の間隔が短くなっている。それは近づいている速度が上がっていることを示してもいた。
「犯人は捕まっていない、とも報じていたな」
「な、なら、もしかしてその殺人犯が?」
斬殺されたということは刃物で殺されたことを示している。美月は金属を擦る様な音から刃物を連想してしまい、恐怖から体を震わせ、涙を浮かべた。
「そんなことはないよ。でも、念のため急いで帰ろう!」
父は肩を震わせる美月をなだめ、3人は歩く速度を早めた。ただの杞憂であれば、それで構わないが。雰囲気がいかにも怪しかった。
‐カラン、カラン、カラ、カラ、カラ
「こ、こっちに来る!」
「走れ!」
いよいよ危険だと感じた父は2人にそう叫んだ。だが3人が走るよりも先に向こうの速度があがった。金属の音は更に大きくなり、そして金属の音だけではなく足音すら聞こえる程に近づいてきた。
‐カラ、カラ、カラカラカラカラカラカラカラカラ!!
音の近づいてくる方に目を向けると、曲がり角からソイツは現れた。目深に被ったフードのせいで顔は分からないが、体つきから音だと分かる。右手には何か棒状の物を手にしており、それを地面に引きずらせながら走って来る。さきほどから鳴っている金属音の正体が判明したと同時に美月は恐怖した。
「な、何あれ!?」
男が持っていたのは、腰から足までと同じ位の長さの巨大な剣だった。 そして3人はついに追いつかれた。男は持っていた剣を大きく振りかぶり、袈裟斬りの要領で一気に振り下ろした。
「危ない!」
美月の父は2人を力いっぱい突き飛ばした。そのおかけで2人は剣の間合いから外れたが、我が身を守る術のない美月の父は背中を斬られた。
「ぐぁぁぁっ!」
絶叫を上げて倒れる美月の父。2人は美月の父の元へ向かおうとしたが、
「く、来るな!2人とも逃げるんだ!」
必死で制止する美月の父。剣を持った男は狂ったように笑いながら、美月の父に向かって、もう一度剣を容赦なく振り下ろした…!