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曇りのち晴れ
今年最後のムスカリが庭の隅で
涼風に揺れた。
可憐な花、しかし
清楚というには個性的に過ぎる。
鈴蘭の花の形を細長く、大きさを小ぶりに
したような花は
鈴蘭と同じように俯いて咲く。
しかし花は屹立する茎に、
人目を引く青紫の色をして
むしろルピナスに似たような格好に咲く。
そして、香る。
ムスカリはブランデーの香り、
と
誰かが言った、
など、考えるともなく眺めていると
虎雄(こと家人4)が帰宅した。
虎雄の長兄の満中陰から戻ったのだった。
持ち帰ったなかに
ナポレオンのコニャックブランデーがあった。
封を切るのを楽しみに、大切に置いているうちに
その機会もなく
他界したものだろう。
普段自分が飲むものより
見るからに質の良い、
美しい硝子の酒瓶を見ながら
少々しんみりした。

・・・朝からどんよりと曇った空が
清清しく晴れた
明るい夕方の、
置き所もない感傷である。
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