リオデジャネイロオリンピック開幕直前というタイミングで、ロシアの国を挙げてのドーピング疑惑が浮上した。先に陸上競技での不正が暴かれ、オリンピックへの参加を拒絶されたのに加えて、全ての競技においてロシアは参加できなくなる可能性がある。
ドーピング問題は、いわば摘発のための検査技術とのイタチごっこであり、国を挙げて隠蔽を図るならば、検査対象には挙げられていない新たな薬物の開発も可能であろうし、国内検査機関の抱きこみ等で隠蔽することも可能であろう。言い換えれば、独裁国家であれば経済効果の全くない新薬の開発にも資金を投入でき、検査機関を強権で支配してしまうことが可能であるという事を示していると言えるだろう。
このニュースに触れて感じたのは、5/10の当ブログ「パナマ文書」で触れた、米国のソフト覇権の一つではないかということである。ここ数年のロシアの行動は、クリミア半島、ウクライナ問題で西欧流の国際規範に反旗を翻してきた。この独善的な行動に何とか規制をはめようと、プーチン政権の弱体化を狙ったものではなかろうか。今の米国政府にとって、ハード(軍事力)面での国際緊張を高めることはオバマ大統領のこれまでの政策の方向性には逆行してしまうため、迂回的な対抗手段としてソフト面での締め付けを強めているように見える。
この推測が的を射ているとすれば、次は中国を標的にした動きが出てくるであろう。南シナ海での国際仲裁裁判所の判決に従わず、正面切って反発を強めている中国に対し、何らかの仕掛けをしてくる可能性が高いと思う。ロシアのプーチン独裁と同様に、共産党独裁の中国が世界の異端児であることを国際社会や中国人民に広く認識させることは、中国共産党の影響力を削ぐことにつながり、ひいては米国の覇権の強化に直結するだろう。
米国は9.11以降の軍事力による世界覇権・秩序維持に失敗し、大きな痛手を受けた。近年のIS等のテロ組織台頭に対しては決定的な対応策も見出せずにいる。こうした背景の中で、ロシアと中国が相対的に存在感を増してきているのが現状であろう。テロ組織は混乱は引き起こすが、世界覇権を脅かす存在にはなりえず、この点で米国にとっては自国に直接の被害が生じない限りは、あくまで地域問題として留まる。これに対し、大国であるロシアや中国の影響力拡大は断じて座視はできず、どんな手段を用いてもタガを嵌めたいというのが本音であろう。軍事力という人的損害を必然的に伴う対抗手段よりは、ソフト面でパワーを削ぐ手段の方が優れているのは明白である。インターネットは米国国防省が軍事ネット(DARPA net)として開発したと記憶しているが、現在のソフトによる世界覇権の重要な手段として認識していたとしたら慧眼と言えるし、今でも他国より数段先を進んでいると言えるであろう。
何れにしろ、ロシアのクリミア・ウクライナ問題の次は、中国が南シナ海か東シナ海か、朝鮮半島かは判らないが、西欧秩序に対する何らかの攪乱要因となるのは確実であろうと思う。今回のロシアのドーピングスキャンダルの次は、中国のスキャンダルが炸裂すると予測する次第である。
2016/7/21 17:30