シャープが金融機関から融資を受けて資本増強を図ると言う
報道によると今期の赤字額が膨らみ、既に低下している自己資本比率が更に落ち込むため、債務超過への予防措置として負債を株式に換えて金融機関に購入してもらうとのこと。詳しいテクニカルなことは私の理解するところではないが、何れにしろ経営危機が差し迫った状況にあるのは間違いないのであろう。
別のニュースでは、旧三洋電機の社員のうち、パナソニックに出向扱いとなっている最後の約7000人が近々全てパナソニック転属となり、三洋電機は名実共に消滅するとの報道もあった。かつての家電全盛期を知る者としては、文字通り隔世の感がある。日本家電の全盛期にはテレビ、ビデオ、オーディオ共に10社に近い企業が競い合って、それなりに業績を上げ企業として成長を維持していた。その後、先ずはオーディオが崩れ始め、オーディオ専業メーカーのAKAI, TEAC, TRIO, KENWOOD, PIONEERなどが次々と経営破綻に追い込まれ、その後はVTRの市場が消滅し、TVも液晶に代わってからは韓国勢に追い落とされて、残るはSONYだけとなり、それもSONYの現状からは存続も危ぶまれる有様である。
この日本家電産業の凋落については多くの論評が出ているが、本質的には為替レートの変化が主因であろう。次に大きいのは経済成長段階のカスケードというべき、経済構造の変化であろうと思う。最初の為替については、家電のみならず、戦後の日本の高度成長を支えた主因と言える。これは戦勝国であり、本土が戦火にあわなかった米国の旺盛な消費需要があり、そこに供給者として日本が埋め込まれた訳である。背景には東西冷戦構造のなかで、防共の砦として米国の影響下で日本の国力を高めたいという事情と、原爆投下による大量殺戮へのキリスト教国としての贖罪意識があったように思う。このため円安固定相場を容認してきたのであろう。次の経済成長段階については、家電に限らず、繊維や鉄鋼、造船を見れば明らかなように、これらBrick & Mortar産業は労働力が安く、産業資本の増強過程にある中進国や発展途上国が比較優位を持つ産業である。日本は既に先進国に移行しており、これらの産業が経済の中心を担える環境ではなくなっている。
これらのマクロ的な事情から見れば、Sharpの苦境は至極当然と見える。家電大手の中で第二グループ以下であった三洋、Sharp、Victor、ゼネラルの中でSharpが最後まで生き残れて来たのは、液晶TVでの優位性があった。しかし、これに依存しすぎたことが過大投資を生み、ついに存亡の危機に瀕したのである。そもそもブラウン管TV時代に自社でCRT製造設備を持たず100%外部調達していた事が、液晶に替わる際に一転してSharpの強みとなった訳で、まさに天の恵みであったと言えるであろう。これで舞い上がってしまってしまい、冷静に産業構造・市場構造の変化を読めなくなってしまった。こう考えると、やはり経営者の資質に帰結する問題であろうとも思う。
感傷的な見方は捨てて、冷徹に見ればSharpの存亡の行方は明らかであろう。仮に残存できたとしても事業の切売りを経て遥か昔の事業規模に本家帰りすると思われる。後に歴史を振り返れば、液晶TVの黎明期に一瞬だけ輝いた企業として記録に残るだけのように思う。
2015/3/9