2014年2月16日(日)午後、福山市中央図書館「ローズコム」において、私共の法人の事務所開設10周年を記念して、家族療法で著名な「広島ファミリールーム」所長の村上雅彦氏をお招きして講演会を開催しました。その報告をさせていただきます。
 講演会当日は、56名の方がご参加くださいました。男性14名、女性42名でした。


 村上先生は、私たちが虐待の後遺症に対するケアやハラスメント(いじめ)の防止に関わってきたことを考慮して、虐待の影響などにも触れながら、家族関係や人間関係を良くしていくために留意すべきことをお話し下さいました。
 以下、講演の内容です。


 まず、虐待やハラスメントは被害者の一生に影響する重大な犯罪であることを明言されました。その影響としては、児童虐待の場合、30代や40代になっても苦しみが続く場合があります。また、被虐を受けた子どもは、親を責めるのではなく、自分が悪いのだと感じて自分を責めます。また、親が不幸なのは自分のせいだと感じて、自分が幸せになってはいけないと感じる場合もあります。
 後遺症に対するケアとしては、被害者自身が大変な状況の中でよく頑張って来られたのだと伝えることです。そして、被害者が自分自身を責めなくても良いのだと理解してもらうことです。まず、自分自身を理解してもらうことが重要です。
 そして、自分の特性(長所)に気付いてもらうことです。例えば、「人の目を気にし過ぎる」ことは「相手の気持ちをよく考える」、「悩む力がある」ということでもあります。また、「くよくよ考える」ことは「考える力がある」こと、「人と親しくなり難い」ことは「人と距離が取れる」、「自分を守れる」こと、「すぐ忘れてしまう」ことは「長く引きずらない」、「切り替えができる」ことでもあります。


 次に、家族関係がより良く機能するためには、どのようなことに留意したら良いのかについてです。

 まず、家族がお互いにそれぞれの「特性」を把握し、認め合うことです。宿題を早く済ませてしまう子ども、ぎりぎりになって取りかかる子ども。積極的な子ども、消極的な子ども。友達が多い子、少ない子。どちらが良いとかではなく、あくまでも「特性」として捉えることです。特性を否定されると、「自分はダメな人間だ」と自己否定的になりがちです。
 相手に「こうしてほしい」、「こういう人であってほしい」と思う時は、押し付けではなく、まず特性を認めた上で、希望や目標を話し合って、それを共有することです。一緒に目標を決めることです。「こうしなさい」という指示は良くありません。子ども(当事者)自身が考え、決めるようにすることが大切です。


 また、夫婦関係が良いと子どもは安定します。夫と妻が、お互いに相手の特性を把握し、相手の意図を理解することが大切です。

 妻が夫に「うん、うん」とただ聞いてほしいと思っているのに、夫がいろいろ質問してはうまくいかないし、逆に、相槌や質問を入れながら共感的に聴いてほしいのに、ただ「うん、うん」と聞いているだけでは良くありません。
 相手の意図がよく分からない時は、訊くことも必要です。相手の意図を推測して、勝手に思い込むのは良くありません。本当の意図とは違う意図に受け取ると、コミュニケーションにズレが生じて、関係の修復が難しくなったりします。
 日本の夫婦はお互いにあまり訊かないことが多いですが、自由に訊き合える関係を作って、相手の本当の気持ちや意図を理解しておくことは重要です。お互いが「自分は尊重されている」と感じるような関係が望ましい訳です。


 それから、コミュニケーションがうまくいかない場合、全て自分が悪いと思う必要はありません。相手に共感力が無いなど、相手の問題である場合もあります。相手の特性を把握することが大切です。
 また、自分の行動は自分で決めることです。相手の指示に従って動くか、違う行動をとるかは、自分が決めて良いのです。

 そして、自分で自分の特性をよく理解しておくことも重要です。自分はストレスをどれ位受容できるのか、自分の能力はどの位あるのかなどを理解しておくことは、人間関係においても大切です。

                                                           ≪了≫



 以下、講演会のアンケートの集約です。


回答者:男10人、女30人、(計40人)


年齢:10代(3人)、20代(2人)、30代(4人)、40代(8人)、50代(17人)

    60代(4人)、70代(1人)、不明(1人)


職業:公務員(4人)、教員(1人)、医療福祉関係(5人)、相談員(1人)、会社員(6人)
    パート・アルバイト(11人)、自営(4人)、主婦(5人)、学生(3人)


感想:「とても良かった」17人(42.5%)、「良かった」13人(32.5%)、「普通」3人(7.5%)

    「やや不満」1人(2.5%)、「不満」3人(7.5%)


   ≪参加動機≫

終活カウンセラーの資格を取得し、今後カウンセラーとして社会貢献したいと考えており、終活を考えるにあたり、重要となる家族の在り方を学びたいと思って。(50代、女性)


自分が教えている生徒と家族の関係について、日々考えさせられることがあるためです。(20代、女性)


家族療法に興味があったため。(20代、女性)


自分自身、母から虐待を受け、今もまだ母との関係が修復できず、苦しい時があるので。(30代、女性)


村上先生に親子関係のことで相談にのっていただき、今はカウンセリングを受けていないのですが、まだいろいろと悩みがあり、解決のヒントを得たいと思い参加しました。(50代、女性)


村上先生は「広島カウンセリングスクール」で講義もされており、関心のある内容の話をしてくださるので、是非参加したいと思った。「家族と教育を考える会」の活動や、どういう団体かも知りたかった。(50代、女性)


障害者施設に勤めており、障害者との関わり方と家族(子ども)との関わり方に共通する要素があるように思い、参加しました。(50代、男性)


仕事でも色々な人と話しをする機会があるし、子どもが思春期で接し方が難しいと感じる時があり、話が聞きたいと思った。(40代、女性)


子どもが不登校だから。(50代、男性)


タイトルに魅かれた。(40代、女性)



   ≪講演会の感想≫

親子・夫婦間の身近な例を上げて、分かり易く話してくださり、自分に当てはまることを痛感したり、気付きがあり、とても参考になりました。「特性」を理解することですね。(50代、女性)


生徒にとって、私は家族ではありませんが、どういう声掛けが効果的であるか、学ぶことができました。(20代、女性)


虐待の問題の話は分かりやすかったです。自分を責めたり、心に深く傷を負ったりと…。福祉職なので、虐待には常に関わっています。相談者の特性、自分自身の特性をもっと考えられるようにしたいです。(20代、女性)


特性と意図の把握のところは、我が身を振り返って、思わずクスッと笑えて、分かりやすかったです。人間関係の改善に特効薬はないと思いますが、こういう話を折々に聞くことで、心がリセットされます。(60代、女性)


例えば…という多くの例え話があって分かりやすかった。何が大事かということが分かっていても、それをその場で使えるかどうか…。なかなか自分自身を客観的に見れないので難しいなと思った。少しずつでも、思い出して役立てたいです。(40代、女性)


相手の特性と捉え、それを理解して行動していけると、良好な関係性が保てる。教師は、共感性を持って子どもに接してくれず、指導の立場でしか関係が作れず、ズレとしんどさだけが残る。(50代、女性)


自分の特性を相手に押し付けたりするのではなく、まず最初に相手(例えば子ども)の特性を認める。それからアドバイスをしたりする。特性を認めず自分の思いを押し付けると、劣等感やゆがみが生じることが分かりました。やっぱり、人と関わるのは大変だなという印象です。(10代、女性)


虐待やハラスメントなどについて、よく分かりました。経験していない分、知らないことばかりだったので、知ることができて良かったと思います。私はまだ子どもの立場ですが、共感できることも多かったです。家族について考えさせられました。(10代、女性)


親子関係だけでなく、人との対応においては、個人の特性をよく理解していないとトラブルになるということが、よく分かった。(50代、女性)


家族との関わり方、子どもの特性の理解、目標の構築の組み立て方は非常に参考になりました。家族との関わり方、また障害者との関わり方に、違う切り口でいどんでいけそうな気持になりました。(50代、男性)


40代・50代になっても、年老いた親に対して言えない思いのある人が多くいるということについて、具体的な話を聞いてみたかったです。機能不全家族を連鎖させないために。(50代、女性)

                                                          ≪以上≫



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