知ったので、今日はそれを皆さんと共有したいと思います。
乳房の大きさと乳汁の産生量が違うのはご存知でしたか？
同じ一人のお母さんの左右でおっぱいの大きさが違う場合
でも、母乳を作る能力には差がないんですって。
水野克己：母乳分泌の生理 小児内科42,10,2010-10, pp1586-1592
あ、そんなことは知ってました？
じゃあ、これはどうですか？
「乳汁産生量は母親の乳房の産生能力よりも、むしろ子どもが
どれだけ飲みとるかということによって決まる。したがって、
有効に乳房から乳汁が飲み取られることが乳汁分泌の維持に
必要である。」
Riordan J: Breastfeeding and Human Lactation, 3rd ed, Jones and Bartlett Pub,
Sudbury, pp73-80,2005
へー！じゃないですか？
あと、授乳の後に「残った母乳を搾乳しなさい（搾りなさい）。
さもないと・・・」と脅す人がいるらしいじゃないですか。
あれは間違いですね。
「子どもは１回の授乳で飲み取ることができる最大量は、乳房が
提供できる量のおよそ76%であり、逆にいえば約20%はかならず
乳房内に残ることになる。」
大山牧子：母乳育児支援に必要な生化学と免疫学 日本ラクテーション・
コンサルタント協会,p30, 119, 2006
「実際には乳房は完全に「空」にすることはできず、最大限に授乳
または搾乳したあとで、乳房に溜めておくことのできる量の約
20-30%は残る。」
水野克己：母乳分泌の生理 小児内科42,10,2010-10, pp1586-1592
おっぱいは搾っても空にはできないんです。
不思議だなと思いました。
空に近くなるとまた乳腺葉が母乳を作り始めるからでしょうね。
また、前述の大山先生によれば左右の乳房はそれぞれ独立して
乳汁産生量を調節しているそうです。
だから、陥没乳頭などで片方が飲みにくい場合、出が悪くなって
しまうことを経験したお母さんがいると思うんですが、
おっぱいを飲み取られずに乳房におっぱいが残ったままであったら
次の母乳をあげる時間には、少ない量しか作られず、だんだん
出なくなってしまうでしょうね。
それでも、もう片方をどんどん吸われれば、おっぱいもその分、
作られますから母乳が足りなくなるということはないのでしょう。
双子の場合、二人を同時に授乳するとプロラクチンという母乳
を出すホルモンも二倍出てちゃんと二人分の母乳が出るそうです。
Tyson JE, et al: Studies of prolactin in human pregnancy.
Am J Obstet Gynecol 113: 14-20, 1972
一生のうち、母乳をあげるのは数ヶ月×産んだ子どもの人数なので
授乳って、そうそうあるイベントじゃないですね。
でも、小児科医をやっていると思いもかけない質問をされるので
こういうことを知るのが面白いし役に立つのです。
私以外の人も面白いと思っていただけましたか？