患者さんのお母さん方に聞かれます。

「日本脳炎の予防接種って
やった方がいいんでしょうか?」って。
厚生労働省がQ&Aを出しているんですが、
何を言いたいのかいまいち、わかりにくいんですね。
各病院にも厚生労働省から都道府県知事を通して
「定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の取り扱い
について」というのが来ました。
それから抜粋。
『日本脳炎に感染するおそれが高いと認められる者等に関して、
その保護者が「日本脳炎ワクチン」による予防接種を受けさせる
ことを特に希望する者については、当該保護者に対して日本脳炎の
予防接種の効果及び副反応を説明し、これに基づく
予防接種実施に関する明示の同意を得た上で接種を行うことは
差し支えない』
って何を言っているかというと要するに、
やりたいという人にはよく説明をした上で、
予防接種をするのはかまいません。
ってことですね。
だいたい、日本脳炎ってどういう病気でしょう?
日本脳炎ウイルスの感染によっておこる中枢神経
(脳や脊髄など)の疾患です。
ヒトからヒトへの感染はなく、ブタなどの動物の体内で
ウイルスが増殖された後、そのブタを刺したコガタアカイエカ
などがヒトを刺すことによって感染します。
東アジア・南アジアにかけて広く分布する病気です。
(前述のHPより)

どうして今、日本脳炎ワクチンを打つかどうか
話題なんでしょう?
以前の日本脳炎ワクチンはマウスの脳を使って作っていました。
ADEMという病気がそのワクチンで起きてしまったため、
日本脳炎の予防接種は一時期、休止していました。
ADEM(急性散在性脳脊髄炎)というのは、
感染症情報センターのHPにも詳しいのですがマウス脳のワクチンだと
70万-200万回に一回の確率で起こってしまったのです。

そしてこの度、新しいアフリカミドリザルの腎臓由来株化細胞を
使って作ったワクチンが開発され今年の6月に病院に入荷しました。
そういう経緯があるので、
「子供が定期接種対象年齢だけどどうしたらいいの?」
というお母さんたちが不安に思っているんです。
また、休止期間中に対象年齢からはずれてしまった子供の
お母さんたちもどうしたら良いかわからないんです。

で、新しくなったワクチンが安全かというと
「安全性の確認等における観点から、
現時点においては積極的に推奨する段階に
至っていないものとされたところです。」
(前述の日本脳炎ワクチン接種に係るQ&Aより)
なんですよ。
要するに「まだ安全かどうかわからないから、
あんまり勧めません。」ってことです。
公衆衛生という観点から見ると予防接種というのは、
集団の抗体保有率を上げて集団の感染症の流行を防ぐものです。
しかし日本脳炎は休止中にも感染者の増加はありませんでした。

麻疹の予防接種率が下がった途端に感染者が急増し、
世界中から「今時、日本みたいな先進国で麻疹が?」
と驚かれたのとは全く状況が違いますね。
何か副反応が起きた時には、国による
救済措置がありますから、
日本脳炎に感染しているブタがたくさんいる地域
にお住まいで、心配な方は自己防衛として
打つことを検討してはどうでしょうか。

(この地図で茶色、赤は日本脳炎に感染した
ブタが多い地域です。)
あくまで私見です。
うちの子たちは東南アジアの日本脳炎が流行っている
地域に行かない限り打たない予定です。
追記:その後、新しい日本脳炎ワクチンも大勢が受けるようになり、
2013年夏現在、大きな副反応は報告されていません。
温暖化のせいか蚊の生息する地域が北上しているとニュースで
見ました。なので、我が家の2人娘はその後、接種しました。