今日は、子供が、学校の先生になじめないときどうするか、というお話をいたしましょう。うちには関係ないわ、と他山の石扱いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、子供の先生に対するかかわりを考える契機にしていただければと思います。先生からの好かれ嫌われが、評定(つまり通知表の成績)に直結する場合は、意外にも結構多いといえると思います。
あるとき、中間、期末の点数の割りに評定の低かった子に、授業態度のせいではないかと疑い、そう本人に伝えたことがあったのですが、彼女は私のいうことをはじめ信じてくれませんでした。大体テストの点数で決まるのではないの、というのが彼女の言い分です。で、百聞は一見にしかずと思い、私は「君の友達の態度のよさそうな子と、君とで、成績を比べてごらん」と言ってみました。彼女がそうしてみたところ、数学で、自分のほうがいい点をとっているのに、評定のほうは低いというケースに出会ってしまったとのことです。まさかと思っていただけに、ずいぶんとショックだった見たいです。もちろん逆の子もいっぱい知っていますが、いい点を取っているのに、評定が、異常に低いとかいう子は、私からみても、ちょっと粗暴かな、という子に多いみたいです。こういう子に私がどう接してきたかは、また別の機会に触れるつもりです。今回は、格別粗暴にも見えないんだけども、どうも先生との折り合いをつけるのが苦手、という子に焦点を当ててお話いたします。うちの子は、あるいは私は、僕は、先生とうまくやっていける、という子も、いずれ、人生のどこかでぶつかるかもしれない、人間関係のトラブルなどに際して、参考になるかもしれませんので、ちょっと耳を(目を?)傾けてみてください。私が遭遇した、いろんな経験と、私がそのときどうしたかを、皆さんが知っておくことは、何かの折、とっさに判断しなくてはいけないというときに、生きてくるはずだと思います。
最近も、先生にどうもなじめない、という子を教えはじめました。家庭教師初日、教え始めようとしたら、どうも、彼が学校の先生になじめない、というか、学校そのものに違和感を感じているらしい、ということに気づきました。どうも不満の原因は、一部の先生がたが彼に、きつい、というか、見下したような態度を取るということにあるようです。ほかに、英語の先生が、教え方が下手だからいやだというのもありましたが、こちらは、先ほどの原因に比べれば、それほど深刻ではないように思えました。私は、教えるのを控えて、とりあえず、本人が言うことに、できる限り耳を傾けることにしました。言っておきますが、彼は、そんな問題児と思われるような言動を、私の前で、今まで、数回教えた限りでは、したことはありません。むしろ、人なつこい好青年だといえるでしょう。では、なぜこういう問題がおきたかといいますと、もちろん、先生の、彼に対する接し方に問題があったことは否めませんが、それと同じ程度に、彼自身の、先生に対する姿勢に問題があったためと考えられます。少なくとも、先生のいやらしさを並べ立てても、問題の解決にならないのは、自明の理です。彼の方から変わらなければ、私は学校の先生を説得する立場にないので、事態の進展はありえません。そして、それは、きちんと彼が納得して行動すれば、難しいことではありません。
私は、まず、先生というものが、どういう気持ちで、彼に接しているか、について、私の想像を話してあげました。
端的に申し上げますと、先生というのは、こちら側の、つまり、生徒の側の態度の変化にとても敏感だということです。たとえば、こちらが、「先生、今から、僕は勉強態度を変えて、まじめに授業を聞くから、今までのような、偏見に満ちた目で見るのは、やめてください」みたいなことを言って、実行に移したとします。先生は、私の経験では、ほとんど例外なく、今までのいきさつを忘れて、本人の態度の変化に好意をもって対応してくださいます。で、私は、彼に(彼はこんな高校いたくないというところまで、鬱屈(うっくつ)としていました)、「こんな先生の顔をみたくないという君の気持ちはわかる。でも、その気持ちを押し殺して、最初の何回だけかでも、先生に、好意を持っているそぶりをしてごらん。先生は、きっと君の態度の変化にこたえてくれるはずだから」というようなことを言ったと思います。嫌いな先生のために、評定なりを下げられるのは馬鹿らしいです。このやろうと思っても、評定が、一つでもあがると思って、笑顔を向けてごらん、みたいなことも言ったと思います。具体的には、次の3つのアプローチを彼には紹介しました。
1、先ほど、ちらと触れたように、あらかじめ、先生に、授業態度を改めることを宣言して、それを実行に移すこと。これが最もわかりやすく、効果もすぐに現れる方法であるように思います。
2、何も言わずに、突然、態度を改めること。これも有効ですが、先生にわかりにくいので、理解していただくのに時間がかかると思います。
3、授業態度も改めるのですが、それ以上に、その先生の科目のテストで思い切りいい点を取ること。そこから、先生と仲良くする取っ掛かりができると思います。本人に相応の努力が必要になり、もともとの能力もある程度必要と思われますので、とりあえず、という子には向きません。実は、私が、高校のとき、授業中チラッと腕時計をのぞき込んで、先生に思わぬお叱りを受け、偏見をもたれたとき、やったことでした。先生というのは、どうしても、自分の作ったテストでがんばった子には、にこやかな顔をして、「今回がんばったなあ」ぐらいの、言葉はかけてくださるものです。その先生(化学の先生でしたが)からは、その後とても好意をもたれたことを記憶しています。そのときの、先生の態度の急変振りは、私が想像していた以上でした。こちらも、その好意にこたえるべく、化学の勉強は、特にがんばったような記憶があります。好循環というのでしょう。
私のつまらぬ自慢話を交えながら(?)、こんな話をして、本人に勧めると、だいたい、本人が、それをもとに行動して、事態は好転に向かいます。
ついでにもうひとつ、私の教えた子で、万引き、泥棒といったあらぬ疑いを、先生から、かけられた子の話をいたしましょう。実際、あらぬ疑いだったのですが、そのため、彼は放課後、こってりしぼられたそうです。その子にも疑いをかけられるべき、相応の行動があったのですが、本人は、先生から信じてもらえないといって、怒りを半分心に秘めながら、ずいぶんしょげていました。勉強は今ひとつですが、けんかとスポーツがむちゃくちゃ得意という、しかも友達が、ほっといても寄ってくるという、おやまの大将肌の子です。小さいころからいつでもクラスは彼を中心に回っていました。一度転校したことがあって、そこでいじめられたら、そのいじめた子を散々な目にあわせて、それで仲良くなった、という子です。彼を敵にまわしたら、誰を敵にまわすよりも苦労をするということを、学校の先生方は、ご存じないようです。本当に、漫画のモデルにもなりそうな子です。並みのスケールの子ではありません。「キーマン」という言葉があります。組織の中で、中心人物となっている人間で、その人間が「こうしよう」といったら大方そちらに進んでしまう、といった存在です。その地位に関係なく力を持った存在です。私は、会社で人事を専門にやっていたこともあり、わかるのですが、クラスをまとめる先生にしても、会社を束ねる経営者などにしても、そのキーマンをいかに見出し、扱うかが、とても重要であるようです。彼はまさしく、超キーマンとも言うべき存在です。私の尊敬する政治家勝海舟(坂本竜馬が師匠としていた人です)は、そういう人間を見出し、扱うのが見事で、まだ下役人だった、西郷隆盛の人物を理解し、薩摩藩の家老格の人に話をしたところ、「あの下役人が、、、」とまったく理解されなかったという、興味深い話があります。後の西郷隆盛の活躍は、だれもご存知のとおりです。
話を元に戻しましょう。彼は、そういう一般的な尺度を越えた人物ですが、私のこのときのアドバイスは、一般的にも通用するものと思います。
私は、まず「誰か、君のことをよく知ってくれて、必死に話したら、絶対信じてくれそうな先生はいないか」と聞きました。彼が、「いる」というので、その先生に、洗いざらい、正直に話すことだといいました。その先生は、君を絶対守ってくれるはずだから、と。ただし、これが最後のチャンスというぐらいの真剣な顔をして話すこと(これができない子が意外に多く、先生にいっても無駄、と思い込んでいる子は多いです。何を言うかよりも、どういうかの方が、大事なことも多いということに気づいていないのです。それで、先生の無理解のせいにして、あきらめている子もずいぶんいるはずです。私にその論理は通じません。彼、あるいは、彼女の先生に対する過去のアプローチの仕方を細かく聞きだして、それを修正させて、再度トライをさせると大体うまくいきます)と、付け加えもして、、、。幸い、彼が、この最後の手段をとる前に、真実が明らかになり、彼は、はれて、無実の身になったのですが、私は、今までの経験や知識から、私のアドバイスも有効性を持ちえたと確信しています。少なくとも、彼は、信頼の置ける先生と誠実にかかわることの重要性を認識したと思います。そして、その意味で、ちょっとだけ大人になったような気がします。先生というものは、子供の普段の素行を結構注意深く観察しているものですから、子供が誠実に向き合ったとき、付き合いの長い子であれば、だいたいの気持ちは汲んでくれるものです。まず疑ってかかろうとする警察とは、このあたりが、少し違うように思います。こういう先生がたの、一般的性質は知っておいて損はないと思います。それによって、大幅に評定がアップしたという例も、ずいぶんあります。別に点取り虫を推奨するつもりもありませんが、成績は悪いよりもいいほうがいいし、学校の先生にとっても、問題行動をしそうな子が減るということは、とても歓迎すべきことと思います。もちろん、ご家庭にとっても、、、。