昨年の春、賃貸マンションに引っ越した。

築年数は経っているけれど、作りは意外としっかりしている。

 

 

引越しの挨拶に上の階へ行くと、

出てきたのは若いご夫婦と年少さんくらいの男の子。 

とっても感じが良くて「あらぁ、素敵な仲良しファミリーね♡」

なんて、ちょっとホッとした。 

 

……しかし、引っ越して数日。 「仲良しファミリー♡」なんてぬるいことを抜かした自分を呪うことになる

 

午後、幼稚園から帰宅したボクが、どこか高いところから飛び降りる遊びを始める。 『ドーーーーーン!!!!』『ぎゃはははは!』

 

かと思えば、結構硬めのボールを全力でつく。『ドン!ドンドン!ドドドドドドドドド!』『えーーーーん!(泣)』 

 

ひ、ひぃぃ……!うるせぇ‥

でも真昼間だし、子供のことだから苦情は言いづらい。 

上階のご家庭少々ヤバめだ。 だいぶ賑やかだ。

下の階(下界)に思いを巡らせる余裕は、どうやら無さそう。 

 

それでもこちとら公団で酸いも甘いも噛み分けて来た。 

「子供のすることだし、お互い様よね……」

と自分に言い聞かせ数ヶ月耐え忍んできた。 

 

そんな私でも、どうしても耐えられない音があった。

深夜の「トントントン」だ。 これがかなり頻繁。

 

頭の上で、一定のリズムで「トントントントン!」と響き、

毎晩起こされてしまう。

あぁ、またか……。 

 

これってやっぱり「アレ」だよね? お若い二人だしね。 お子さんも一人っ子みたいだし、ねぇ?

 

聞こえるとはいえ、じっと聞き耳を立てているのも悪趣味でしょ?

 

私はテレビをつけ、音量をグッと上げ、「聞こえてない、私は何も聞こえない」

と自分に言い聞きかせた。 子供は日本の宝。少子化対策頑張っておくれ。

 

そんな日々を送っていたある日、ふと思った。 

……いくら若いからって、ほぼ毎日? ここ数ヶ月、聞こえない日の方が珍しい。

しかもこのマンション、施工がしっかりしているから歩く音すら響かない。

 それなのに、そんなにピンポイントで「アレ」の音だけ聞こえるもの?

 

んんん……? 待てよ。もしかして、これ……

子孫繁栄の儀式じゃなくない? 

これって、もしかして……

「アレ」じゃない?

 

 ホームベーカリー。 

 

なぜ私は「あれ飛び出すハート」だと思ってしまったのか? 

ヤダァ‥ 本当にごめん上階さん。

 

そう思って改めてじっくり音を聞いてみた。

間違いない。「ガックン!ガックン!」という不規則なパターンもある。

そうだ、私には身に覚えがあるのだ。

かつて、夜中にガタガタうるさすぎてお蔵入りになった、

あのホームベーカリーの挙動そのものじゃないか。 

 

……でも、なんでキッチンじゃなくてこの部屋(寝室の上)で焼いてるの?

 たぶんうるさくて、自分の寝室から遠い部屋で焼いているんかな?

 

おかげでこっちは、「パンの誕生」を「生命の誕生」と勘違しちゃった訳だが、、、 とんだ「エロババァ」だわ!何考えてんねん。