睡魔が | OG:LIFE

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アニメと写真のおはなし

ちょっとハリー・ポッターはこれまでの作品と違って、想像していた以上にコメントの難しい作品であることが発覚したのであまり面白い話題ではないかもしれませんが、制服に始まる衣装についての話題。 短いです
J.K. ローリング, J.K. Rowling, 松岡 佑子『ハリー・ポッターと賢者の石 (1)
●講義でメモしたものからネタが拾えなかったため、今回は個人的な経験からのアプローチから始めてみたいと思う。
 ハリー・ポッターは映画化されるとともに、映画館の物販品として数多くのグッズを製作し販売した。もともとキャラクターグッズの歴史は鉄腕アトム時代からであるが、ハリー・ポッターのグッズには、他の映画作品ではあまり商品化されてこなかったものまでが正式に売られている。それは何か。それは作中に使われる衣装である。
 いわゆる「ロリータファッション」と呼ばれる服のブランドの中に、Metamorphose(Metamorphose temp de fille)というブランドがある。ロリータファッションに身を包んだ状態というのは少女達の描く「理想の女の子像」であり、「お人形さん」的な「永遠の純真(純潔)」の象徴でもある。メタモルフォーゼとは「変身・変容」という意味で、 その名の通り、変身、つまり「今の自分ではないもの」(この場合は「永遠の少女」)になりたいという「変身願望」が込められている。
 仮装、詰まるところ、これは「コスプレ」である。コスプレ、とはいかにも日本人的な短縮方法で(リズム的なものもあると思われるが、略称は大概が偶数、しかも4文字である)「コスチューム・プレイ」という言葉の略語にあたる。 「プレイ」は娯楽的な意味を擁するとともに、「演技」という意味にもとることができる。衣装によって「自分ではないもの」を演じている、それがコスプレである。
  高校時代、体育祭で「仮装行列」というものがあった。そこでは、各組がテーマを決定し、衣装、小道具にわたって全てを手作りし、サーカス一座のようにトラックを練り歩くイベントであった。その年、自分のクラスは「ハリー・ポッター」を選んだ。そしてローブを学校指定のレインコート(真っ黒で長くて御誂え向き)を利用し、寮の刺繍は図柄を模写したものに彩色し、カラーコピーしていわゆる「ラミカ」(ラミネートカード)形式にしたものにバッヂ部品を付けたものを利用した。ハリーに届いた入学許可証が入った郵便物に見立てた手紙も、シーリングスタンプで封をするなど、凝れる範囲で凝りきった仮装行列であった。文化祭では「コスプレ」といわず「仮装」と表現することによって、普段「コスプレ」という単語から「ふつうの人」ではない物の匂いを感じている人の抵抗感を軽くさせ、個々に持つ変身願望をしまいこんでいた箱の蓋を開かせることに成功したといえるのではないだろうか。ハリー・ポッター以外にも宝塚、ウォーターボーイズ、千と千尋の神隠し、新撰組などの仮装が見られた。そこでは参加者全員が、衣装によってその役になりきることを積極的に楽しんでいるのである。
 衣装や制服という定められたものを着る、ということは集団における属性を明確に示す手軽な手段である。
視覚的な提示は神経衰弱のように同じもの同士を探り当てる、あるいは混沌とした状態から集団を作り出すための良い整理システムなのである。
 洋服は身体の大部分を覆うものであり、それを身にまとうことで世界に陶酔することが出来る。架空の世界の住民に意識を近づける手段として、実際に服を着、小道具を持つ。これは自己を主人公(あるいは自分の好きなキャラクター)に重ね合わせるという手段の新しい形であると考えて良いだろう。
 ここで、昨今のファンタジーブームにつなげて考えてみてみると、ファンタジーの世界の環境には制服、アイテムに富んでいる。職種、階級によっても着るものは様々である。ファンタジーはそれに付随するアイテムが多く、「衣装らしい衣装」が大量に生まれてくるのである。ファンタジーブームを支える理由の中に、コスプレを楽しむ人々がいることは間違いないだろう。

読んでないけど面白そうな本

野上 暁, グループM3『ファンタジービジネスのしかけかた―あのハリー・ポッターがなぜ売れた



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