あけましておめでとうございます。
年末年始はブログの更新をおやすみしておりました。
訪れてくださる方に感謝しながら、またゆっくりと再開していこうと思います。
治療の副作用予防の続きから。
今回はしびれについて。
同時化学放射線療法(以下CCRT)は
放射線療法を平日毎日、それに週1回のシスプラチンという点滴の抗がん剤を併用していく。
このシスプラチンという薬に手足のしびれという副作用がある。
色々な抗がん剤でしびれという副作用はあるのだが、
私の今までの診療で、抗がん剤によるしびれは結構生活に支障を来たし、生活スタイルの変更を余儀なくされる方もおられる。しかも、一旦発症するとなかなか治療に難渋する方も多かった。
ひどいと料理ができなくなったり、歩くことに支障が出ることも。
私にとってはもちろん料理など家事も重要だが、今まで消化器内視鏡検査という手先を使う仕事に大変重きをおいてきたし、これからも続けたい。
だから、手が痺れるという副作用は、少しの可能性であったとしても、怖かった。
このCCRTという治療の副作用プロファイルとして
神経障害は
Grade2(中等症 日常生活動作がちょっと制限される程度)までが8%の発現率
Grade3(重症 日常生活動作がかなり制限される程度)が1%の発現率となっている。
(*神経障害というのは手足のしびれ以外に聴覚障害というものも含まれている。)
残念ながら、手足のしびれに対してエビデンスレベルが高い’予防方法’はない。
しかし、少しでも可能性のある予防方法は試してみよう。
副作用が限りなく少なく、
比較的安価でできること。
前回口内炎と同様のコンセプトだ。
行ったことは、
シスプラチン投与中の手袋、脚には弾性ストッキングの装着だ。
手袋といっても、普通の手袋でなく、キツキツぴったりのゴム手袋。文献的にはサージカルグローブ(手術用の手袋)がいいとされている。
しかもそれを2枚重ねる。
ちなみにこの予防策を報告している文献では
抗がん剤の種類はシスプラチンではなく、タキサン系(パクリタキセルやアブラキサンなど)で行われたもの。
今回のシスプラチンとタキサン系のお薬では、神経障害の発症機序が少々異なる。
しかし、手袋装着による予防は、手術手袋の圧迫により指先の微小血流が減少する作用を利用して、末梢神経への抗がん薬の曝露を抑制することで期待されているもの。
シスプラチンでも同様の予防効果が少し期待できるかもしれない。
このサージカルグローブは手術用ということだが、なんとネットでも購入できる。サイズ選択が数字表記のため初めてだと難しいが、私は5.5というサイズ。
私は手が結構小さく、普段市販の手袋だとSサイズは少し余裕がありSSがあるならそれがぴったりという感じだ。
5.5サイズのサージカルグローブを2枚重ねるとそれだけで、ジーンとするくらいきつい。
これをシスプラチンが投与される5分前くらいに装着して、投与時間の2時間過ごした。
だんだん、きつすぎてジーンとする感じが強くなってきたが、我慢できないほどではなかった。
それから、装着中はスマホが手袋で反応しなくなるため、いじれなくなるから、本を読む準備をした。
他の方法としてはフローズングローブといって、冷やした手袋つける方法もあるらしいが、これは入院中に行うには看護師さんの協力などが必要になってくると思われ、現実的ではなかった。
ただ、しびれの副作用がより多く出る可能性のある化学療法では、病院によってはフローズングローブを用意してくれるところもあるよう。
脚のしびれ対策も重要だ。
脚の方はなかなか手術手袋のようなきっちりしたものがないから、5本指ソックスを履いてこれの上にぴっちりとした弾性ストッキングを装着した。
これは、私の勤務する病院の化学療法チームのオススメだった。
ちなみに弾性ストッキングを履くのは案外大変だから、
脚の準備→手の準備
の順番がいい。
CCRTが終了している今
手足にしびれは出ていない。
ただ、副作用として’骨髄抑制’というのが強く出てしまい、シスプラチンが3週間も連続で中止になってしまった。
そのため本当なら週1回の投与を6回するはずが3回しかできなかった。
この神経毒性という副作用はシスプラチン投与量に相関してリスクが上昇するとのこと。
私の場合はグローブの効果がどうのこうのというより
体に入ったシスプラチンが少なかったから副作用が出るまでもなかったかもしれない。
ともかく、やれることはやった。
それが大事。