父の入院から2週間。
入院以来 毎日面会に行っていた。
父のせん妄は思った以上に酷くならず、今は落ち着いている。
先週の土曜日に初めて面会に行かない日を作らせてもらった。
一日空けて翌日(昨日)面会に行くと
「今日も来なかったらどうしようかと思った」と父が言うので、
「あら、やっぱり来ないと寂しいの?」と聞くと
「ちげーよ、テレビカードが終わっちまって困ってたんだよ。おまえ今日2枚買ってきてくれよ。」と言われた。
…あ、はい。
そういえば相撲が始まるんだった(笑)
すぐさま財布を持って病室を出て、テレビカードを2枚購入。
「お父さま、ご覧下さいませ。こちらにテレビカードが2枚ございます。1枚を今入れさせていただきます。もう1枚はこちらにしまっておきます。こちらでよろしいでしょうか?」
「おう!ありがっとーー」
コンシェルジュごっこという茶番。
入院後 最初の数日は抗生剤の点滴をしていたけど、炎症反応の数値がゆっくりとしか下がらなかった。
その後、脇腹に針を刺して 肺に溜まった水を200cc程度出せたが、水や膿が溜まった箇所が複数あって、全部に針を刺して抜くことはできないそうだ。
治療は飲み薬に変わり、父の病状はとてもゆるやかだが回復の方向へ向かっているとのことで、退院して通院に切り替えてはどうか?と先週医師に提案された。
家の事情で完全に治ってから帰宅させて欲しいのであれば完治までは2~3ヶ月かかるだろうとのことだった。
「父は帰りたいと思いますが、現在父は母と2人暮らしなので、一度母と相談して明日お答えします」
そう医師に伝えると、
「お母様と良くご相談されて、いつでも構わないので決まったら看護師にでも伝えておいてください」
と言われた。
私が別室でリハビリのことで看護師さんと話をしていると、ヘルパーさんに連れられて父がやってくる。
「一緒に話を聞きたいんですって」
「後でご家族ももう一度病室に行かれるのでお部屋で待っててください」
「ここに居させてくれないと私たちが大変なんで」
「じゃ、一緒に聞きましょうか」
ヘルパーさんと看護師さんのやり取りを聞いていて、わがままな父がご迷惑をおかけしてすみません…と思った。
言い出したら聞かない父に手がかかることは家族の私が一番良く知っている。
病院から帰宅すると、さっきのヘルパーさんの言葉を思い出して引っかかる。
もしかしたら父は周りに多大な迷惑をかけているってことなんだろうか?
私たちは普段の父の言動に慣れてしまっていて、それに気づけなくなってるんだろうか?
同じ病室の患者さんも父のせいで困っていたらどうしよう?
あ!だから通院に切り替えようって言われてるのかも?
まだ脇腹を痛がっているけど、治療が飲み薬で様子を見るだけなら自宅に戻った方が良いのかも?
勝手な憶測が次々と頭の中に湧いてきて、早々に退院させなければいけないような気持ちになってくる。
退院して通院に切り替えてはどうか?と医師から提案された話を母に伝えると
「えー!治ってないのに帰されて またすぐ病院に戻るようなことになると困る。最低でもあと一週間は診てもらわないと。明日病院に行ったらそう言って。」
と言われた。
最低でもあと一週間とは…!?
父の病状があまり変わらず 痛みがある状態で帰宅すれば、母にどんな負担が行くか分かる。
私には母の言葉が「あと一週間くらい1人の時間をちょーだいよ」と言っているように聞こえた。
自分の憶測だけで
勝手に板挟みになる私(笑)
この時の私は正直笑えなかった。
私も父に付きっきりで実家に寝泊まりすることはできない。できないんじゃなくて やりたくないんだ。
自分の正直な気持ちに対して、なんてひどい娘なんだ私は!と今度は自分責めが始まる。
病院の提案、父が望むこと、母が望むこと、私が望むこと、全部を程よく真ん中を取ることがとても難しいことのように感じていた。
何をしたわけでもないのに疲労困憊。
明日病院になんて答えたらいいのか…重い気持ちでずっと考えていた。
翌日。
父の面会に行くと
「なんか看護婦が退院だって言って薬をいっぱい持ってきたんだよ。おかしいだろ?だからそれ間違えてるって言って薬は戻してもらった」と聞いた。
おおお…なるほど。
やっぱり病院はもう退院の方向で動いてるってことなのね…と思った。
母と相談して明日答えますって話は
どうやら共有されていなかった模様。
何も聞かされていない父はそりゃ驚いたことでしょう。
「後でナースステーションで話を聞いてみるね!ところでお父さんは もし今退院ってことになったらどうなの?大丈夫そう?」と父に聞いてみると、
「そりゃ帰った方が自由だし帰りてぇーけどよぉ、全然治ってねーし、まだ退院はできねぇーと思う。こんなんで帰ったらお母さん大変だべ?」と言った。
えーーーーー!!!
なにこの意志の疎通!!!!
昨夜電話でお母さんと話した内容をお父さんも聞いてた?(とは言えなかったけど)
この時に私の腹は決まった。
腹が決まれば行動は早い。
早速ナースステーションに向かう。
「昨日先生とお話した父の退院の件で、母と相談してきたので担当の看護師さんとお話させてください。」と事務の方に伝えた。
「私担当じゃない」「一斉に来られても対応できない」「ちょっとお待ってもらって」
繋いでもらえるまでに色んな言葉が聞こえてきて若干モヤる。
きっととても忙しいのね、イライラしちゃうよね、でもそれ私のせいじゃないんだ、大丈夫よ、待つから、ずーっと待ってるから大丈夫だよーー。
ってことで脳内で
あみんの「待つわ」を再生。
待ってたら担当医が直接話を聞きに来てくれた。
「母は父が今この状態で帰ってくるのはまだ心配とのことで、もう少し回復するまで入院させて欲しいと言っています。」と伝えた。
治療が投薬だけになること、
思ったより治りが遅いこと、
それでも炎症反応はゆるやかに下がってきていること、
その数値が現在12であること、
普通の人の数値は0に近いこと、
入院していると体力が衰えること、
トイレに日に20回近く行くこと、
夜眠れないこと、
何度もナースコールを押すこと、
ずっとはこの病棟にいられないこと、
他にも色々聞いた。
その話が父を持て余してるような言葉として受け取ってしまう私。
お互い穏やかに笑顔で「退院」と「入院」の攻防戦を繰り広げたのち…
「ご家族が不安であるなら、このまま入院で様子を見て、炎症反応が10を切って一桁台になったら退院っていうボーダーをひとつ決めましょう」
ということになった。
父 入院継続。
なんか…ごめんなさいという気持ち。
母に一連の話の流れを伝え、
あまり父の入院を長引かせない形で
自宅で療養する方向で説得。
今のうちにのんびり過ごしてと伝えた。
先週は自分の思考に支配されて重たい気持ちのままだったけど、ひとりで考えても仕方ないことは分かっていた。
一旦やめよう。一旦休もう。
そう思って自分を労ることにした。
一日面会に行かないだけで、何となく気分も変わって穏やかになれる。
自分がトゲトゲしていると、
トゲトゲした世界が見える。
自分に優しくすると、
見える世界も優しくなるから不思議。
大相撲が始まるのを楽しみに待っていた父。
テレビカードを手に入れたので、もう目の前にいる私のことは視界に入っていない(笑)
退屈な入院生活。
気が紛れるものがあって良かったね!
大相撲さんありがとう!!
とか思えちゃうこの私の心の余裕!!
自分でもびっくりしたわw
休むって大事。
自分に優しくするって大事。
そういうことね!
はぴいち