<本の中で印象に残った個所>

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「最初の一歩」をどう考えるか

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● オリジナリティそのものは、創造性(クリエイティビティ)に端を発する。まず何より、斬新で実用的なコンセプトを考え出すことだ。だがそれだけでは終わらない。オリジナルな人とは「みずからのビジョンを率先して実現させていく人」である。ワービー・パーカーを創業した4人は、オンラインでメガネを売るという、従来とは一線を画した方法を考えつく「オリジナリティ」をもっていたが、どうして「オリジナルな人」になれたかといえば、消費者がメガネを手軽に買い求められるようにするための行動を起こしたからだ。(P.20)

 

● じつは重要なのは、ブラウザを「どのように」入手したかということだった。パソコンの場合、ウィンドウズにはインターネットエクスプローラーがあらかじめインストールされている。マックならばサファリがインストールされている。顧客サービス係のおよそ3分の2があらかじめ組み込まれたブラウザを使っており、もっとよいものがあるかどうかという疑問をもたなかったのだ。ファイアフォックスまたはクロームを入手するには、すこしばかり頭を使って別のブラウザをダウンロードしなければならない。「今あるもの」をそのまま使うのではなく、みずから行動を起こして、よりよい選択肢がないかを探してみるわけだ。そしてこの自発的な行動が、どれほど小さいとしても、職場での行動を決定づけるヒントになる。P.22)

 

● インターネットエクスプローラーやサファリという「ありもの(標準仕様)」を、そのまま使った顧客サービス係は、仕事に対しても同じ方法をとっていた。つまり、営業の電話ではマニュアルどおりに会話を進め、苦情に対しても決まった手順で対応していた。会社側から提示された事務内容を固定したものととらえるため、仕事に不満を感じると欠勤するようになり、ついには離職する。自発的にファイアフォックスまたはクロームにブラウザを変更した従業員は、仕事に対するアプローチが異なっていいた。商品を売ったり顧客の疑問点に対応したりする新しい方法をつねに探し、気に入らない状況があればそれを修正していた。自発的に環境を改善していくのだから、離職する理由などないに等しい。自分の好みの職をつくり出せるのだから。けれども、こうしう人たちは例外である。(P.23)

 

● 最低所得者層は一貫して、最高所得者層よりも「現状を支持する傾向がある」ことがわかり、ジャストらはこう結論づけた。「現状による害をこうむっている人ほど、逆説的ながら、その状況に疑問をもったり異議を唱えたり、はねつけたり変えたりしようとしないものである。」(P.24)

 

既存のシステムを正当化すると、心が落ち着くという効果がある。「感情の鎮痛剤」なのだ。それが世界の「あるべき姿」であるなら、不満で心が乱されることがないーーという思考回路だ。しかし、不本意ながらも何かにしたがっていると、不正に対抗しようという正当な怒りの感情と、世界のよりよい姿を考える前向きな意志が奪われていくことになる。(P.25)

 

オリジナリティの最たるポイントは、「既存のもの」を疑い、よりよい選択肢を探すことだ。10年以上にわたって研究を続けてきたところ、これは思ったよりもずっと簡単だということがわかった。まず必要なのは好奇心だーーそもそもなぜ既存のものが存在するのかということをじっくり考えてみる。「デ・ジャ・ブ」ならぬ「ブ・ジャ・デ」を体験すると、今当たり前に存在するものが疑問に思えてしかたなくなる。「デ・ジャ・ブ」とは、はじめて見たはずなのに前にも見たことがあるような感覚だ。「ブ・ジャ・デ」とはその反対だ。既知のものを目の前にしながら、新たな視点でそれを見つめ、古い問題から新たな洞察を得ることだ。(P.26)

 

● 納得できない既存のシステムに好奇心をもってみると、大部分のことは社会的な要因に端を発しているということがわかってくるーールールとシステムは人間がつくっているのだ。このことを認識すると、現状をいかに変えられるかを考える勇気が生まれる。(P.27)

 

● じつのところ、神童と呼ばれた人が大人になって世界を変えることはまれだ。... ではなぜ、天才児は才能にも野心にもあふれているのに、世界を進歩させるようなことを成し遂げられないのかというと、「オリジナルであること」、つまり、独自のことや独創的なことを率先して行う術を学んでいないからだ。カーネギー・ホールで演奏したり、サイエンス・オリンピックで優勝したり、チェスのチャンピオンになったりするうちに、悲しい結末が待ち受けている。訓練で技術は完璧になるが、新しいものを生み出すことができなくなるのだ。才能ある子どもたちは、高尚なモーツァルトのメロディーや美しいベートーベンの交響曲を奏でるようになっても、自分では作曲をすることはない。... 独自のルールやゲームを考え出すのではなく、既存のゲームで体系化されたルールにしたがっている。そしてそいの全過程において、両親からの承認や教師の称賛を懸命に得ようとしている。(P.28-29)

 

● 研究によると、創造性のもっとも高い子どもたちはむしろ、教師に好まれないことがわかっている。... 教師は創造性の高い児童を冷遇し、問題児としてあつかう傾向がある。そのため、多くの児童はルールにしたがうことを素早く学び、自分だけのユニークな考えを胸にしまっておくようになる。作家のウィリアム・デレシーウィックツの言葉を借りると、「このうえなく従順な羊」へと変貌を遂げる。(P.30)

 

● ほとんどの天才児は、その茨の道(既存の世界を、よりよくつくり変えるための苦しい変化)を行くことができない。せっかくの非凡な能力を並の方法で使い、現状に疑問をもつこともなく、みずからの仕事を完璧にマスターするからだ。どの分野に進んでも、型にはまった成功への道をたどりながら、安全に行動する。... このような人たちがいるからこそ世界が円滑に回っているのは確かだが、こんな状況では、私たちは社会が敷いたレールの上を走らされているだけではないだろうか。天才児にとっては「よい成績をとろう」という意欲が足かせになっている。... 心理学者のトッド・ルバートとロバート・スターンバーグは、「成果をあげたいという欲求が中程度を超えると、独創性が低下するということが実証されている」と述べている。(P.31)

 

● 私は本書で、オリジナリティには徹底的にリスクを冒すことが必要だという通説をくつがえし、オリジナルな人たちは私たちが思うよりもずっとふつうの人たちなのだ、ということを示していきたいと思う。(P.40)

 

● 経済管理学研究者のジョセフ・ラフィートとジー・フェンは、ある興味深い研究を行っている。「起業する前には、本業を続けるのとやめるのではどちらがいいと思うか?」という単純な質問をするのだ。... 調査をまとめると、起業に専念することを選んだ人は、自信に満ちたリスク・テイカーだった。一方、本業を続けたまま起業した人は、リスクをなんとか避けたがっており、自信の程度も低かった。たいていの人は、リスク・テイカーのほうが明らかに有利だと予測するだろう。だが研究の結果はその逆だった。本業を続けた起業家は、やめた起業家よりも失敗の確立が33パーセント低かったのだ。リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高い。そして、大胆なギャンブラーが起こした会社のほうがずっともろいのである。(P.41-42)

 

● 半世紀前、ミシガン大学の心理学者クライド・クームスは、リスクに関する革新的な理論を編み出した。リスクの高い株式投資をしようとする人は、その他の投資では安全策を選んで身を守ろうとする、というものだ。日常生活においても、成功を収めている人はこれと同じようにリスクに対処し、ポートフォリオのなかでバランスをとっているという説を、クームスは提唱した。ある分野で危険な行動をとろうとするのなら、別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとするのだ。リスクのポートフォリオという概念を考えると、人生のある部分でオリジナルな行動をとりながら、そのほかの部分では標準的な域を出ない人が多いというのも納得できる。(P.44)

 

● しかし、日中の仕事が妨げになってやりたい仕事ができない、ということはないのだろうか? 常識的に考えれば、時間と労力を十分に注がなければいい仕事ができないだろうし、集中的にとり組まなくては会社が成長しないだろう。だがそう仮定するのは、バランスのとれたリスク・ポートフォリオの最たる利点を見逃している。ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれるというメリットを見逃しているのだ。経済的な基盤を確保しておけば、まだ中途半端な段階で書籍を出版したり、事業を開始するなどのプレッシャーから逃れられる。(P.45)

 

● グーグルの多くの従業員は会社に対する愛着が非常に強く、自分の職務を「不動のもの」として受け入れていることがわかった。彼らは顧客への対応などは、既存のやり方を変えられないものととらえていた。この凝り固まった考えを解きほぐすために、私たちはグーグルの人材分析の立役者である2人の社員と手を結んだ。そして何百人もの従業員を対象にワークショップを開き、仕事は静的な彫刻ではなく、形状を変えられる積み木のようなものだと伝えた。... みずからのスキルと職務は柔軟なものだととらえるようにすすめるだけで、幸福度と成果の上昇は少なくとも6カ月継続していた。既存の能力だけを使うのではなく、みずから率先して新たな能力を開発し、自分だけの仕事を形成することができたのだ。その結果、こういった従業員は他者と比べ、昇進や希望の役職への異動を果たした確率が70パーセント高かった。「自分の限界は、自分で設定していたにすぎない」ということに気づいたのだ。(P.53-54)

 

● オリジナルなことを実現して成功している人たちの中身は、私たちとさほど変わるものではない。彼らも、みなと同じような恐怖や不安を感じている。しかし、何が違うかといえば、「それでも行動を起こす」ということだ。「失敗することよりも、やってみないことのほうが後悔する。」 彼らはそのことを、身をもってわかっている人たちなのである。(P.56)