弘美はとある地方都市でホステスをしている。最近風営法の取締りが厳しく、午前一時の閉店の日が続く。それは弘美にとっては嬉しいことだった。彼女は余りお酒に強くない。そんな彼女の楽しみはインターネット。メッセンジャーで誰とも知らない男と話すことで寂しさを紛らわせていた。
今夜は土曜日。彼女は閉店の時間になり急いで帰宅する。日曜日が休みということもあり、明け方までメッセンジャーを楽しむ。そんな生活のリズムだった。インターネットの世界では、自分がアイドルになれる。ちやほやされる。美人といわれる弘美には彼氏がいなかった。寂しさから彼女はメッセンジャーをはじめ虜になった。大勢の男性が彼女の事を必要とする。快感を覚えていた。
マンションに帰り着くと、ノートパソコンの電源の入れる。パソコンの明かりに弘美の整った顔が照らされる。彼女はノートパソコンの明かりだけで、部屋の明かりをつけない癖があった。
「たまにはビールでも飲もうかな?」
今夜はお客が少ない事もあってあまり飲んでいない。なんだかビールを飲みたくなった。プシュと鈍い音が響く。ビールの泡がこぼれた。
「大変!パソコンにこぼれたわ!」
彼女は急ぎティッシュを探す。暗がりでもたついたが、キーボードが少し濡れた程度で済んだようだ。
「よかったわ。でもパソコン壊れていないかしら?」
プラウザを起動する。
「あれ?」
登録してあるいつものポータルサイトが表示されない。
「変ね・・・。」
ハードディスクからカタカタと乾いた音がする。
「やっぱり・・・ビールのせいね。」
ノートパソコンが一瞬暗くなる。
「きゃ」
弘美は小さな声でノートパソコンを見つめる。暗い画面に文字が浮かんでいる。
僕ト死ンデクレマセンカ?
弘美は驚いた。なんでこんな文字が勝手に浮かぶのだろう。弘美は怖くなっていく。
「どうしよう。電源・・・そうだわ。電源を落とさなきゃ。」
パソコンの終了の準備をする。目にはあの文字が浮かぶ。
「嫌だわ。早く終了しないと。ひゃぁ!!」
彼女の目には、パソコンの文字が消え、男性の顔が徐々にはっきりしてくる様がわかった。弘美はパニックになっている。早くパソコンを切らないと・・・。
「電源・・・コンセントから抜かないと!」
慌てて電源コードを抜く。振り返った弘美は、パソコンの画面が薄暗く照らされている事に気付く。
「あぁ、ノートパソコンはバッテリーを外さないと駄目だわ。」
そう気付いた弘美は、ノートパソコンに近づく。画面はただボーと薄暗い。男性の顔は消えていた。ノートパソコンに近づいた弘美は動きが止まった。ノートパソコンに突然に、しかもはっきりと浮かぶ男の顔。さっきの男の顔。その目と弘美の視線が合ったのだ。