田原総一朗の政財界「ここだけの話」大統領単独インタビューで感じた最高責任者の悲哀

この記事は2008年11月27日、日経BPNETの時事コラムに掲載されました。

田原総一朗の政財界「ここだけの話」


大統領単独インタビューで感じた最高責任者の悲哀
実は、2年以上前から日本のアメリカ大使館にブッシュ大統領への取材の申し込みをしていたのだが、11月12日に本当に突然「21日の木曜日11時にホワイトハウスに来てください」という連絡があった。もちろん、僕もスケジュールが詰まっていたのだが、現役大統領へインタビューができるならば、ということで何とか都合をつけてアメリカへ向かった。このインタビューにはいくつか問題があった。
一つは、「インタビューには応じるが、通訳をつけてはいけない」という条件だった。インタビューをする部屋には僕しか入れない。
僕は、英語が非常に不得意なもので「困ったな。こんなことならば英語をしっかりやっておけばよかった」と思ったのだが、それにはもう20年か30年か遅いわけで、とにかくやろうと思って臨んだ。
このインタビューは、ブッシュ大統領の8年間の総括を聞くことができるので、タイミングがとてもよかったと思う。
ただ、これが二つ目の問題になるのだが、指定されたインタビュー時間がたった8分で非常に短かった。結果的には12分間のインタビューになったのだが。
そこで、8分のインタビューで何を聞こうか、スタッフと話し合い、(1)金融危機、経済大混乱の問題、(2)イラク戦争の問題、(3)アメリカがテロ支援国家から外した北朝鮮の問題、(4)オバマ新大統領について聞くことにした。
僕は、イギリスの現役の首相など、色々な国のトップに取材をした経験がある。いずれもどのような質問をするのか事前に出せといわれた。サッチャー首相の場合もそうだった。ところが、今回のアメリカは、事前に提出するのは質問予定の項目だけでよいということだった。さすが民主主義の国だな、と感心した。
(略)
ブッシュ大統領について、何よりも印象的だったのは、逃げずに、ゆっくりと丁寧に答えてくれたことだ。
「経済問題について対応が“too late”、遅すぎだったのではないか。リーマンが倒産するまでの対応が遅すぎたのではないか」と僕が言うと、ブッシュ大統領はニヤッと笑った。 困った質問をされたときに怒る人もいるが、ブッシュ大統領は笑うタイプのようだ。インタビュー中に彼は2回笑った。 ブッシュ大統領に会う人は皆彼に好感を持つ。僕もそうだった。彼は、ハッタリがなく、威張らず、逃げない。丁寧にごまかさないで話す。「イラク戦争は、70パーセント以上も国民がするべきでなかったと言っている。大量破壊兵器も、ビンラディンとフセインの深い関係もなかった。これについてどう考えるか」という質問にも、不愉快な顔もせず丁寧に答えてくれた。
ブッシュ大統領は「独裁者フセイン政権をつぶして、イラクは民主化されていることは成果だと思う」と話した。
「4200人もの兵士が戦死し、イラク国民にも迷惑がかかっている。この責任はどう取るのか」という追及には、「それは責任を感じるが、民主化していることは成果だと思う」という答えだった。これは突っぱねるというよりは、「分かってくれよ」という説明だった。
日本の場合は、自由主義経済といいながら、ほとんど80年代までは社会民主主義をやってきた。日本は、自由主義経済でも、社会民主主義でもどっちでもよいのだ。理念、理論というものがあまりない。
むしろ、どちらが都合がよいか、どちらが便利かということで自由に変えていく。
アメリカはやはりまず理論、理念ありきなのだ、ということを非常に強く感じた。
(略)
このインタビューは北朝鮮の拉致問題や核問題にも触れていたが、ブッシュとしては忘れていないし、今後も続け行くだろうと答えている。
最近、ブッシュ大統領に記者が最後のインタビューを受けたニュースを見た。イラク戦争についてどう思うかという質問には「君は9.11を覚えているか?」と答えカトリーナの後手後手に回ったことについても「カトリーナについては、じっくりとことん考えてみたのだが」と前置きしながら、やり直すことができたとしても、やはり同じように対応したはずだと結論し、リーマンを初め経済問題については、「自分を哀れんだりするのは止めたい」と答え、引退後には「自分が大きな麦わら帽をかぶって、アロハシャツを着て、どこかのビーチでのんびりしてるなんて、そんな姿をとてもじゃないけど想像できないんだ」と言う。私の意見は、9.11を起こしたのはアルカイーダであり、イラクではない。大量兵器は無かったし、「民主化していることは成果だと思う」と言う意見に関しては論理のすり替えに過ぎないし、傲慢そのものである。未だにイラクでは内紛が起こっているではないか?カトリーナに関しても本来は州兵が救助に当たるのだが、イラク戦争に刈り出されて助ける人員が不足していたのである。もし、戦争を行わなければカトリーナで助かった人は大勢いたはずである。そして、困っている人々を尻目に、この戦争でものすごい予算を使ったのである。
また、もともとアメリカはタリバンを支援しており、手に負えなくなったら、アフガニンスタン戦争を起こし非人道的なクラスター爆弾を使った。
田原総一朗がアメリカはやはりまず理論、理念ありきなのだと言うが、太平洋戦争で非戦闘部員を大量に殺した東京大空襲での非人道さ、更に私だけかもしれないが、子供が作った工作の実験をするように原爆を落として、その効果を見てみたかった好奇心というのがアメリカの気質で、クラスター爆弾の事実を聞いた時、やぱっりどうしても自分たちが作った工作の効果を試したかったんじゃないかと思う。そこに何らかの理論、理念ありがあったとしてもすり替えである。
更に、経済界に遠慮して、京都議定書にサインしなかったこと、ここで宗教のことを言うのは避けたいが、絶対におかしいのにイスラエルのガザ攻撃で多くの子供や女性が亡くなっている事についても、沈黙を守っていることでアメリカを動かしているのが何かを歴史に疎い愚者の筆者でも容易に察することが出来るのである。
更に、9.11の世界貿易センタービルをグラウンドゼロと言うのなら、第2次世界大戦ウォール街の大暴落、今回の世界同時不況のグラウンドゼロはアメリカ合衆国そのものなのである。
キャスターを初めマスコミの方々は声を大にして批判すべきは批判し、マスコミ、アナウンサー、キャスターを目指す方々も社会情勢について深く想いをいたして貰いたいものである。
戦争で多くの女性や子供が亡くなっているのに、アメリカ国内では中絶の是非を問うているのである。カトリック教徒でない私には全く理解できない国である。
また、反対に日本は中国から揶揄されるほど、言論の自由が許された社会主義の国らしいのだそうだ。
追伸
筆者のコラムを読まれてメールをいただいたのですが、私は殆ど文章の推敲に時間をかけており、アップするのはほんのわずかな時間だけで、メールが送られてきたことに気づきませんでした。また、今後は注意いたしますので、御用があればメールを送って下さい。


2009年1月20日掲載

この記事は朝日新聞11月4日に掲載されました。



就活の早期化・長期化に大学側が危機感、適正化申し入れ(1/4ページ)[新聞掲載]2008年11月4日

就職・採用活動の開始時期
 大学生の就職活動、企業の採用活動に、大学側が危機感を募らせている。早期化、そして長期化に、だ。国立大学協会などは今夏、97年の就職協定廃止後、初めて「学業に支障がある」として、経済団体に適正化を申し入れた。しかし、すでに一部の職種で選考を終えた社もあるうえ、秋になり、企業の説明会も本格化している。
     ◇
 都内の私立大学に通う3年生の女子学生(20)は9月中旬から、在京テレビ局のアナウンサーのエントリーを始めた。10月は、面接試験が次々行われた。「多くの局で選考が終わったと聞いています」
 学生と企業が接触し始めるのは、3年生の夏休みだ。学生は、希望企業に、仕事を実体験する「インターンシップ」を申し込む。学生たちは「事実上の就職活動のスタート。人事担当者に気に入ってもらう大切な場です」。昨年、ある損害保険会社の1日インターンシップに参加した関西大4年生の男子学生(22)は「ずばり就職セミナーという感じでした」。
 秋に入り、会社説明会も次々、開かれている。横浜国立大学3年の男子学生(22)は「先輩の手帳を見たら、秋以降、説明会の日程が来春までびっしり書き込まれていた。私も準備をしなければいけないと焦っています」。今、就職情報会社のホームページを見ながら、説明会の日時をチェックする毎日だ。
 リクルート(東京)がまとめた「就職白書2007」によると、アンケートに答えた861社のうち41.4%が、09年3月卒業生の採用スケジュールが前年より「早まる」と回答。理由に、優秀な人材の確保82.9%、競合対策56.9%などが並ぶ。他社に先んじて、いい学生を確保しようと、企業は採用を早める。一方、従来通り、4月から活動する企業もあり、学生たちの活動は、必然的に長期化することになる。
         (以下略)


この記事は1/4とあるので、この記事は4ページあるのだが、筆者は、この1ページを読んで非常に驚いた。筆者就職協定以前の人間であり、1997年以前就職協定があったことも知らなかったのである。しかし、インターンシップと同じように、3年生には工場実習というものがあり、私も大学3年の時にある製鉄所で夏休み1ヶ月1万円で働いた。男女雇用均等法以前であるにも関わらず、(つまり私がこの製鉄所に就職する可能性は無いのに)忙しい最中に、各部署の方々に青二才の私たちのために貴重な時間を割いて工場見学させていただき、課題については、多くの人に支えられてリポートを完成させた。インターンシップで「ずばり就職セミナー」なんてことは、決してなかった。企業と言うものがどういうものか良くわかった貴重な体験だったのである。
私たちの時代には、大学4年生の半ばに成績が発表され、院生、次に学卒の成績の良い順から、企業の推薦枠で就職した。つまり、良い成績を修めないと、就職も思うように出来なかったのである。97年に就職協定廃止され、大学3年生で就職活動をするということだが、大学3年生と言えば教養課程を終わってやっと専門課程の学科を学ぶ大切な時期である。曽野綾子の「太郎物語大学編」にもあるとおり、私は学生は最低、4年間学問に専念するべきだと考えている。その成績から、企業が採用を決めるのが正論と言うものではないか?私から言わせれば、大学4年なんて、あっという間に終わってしまう。短すぎるほどである。国立、私立を問わず思い切り学問が出来る設備を自由に使えるのは、大学時代だけなのである。高い学費を払う対価として、大学の研究設備を自由に使えるのは、4年間だけなのである。例えば、1回計算すると数万円掛かるスーパーコンピュターを大学の授業料だけで、自由に扱えるのは、大学の4年間しかないのである。
。国立大学協会が「学業に支障がある」と経済団体に適正化を申しいれたという話は、しごく真っ当な話で、企業がその学生がどんな成績であるか、どんな研究をしているのかを考えず、専門課程に入ったばかりの学生に会社説明会をするなど、おかしいとしか思えない。しかも、昔どおり大学4年の4月から活動する企業もあり、学生たちは、大学3年の秋から大学4年の4月まで、就職活動することになり、必然的に長期化することになるのである。本来、学業に専念するべき大学生に、3年生から接触するなどとは、言語道断である。
アナウンサーになるためには、確かに発声やアナウンスの技術が必要であるが、前回述べたように、知性も必要であるし、そのためにはちゃんと学問を修める必要がある。
私が学問と言う言葉にこだわるのは、大学受験はあくまでも勉強であり、物事の本質を問うことが出来るのが学問で、それができるのが大学だからであるからである。うろ覚えだが、『富嶽百景』で『富士山には月見草が似合う』『人間失格』で『恥の多い人生を送ってきました』と書いた太宰治も、学問をした後にその知識は忘れても何かが残る、それが大事なのだと何かの文章で書いていたが、けだし名言である。
私は、多くの矛盾を抱えるアメリカ合衆国が決していいとは思わないが、日本も合衆国のように、入学しても学問に励まないと卒業できないようにする必要があるのではないか?私は、パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズが好きで読んでいるが、犠牲者や職員が、働きながら夜学に通い別の学位、修士、博士課程で学んでいるケースが度々出てくる。合衆国では○○学の単位を取ることが就職やキャリアに大事なことであることが良く分かる。
日本でも、3.5年間(この時点で卒業できるかどうか分かるから)どんなことを研究したのか、面接で聞いてから採用しても遅くは無いのではないかと筆者は思うのである。
アナウンサーの安藤優子さんは、上智大学を休学して、その後復学して、最終的に仕事と勉学を両立させながら、卒業された。更に上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻修士課程を卒業された。それが、彼女のキャスターとしての能力に必要だったかわからないが、彼女のバックボーンを更に固めたことは想像に難くないと思う。
今年は、100年ぶりの世界大不況で、今年の就職戦線はかなり厳しいものになることは間違いあるまい。
しかし、毎年女性アナウンサーを採用しながら、何故かニュースキャスターを他局出身のフリーアナウンサーを抜擢するのは何故だろうか?
言うまでも無く、就職戦線は厳しいかもしれないが、やはり、人材を育てるという局を選ぶべきであろう。
それから、もう1つ言いたいことは、出産し育児休業を取って復職して、アナウンサーを続けたい方に言いたい。この厳しいご時勢にあえて言うのだが、復職後1年は使い物にならないと待ってくれる局を選ぶべきである。何故なら、NHKの朝連続ドラマの「ちゅらさん」でも描かれているように、子供は、生後1年位は呼吸器がちゃんと発達していないのでどんなに気をつけても気管支炎や下手をすると肺炎なる可能性があるし、保育園に預けるとよその子から病気をもらってしまう。麻疹やおたふくや水疱瘡もは保健が利かなくても、1歳未満に自費で予防接種を受けさせるのがのぞましいが、ただでさえ予防接種の多い生後1年に全部済ませるの難しい。毎日40℃位の熱が何日も続くこともあるので、母親は途方にくれてしまい、心配と看病疲れでダウンしてまうのである。そのような病状だとお金を積んでもベビーシッターは看てくれないし、看護師の資格を持った祖母が代わって診てくれるのではない限り安心は出来ないのである。祖父母が近くにいても、こと子供の病気に関して母親が1人で救急病院に連れて行くか様子を見るか判断しなければならない。しかも、子供の病気は、大事なプレゼンや客先との打ち合わせの日に限って狙ったように起こるのである。しかし、それも1年の辛抱である。1年経てば、熱もめったに出さなくなるし、多少の熱でもストックの抗生剤を与えておけば、病児保育で診て貰える。だから、復職後1年は大目に見てくれる局を選ぶのが大事なのである。

2008年1月13日掲載

この記事は日経ネットの日経ゴルフガイドのインサイドロープに掲載されました。


<アナウンサーの軽率なコメントが社会問題に>
 新年早々、米国のゴルフメディアで事件です。場所はゴルフ専門局、タケがいた会社でもあります。ここがカバーしていた米ツアー開幕戦、メルセデスチャンピオンシップでのこと。放送中の女子アナウンサーの失言が米国ではとりわけデリケートな人種問題に発展してしまったのです。
 彼女が使った言葉は“Lynch him in back alley”(裏路地でリンチしろ)。解説のニック・ファルドが“to take Tiger on, maybe they should just gang up for a while.”(タイガーをやっつけるには、少しの間押さえつけておくしかないな。)に答えて、口を滑らせたコレです。
 この「Lynch」の一言が1880年代後半から1900年代前半にかけて、南部の黒人がいじめられた歴史を思い起こさせる、ということで事件になったのです。彼女は2週間の停職処分。波紋はさらに広がり、「Lynch」を連想させる写真を掲載したゴルフ雑誌の編集者はクビになりました。



この拙い、コラムを読んで下さっている皆様、明けましておめでとうございます。
今年もどうそ宜しくお願いいたします。
では、コラムの本文に入らせていただきます。
この問題に対して、小山武明さんは、2つの主張をされている。一つ目は、アナウンサーは視聴者に対して、現場のプレーをきちんと実況することがアナウンサーの仕事であると言うこと、二つ目はそのインタビューだけが一人歩きすることの危うさである。
私は一つ目の意見に勿論賛成である。確かに、アナウンサーの本分は、実況中継をして、正確に視聴者に状況を伝えるのが本来の仕事である。
小山武明さんはこの女性アナウンサーのコメントをほめられた発言ではないと控えめな言い方をされているが、日本だったらこのコメントはチンピラか柄の悪い人の発言ではないかと耳を疑う程、下品な発言だと思う。スポーツの中継中に『リンチ』、しかも紳士のスポーツであるゴルフの中継にはふさわしくない発言であり、ウィットの聞いた発言とは程遠い。実際、タイガー・ウッズはメルセデスチャンピオンシップに出場していないので、ニック・ファルドの発言がどんな経緯から出てきたのかは分からないが、さらりと受け流してさりげなく話題を変える、「~と言うことですね。」とファルドの発言を一旦要約しておいて中継に専念する、あまり知性は感じられないかも知れないが、カウンセリングの手法として、ファルドの発言をそのまま返し(英語圏では同じ意味の言葉を単語を変えて発言するのがボキャブラリが有って知性があると見なされる)共感の意を示し、中継に戻る。そして、ファルドほどの偉大な英国のゴルファーなら、彼から現場のプレイヤーのプレーの意見や分析、彼のエピソードをさりげなく引き出すことが、アナウンサーの力量というものであると思う。
しかし、インタビューだけが一人歩きすることの危うさに関しては、どう贔屓目にみても彼女の発言は彼女の知性や人生観を露呈しているとしか思えないのである。
今、合衆国では、今では黒人と言う言葉を使わず、アフリカ系アメリカ人というらしい。しかしどんなに言葉を変えてみても、文章にすると、その人のの品性は自ずと現れるものである。それは、日本でも同様で、言葉狩り以前の古い訳文を読んでも不快にならないものと同じであろう。

2009年1月6日掲載