「サイダー、あと少し。」
コップの下に少したまった透明なサイダーのしたから、いくつものカプセルが飛び出る。
部屋のエアコンが、また夏の夜を感じさせる。
なんだろう。わからない。
言えない。
どうしても、口からでてこない。だせない。
「スイカ、切ろうかな。」
冷蔵庫を開けた瞬間、「スイカ買ってきたから食べていいわよ」と母さんに言われた。言われなくても食べていたと思うけれど。
本当に夏の味。口に入れた瞬間の水分の感じは、たまらなく大好きで。
なんだか自分がまだ幼い事に気づいてしまった。
「あ・・・ティッシュ。」
なんだか苦しい。
手に付いたスイカの赤くて透明な水。黒い種。横にはポテトチップスの筒。
「何考えてるんだ、俺は。」
スイカの甘さが、あまりわからない。でも手は止まらない。
結局、半分食べてしまった。
「はぁ・・・。」
もうどのため息かも、わからない。
「でさぁ。その子が一目ぼれ。」
「へぇ~。んなことあるんだなぁ~」
「もうすぐに告ったよ。そしたらOKでさ。」
「まじ!?急展開。」
「すげぇw」
「でもよぉ~。束縛ひどくてさぁ~。すぐアボンだったね。」
「んだよぉ~」
「だから顔で選ぶからだっつの。」
「んなんほれたんだからしょうがないじゃん?」
「まぁそりゃそうだけどよぉ~」
夏の半そで。皆Tシャツ姿で都会。明かり。人が多い。
人をよけながら歩く。暑い。夜なのに。なんで。
「恋してるねぇ~w」
「まぁ夏だしな?」
「いうねぇ~。なんか乗り遅れた感じ。」
「いい子、いねぇかな?」
「思ってるだけじゃこないぜ?」
「そうそうw」
「ったく人事だもんなぁ~。」
歩きながらの会話。夏。恋。男3人。制服。
見覚えのある景色。だけど知らない。でも懐かしい。
「頑張らなきゃなぁ~」
「そういや祭りどうする?こんどそこであるぜ?」
「そうだなぁ~。彼女つれてくw」
「いねぇのに?w」
「それ禁句やってw」
「わりぃわりぃ。」
「じゃぁ~ん発表。」
こいつら。誰だ。知らない。でも、知ってる。
覚えてる。いや、違う。違うんだ。
「俺彼女と行きます~♪」
「うわぁ!まじかよせけぇ!」
「えぇなぁ~w」
「だろ?w」
「でも、俺も彼女いるからw」
「え!?」
「おいおいお前もかぁ~w」
「わりぃ。今年は一緒に行けそうにねぇや。」
「まぁしゃあないね。」
気づけば河川敷。知ってる。確か・・・
ダメ。わからない。ゆれる草。流れる川。明かるい花火。光る月。漂う雲。
これ、
広島?
「ゆうちゃんは誰を誘うの?」
ばさっ!!!!!!
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
いやな汗が額にびっしりとついていた。エアコンの風で、その汗が冷やされているのが分かる。
パソコンの目の前だった。
「なんなんだ一体・・・」
久しぶりに見てしまった。もっといろいろなことがあったけれど、もうこれしか覚えていない。
「りょうくん・・・こうちゃん」
こんな形で、会うことになるなんて。
大人になった二人に。何故制服だったんだ。高校生ってことなのか。
「はぁ・・・はぁ・・・」
心臓は穏やかになってはくれなかった。
「・・・びびった・・・。」
俺は、寝る準備をし始めた。
俺にだっているさ。彼女が。二人に伝えなきゃな。
