ブー・・・ブー・・・
「ん・・・」
俺は携帯のアラームを止めようとする。でも目は開きたくない。だから視界が真っ暗のまま自分の携帯を探すのだ。場所はわかっている。俺の顔の真横だ。でも手を動かしても携帯が手に触れない。一体どこにいったのか。
「どこだ」
朝だというのは分かっている。アラームはその時間にしか鳴らないし、目を閉じていても朝だと分かる。窓から入ってくる朝独特の光が、窓から優しく部屋を照らしている感覚。
「ったく」
結局、目を開けてしまうのは少し悔しい。
「まだいないのか。」
俺はいつものショッピングモールにいた。友達と会う約束をしていたからだ。俺を入れて3人。
今日は一日中遊ぶ日。昨日はレポートだのなんだので充実してなかった分、今日は少しテンションが上がっていた。
財布。
携帯。
音楽を聴くためのイヤホン。
暇になったらできる英単語帳。
スケジュール帳。
我ながら準備は万端だった。時間も、集合時間ぴったり。もう何も言うことはない。
俺はフードコートの端に席を陣取った。
ブー・・・ブー・・・
「・・・?」
俺はジーパンの後ろポケットから携帯を取り出した。
着信。友達からだった。
応答ボタンを押す。
「もしもし?」
「あぁ~、今どこ?」
「もういるぜ?」
俺は誇らしげに友達に言い放った。
「あのさぁ、一旦俺の家きて?今日でっかい公園行くから。」
「・・・へ?」
聞いていないぞ。
自転車をこいでから、もう結構たっていた。あたりは俺の家付近とは違って、少し田舎の雰囲気が漂い始めていた。日も、少しづつ高くなっている。
なんでも、少し遠い大きな公園に行くらしい。
公園についてみると、思いのほか綺麗で大きな公園だった。池もあるし、アスレチックも大きいものが二つ。日曜日ということもあって、かなり公園は親子連れや年配の人たちでにぎわっていた。
この公園に来る前、立ち寄ったコンビニで昼ごはんを買ってきた。運のいいことに、くじみたいなものを引いて豆乳があたった。まぁあまり好きではないのだけれど。
前公園ではしゃいだ時はいろいろなことをして遊んだけど、今回は雑談して終了。そのほかに公園でした事といえば、公園内の探索ぐらいだった。
公園で雑談会が終わると、俺たちは友達の家の前にいた。6月の暑さは、俺の服を汗でぬらしているのがわかる。久しぶりに水浴びでもしようと、俺たちは家の前で水をバケツに汲み、手ですくっては投げたりしていた。あまっていたおにぎりも食べたし、友達は俺にアイスをおごってくれたりもした。意味のないビデオも撮ったり。
「あ、そうだ。」
俺はふと口を開いた。
「ん?どしたん?」
「いや、証明写真とらなきゃいけんくてさ。」
「あぁ。じゃあ行く?」
もう一人の友達の家の近くにあるショッピングモールに、証明写真を撮る場所がある。まぁそのショッピングモールに俺は朝行ったわけだが。
「んで・・・その格好で?」
「ん?」
「俺の友達は、スーツで証明写真撮るし、スーツでバイトの面接行くとかいってたぜ?」
「・・・。」
聞いていないぞ。
「あっちぃ・・・」
父さんの日々の我慢が、身をもって感じられた。
結局、スーツで証明写真を撮りにいったのだ。着るのに少し時間はかかったが、友達は家の前で待ってくれていた。これだけしたのだ。うかってほしい。
「久しぶりにネクタイしめたわ。」
俺は携帯の着信メールに気づいた。従姉妹からだった。
メールを見た俺は、少しの間止まっていたのかもしれない。動いた記憶がない。
それだけ、俺には大きなことだった。
「そうか・・・」
内容は、俺の「過去」についてのことだった。俺にとっての精一杯の「けじめ」と従姉妹の「けじめ」は、根本的に何かが違っていた気がする。俺は自分が少し惨めだった。でも少し変われた気がする。
捨てるのではなく、つなげる。
「また、思い返せばいいのか・・・。」
約束の日。彼女に言わなければいけない「言葉」が、また一つ増えてしまった。
