序論

最近、上場廃止の理由が発生して取引が停止されたA社の内幕を調べた結果、企業ハンター田中さんが深く関与していたことが明らかになりました。この記事では、田中さんがどのように無資本M&Aを通じて上場企業の資金を横領するのか、実際の事例を基にわかりやすく説明します。

無資本M&Aの始まり

田中さんは資本がなかったものの、A社買収資金を調達するためにサラ金市場にアクセスしました。サラ金業者から買収資金を借りてA社の株式を買い、その株式を担保に提供して筆頭株主となりました。この過程で田中さんは自分の資金を使わずにA社の筆頭株主になることに成功しました。しかし、株価が担保価値よりも下がるとサラ金業者が資金を回収する可能性があるため、田中さんは株価操作を試みるようになります。

株価操作と子会社設立

田中さんはA社の子会社を複数設立し、自身を代表取締役に据えました。親会社であるA社はスマートフォン部品を製造する会社でしたが、子会社Bは資源開発、Cは水素車部品、Dはビットコイン関連事業など、突飛な事業を展開しました。そして各子会社の好材料となるニュースを継続的に発信しました。

例えば、資源開発を行うB社が鉱山を買収する、水素車部品企業のC社が新技術を開発したなどの情報を流しました。これらの記事が出ることでA社の株価は上昇しました。株価が上がると田中さんはA社の株式を少しずつ売却して借金を返済しました。借金を返済しなくても株価が高く保たれていればサラ金業者が資金を回収するリスクがなくなるからです。

資金横領の開始

田中さんの本当の作業はここから始まりました。田中さんは子会社が資金を必要としているという名目でA社の余剰資金を子会社に移しました。最初はA社がB社に貸付金を提供する方式で1億円を渡しました。その後、A社の財務諸表を見ると8000万円が減損処理され、2千万円しか残っていないことがわかりました。これはB社が8000万円を返済しなかったことを意味します。

外部監査を受けない小規模企業であるB社は、なぜ貸付金が減損処理されたのか知る術がありませんでした。株主の反発が強まると、田中さんはさらに巧妙な手法を使いました。B社が1億円規模の第三者割当増資を行い、A社が単独で参加するように仕向けたのです。この2回の取引を通じて田中さんはA社の持つ現金2億円を成功裏にB社に移動させました。

資金移動と増資

その後、田中さんはC社に現金を移したいと考えましたが、A社にはもう現金が残っていませんでした。田中さんはC社の水素車部品が大企業に供給されるという記事を流し、株主の期待を大いに高めました。そしてA社が2億円規模の増資を行い、株主から資金を集めた後、これをC社に移しました。この過程で田中さんは再び貸付金および第三者割当増資を利用しました。

田中さんはB社とC社の代表取締役としてこの資金を給与として受け取ったり、法人カードを使って自由に消費しました。子会社が進めるとされた新事業は全く進展がありませんでした。最終的に子会社に流れ込んだ資金は田中さんの懐に入り、これが資金横領となったのです。

結末と教訓

この過程でA社は余剰資金が底をつき、増資で得た現金も田中さんの手に渡り、企業価値は無惨な状態となりました。田中さんは空っぽになったA社を別の企業ハンターに引き渡し、姿を消しました。結果として、A社の株主だけが企業価値の下落による損失を負うことになりました。

このようなパターンは、小型株で頻繁に見られる無資本M&Aの典型的な資金横領手法です。現在取引が停止された企業の実際の財務諸表を見ると、会社が代表取締役を含む特別関係者に291億円を貸し、そのうち99億円しか回収していないことがわかります。特に代表取締役に直接貸し付けた13億円のうち、2000万円しか回収されていない状況です。

正常な会社では起こり得ない取引です。幸いなことに、今年から金融監督院がこれらの行動を調査すると言っていますが、投資家自身がこのような企業を見極める目を養うことが重要です。特別関係者が過剰に多い企業や、筆頭株主または特別関係者に多額の資金を貸している企業は避けるのが賢明です。財務諸表の注記で貸付金および特別関係者を検索し、これらの内容を確認するようにしてください。

結論として、取引が停止されたり、最近上場廃止された会社の財務諸表をぜひ一度見てみてください。リスクのある企業を見極める目を養う時間になることを願っています。