新学習指導要領実施に伴う「保護者には見えにくい学校の変化」
この記事は,ぶんぶんどりむ2011年9月号に寄稿したものを蔵出ししています。
この春から小学校で新学習指導要領が全面的に実施されました。英語の授業が始まったり,授業時間数が多くなって教科書が厚くなったり,といった目に見える変化だけでなく,先生方の授業方針や学校の教育目標といった,保護者には見えにくい部分の変化も数多くあるようです。今回は,学校の先生を対象に2010年8月に実施された「学習指導基本調査」を基に,目に見えない部分で学校がどのように変わろうとしているのかについて紹介していきます。
○「学校教育目標」が変わり始めている
どの小学校にも「教育目標」があります。トップ3は「心の教育豊かな心」「思いやり」「健康体力」で,6割以上の学校が目標に掲げています。目標の中には,こうした普遍性を持つものとは違って時代の影響を受けるものも少なくありません。「ゆとり」で揺れた2002年の調査結果とあわせて確認すると,面白い結果が浮かんできます。
学校教育目標(経年比較)
2010年 2002年
学力向上学力定着 41.8% 20.7%
基本的生活習慣 34.1% 20.9%
学習習慣 27.7% 8.4%
社会規範 きまり 22.9% 13.7%
表のように,学力向上はもちろん,「早寝早起き朝ごはん」に代表されるような生活習慣の確立を重視する
学校が増えていることがわかります。学校をあげての「訓練指向」の高まりがはっきりしており,クラス目標であればさらに高い数値になっていると思われます。お子様の学校・クラスではいかがでしょうか。
○中1ギャップの原因はここにある
小学校を卒業し中学に通い始めた生徒が,様々な原因で中学校に通う意思を失ってしまうことを「中1ギャップ」と呼ぶことがあります。今回の調査結果からは,この原因と思われるデータを読み取ることができます。
心がけている授業方法(2010年)
小学校教員 中学校教員
体験することを取り入れた授業 52.0% 22.9%
計算や漢字などの反復的練習 51.5% 29.0%
自分で調べることを取り入れた授業 36.7% 18.0%
小学校と中学校との間で大きく差がついている内容だけを紹介しました。中学に入ると「自分で試して体験する授業」が減り,「反復練習は言われなくても家でやってくるもの」となるわけです。
これが「中学校の授業はつまらない」と感じる一因であることは事実でしょう。特に反復練習については,先に紹介したとおり「強制してでもやらせる」と考える小学校教員が増えているのがここ数年のことですから,おそらく現在高校~大学生の世代では「小学・中学を通して,学んだことを反復して定着させる経験を充分に積んでいない」学生の割合が高いことが予想でき,中学の授業はつまらないと感じていた層にリンクするであろうと考えられます。
また,近年話題になることの多い「コンピュータを活用した授業」では,理科・社会を中心として小学校で4割,中学校では6割が実施しているようです。これは見方を変えると「動画や映像がないと授業が成立しない(子どもの集中力が持たない)」という一面を浮き彫りにするため,小学校における「訓練指向」とは相反する部分があり,必ずしも歓迎されることだけではないようです。
皆様のお子様がお通いの小学校の1学期の様子を思い出してみてください。保護者会でも勉強関連の話題が多かったのではないでしょうか。事実,教科書は平均で25%も増加しながら授業時間数の増加は決してそれに見合ったものではなく,しかも「きちんと反復して定着させる」ことが目標ですから,ら,従来に比べると子どもたちの勉強に対するハードルがかなり上がっているわけです。その一方,早くも私が見聞する限りにおいても「教科書が重いから家に持って帰ることすらしない」小学生が増えているようで,心配の声が挙がっていることも事実です。
小学生においては,知識の取得はもちろんのこと,「勉強の仕方を身につける」「勉強に対する興味を得る」ことが,将来の学習状況に大きく影響を及ぼします。小学校が変わりつつあることは事実ですが,その取り組みにはまだまだ限界がありますので,「お子様の学習状況を点検する」ことが保護者の大きな仕事である日々はまだまだ続くようです。
(参考)ベネッセ教育研究開発センター 「第5回学習指導基本調査」
http://benesse.jp/berd/center/open/report/shidou_kihon5/sc_hon/index.html