雪散る蛍 | 兎のなんでも日和

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雪のようなものが、下から上に舞いあがる。

田んぼや川の水辺のどての傍らに、小さな男の子5歳くらいだろうか、その男の子と父親がたたずんで、見ている。

「なあに!?これ」
男の子は、目を丸くする。

「蛍だよ。お前がはしゃいで、中に足を踏み入れるから、みな驚いて飛び立ったのだろう」
幻想的な、景色を初めて見たものだから、男の子は、口を、ぽかーんと開けて見とれていた。

いつも、だったら口を閉めなさいと、母親に、怒られるところだが、今は、怒る母親は、一緒に来ていない。

「ホタル・・・きれいだね」
ふわふわと蛍が舞い降りてくる。

「綺麗な川の水辺や田んぼにしかいないからね」
父親は、男の子の頭を優しくなでながら、語りかけた。

「お前がもっと、大きくなってからでも、この景色を見れれば良かったのだけれど・・・」
残念そうに、言葉を続けた。

父親は寂しげな、表情と声で、目線を下にし、男の子に向けて、静かに言った。
「この田んぼや、水辺は、無くなってしまうんだ」

男の子は、不思議そうに、顔を上げ、父親を見つめる。

「なんで?なにかできるの?」
男の子の、目がきらきらした。期待で、胸が膨らんだが、しかし・・・。

「いや、ここは、水に沈んでしまうんだよ」

男の子の期待とは裏腹にショックを受けたようだった。

「みず・・・に!?」

「ああ、ダムに変わるんだ。小さな村が、又一つ消えていくんだ。しかも、私達の故郷がね」

初めて、見た。景色が消えてしまう恐怖に、怯えながら男の子は駄々をこねた。
「いやだ!!いやだ!!」
父親は、しゃがみこみ男の子に、語りかけた。

「それでも、私達の故郷なんだよ。この、美しい景色が、二度と見られなくなっても、心に刻んでおくれ」

男の子は、泣きながら蛍を見つめる。

キラキラと水辺のどてや田んぼの稲に、光をともす蛍達、同じ景色は二度と見れなくても、奇麗な水が流れている所には、きっと、蛍達はいるかもしれない。


終わり


後書き

改訂版です。
しかし、まだこちらのblogになれていなくて、中央に文章がいってます。右詰めになおしたいのですが、徐々に慣れていきたいと思います。

読んで頂けると嬉しいです。次回も宜しくお願い致します。