--今回は上田武蔵COOにお話を伺います。ズバリ、今季のゼルビア好調の要因を一つ上げるとすれば、何でしょうか。

上田「一番の要因は、黒田剛監督のチームビルディング、チームマネジメント、リーダーシップだと思っています。また黒田監督が作りたいチームに合う選手やスタッフ陣をシーズン前の段階で集めることができたのも好調の要因です。キャンプやプレシーズンの準備を通じて、現場の皆さんが本気でJ2優勝を目指し、日々取り組んで下さっている成果でもありますし、そういったチームが作れているのも、黒田監督のリーダーシップによる賜物だと思っています。」

 

--キャンプを視察されていた時点で手ごたえはあったのでしょうか。

上田「優勝を狙えるだけの選手やスタッフが集まったと、自負していましたし、シーズンが始まってからも、ミーティングや日々の練習の熱量は公開形式で行った紅白戦にも見られました。そのため、チームの勢いやファイトする部分は、昨年とは全く別物だと実感していました。実際にリーグ戦が始まり、余計に実感は深まりましたし。開幕前からJ2優勝に向けた自信や期待感はすでにありました。」

 

--前半戦を終えたタイミングでの事業面に関する手ごたえはいかがですか。

上田「事業面に関しては、手ごたえと課題と半々ぐらいあるかなと。手ごたえについては、清水戦の観客動員の更新を筆頭に国立開催のチャレンジや、チケット、グッズ、スポンサー収入においても歴代ギネス記録を更新見込みですし、確実にゼルビアとしての自力が付いてきたなという成果が出ています。またクラブ全体への注目度も格段に上がってきています。」

 

--逆に課題面はいかがしょうか。

上田「集客を含めて、よりファンを増やすことです。周囲から注目していただくことだけではなく、もっと応援していただく状況を作るためには、まだまだ有数のクラブと比較するとギャップがあります。スタジアムへのアクセス、デジタルコンテンツのクオリティー、また地域行政との取り組みなど、今までのゼルビア基準では良くやっている方かもしれませんが、クラブが目指すレベルと比較すると、まだまだチャレンジしていくべきことがたくさんあります。ここからの下半期で更に改善すべきことには積極的に取り組んでいきたいです。」

 

--事業面がそれだけ好調な要因は何でしょうか。

上田「トップチームの成績が首位であることへの期待値の高さが要因の1つです。年末の記者会見で社長の藤田からもお伝えしましたが、とにかく強いチームを作り、振り向いていただくことを目指す中で、少しずつそれが体現できているという実感があります。」

 

--トップチームの成績が事業面を上に引き上げていると。

上田「トップチームが目の前の試合で勝ち点3を勝ち取るために、事業面でどれだけサポートできるか。クラブスタッフ1人ひとりが例年以上に意識しています。またホームゲームを盛り上げるための様々な施策や現場への声掛けを含めて、クラブを取り巻く空気感も非常に良いです。またクラブ全体の方向性やベクトルを定めながら、事業面が奮闘し、トップチームの好成績に繋げていこうといった意思が、積み重なっているなと実感しています。」

 

--上半期で特に印象に残っていることはありますか?

上田「清水戦でのクラブ史上最多の観客動員数を更新できたことや、終了間際での決勝点という劇的な勝利を掴み取ったことが、今季のゼルビアを象徴するような試合になりました。清水戦の劇的な勝利は、選手とクラブ、そして支えて下さるファン・サポーターの方々が“三位一体”となり、スポーツの価値である熱狂や感動が最高潮になった瞬間でしたし、ゼルビアにとって、歴史的な1日となりました。」

 

--清水戦はアクセス状況の改善も大きかったのでは。

上田「そうですね。神奈川中央交通さんには通常の2倍以上のバスを出していただきました。ご協力いただいたことに大変感謝しています。運営の快適度を含めて、開幕戦の仙台戦の反省を活かし、来年にむけた課題と捉えるのではなく、シーズン中に改善し、クラブとして成長していることを証明していこうと、社内でも話してきた中で成果が出ました。そうしたクラブスタッフの努力も、5月21日の結果に繋がったと思っています。」

 

--残りの後半戦20試合に向けて、ここからどんなことが大事になりますか?

上田「まずはブレずに戦い抜くことです。前半戦に比べて、苦戦する期間は続くかもしれません。それでもそういう時だからこそ、黒田監督の言葉ではないですが、この半年間で積み上げてきたことを信じて、トップチームを最大限支えていきます。また最後まで信じ続けてクラブ総力戦で戦います。トップチームはより目の前の1試合にフォーカスして戦っていくことになりますが、それを踏まえつつ、スタッフとしては次のステージもイメージしながら、クラブとして成長していきたいです。まだまだ早い話ですが、J1に昇格した場合のことも踏まえて準備を進めつつ、目の前の試合で勝利を重ねていくこと。この両輪を追求していきたいです。」

 

--7月9日に国立開催を控えておりますが、準備の進捗は?

上田「初めての挑戦ですし、未経験のことですから、日々試行錯誤しながら、準備を進めています。ただクラブとしては一回り成長できるチャンスです。2万人、3万人規模の観客動員の中で、最高のエンターテインメントを提供することが今後の自信にも繋がります。またなかなか野津田ではスタジアムへお越しになれない方々にも、国立でゼルビアを見ていただけたら嬉しいです。」

 

--載せられる範囲で国立開催を決めた経緯を聞かせて下さい。

上田「一番は多くの方々にゼルビアの魅力をお伝えしたいということに付きます。国立開催のキャッチコピーである「私達は、本気だ」は、今までのクラブの積み重ねがあってのことですが、今年の我々のJ2優勝に対する本気度が表れています。またカテゴリーに関係なく、今のゼルビアはシンプルで面白いサッカーをしているので、国立開催を通して、サッカー面での魅力も伝えていきたいです。さらに言えば、先日アップされたPR動画のコンセプトでもあるように、ゼルビアを通して、都心にはない町田という地域性の魅力も伝えていきたいと思っています。」

 

--相手が東京ヴェルディであったこともポイントになったのでしょうか。

上田「いくつか候補日があった中で、東京クラシックを国立でやることの意義はとてもあるため、そこに日程がうまく嵌まった形です。」

 

--国立開催は、未来を見据えた運営上のシミュレーションという意味も込められているのでしょうか。

上田「野津田への来場者を増やすことにもっと取り組まないといけないと思っていますが、我々としては、ビッグクラブになるための階段を上っている最中です。J2に所属しているうちに大きなチャレンジをするチャンスがあるのであれば、積極的にやっていこうという意思の表れでもあります。」

 

--クラブにとっては、大きなチャレンジですね。

上田「今までのゼルビアでは最も大きなチャレンジの一つですし、J1昇格経験のないクラブがJリーグの歴史に名を刻むチャレンジだと捉えています。」

 

--ご自身もサッカーをされていたため、国立でホームゲームを開催できることに対して、喜びも大きいのでは。

上田「旧国立の話になりますが、高校選手権の決勝は良く国立に観に行っていました。また日本代表の試合も含めて、観る側として国立に訪れることはありましたが、当時、自分が主催者側で国立に携わるとは想像もしていなかったので、非常にワクワクしています。選手として経験できなかった体験をビジネス側で関われるのはとてもありがたいことですし、何としても成功させたいという想いです。」

 

--一方で、天空の城プロジェクトの手ごたえはいかがでしょうか。

上田「手ごたえは感じています。21年から始めて、3年目となりましたが、ご来城者に体験していただける世界観は確実に充実してきていると思います。今年からは次第にコロナに関する制約が減ってきたので、より一層、天空の城の世界観を表現できるようになってきました。」

 

--ちなみに国立開催で天空の城プロジェクトの取り組みが反映されるようなことは?

上田「天空の城プロジェクトは、野津田公園だからこそのプロジェクトですから、国立開催に天空の城の世界観が反映されることはありません。国立開催だからこそできる演出もありますので、楽しみにしていて下さい。」

 

--オススメのイベントはありますか。

上田「これは、スタッフが本当に頑張って準備してくれてますが、「ZELVIA FIRE STADIUM」という演出をすることになりました。上位対決の熱い試合内容にも引けを取らない、過去最大級の炎を使った演出をしますので、真夏の「ZELVIA FIRE STADIUM」を楽しんで下さい。」

 

--上田さんご自身は町田に来て4年目とのこと。町田のお気に入りスポットなどはできましたか?

上田「お酒を呑むことが好きなので、町田駅前でよく行くお店は数店舗できました。あとは僕の好きなお店が南町田グランベリーパークに入っているので、ちょこちょこ買い物に行っています。今年で町田市民4年目になるので、だいぶ快適です。」

 

--お休みの日はどんなことをされているのですか?

上田「エンタメ(エンターテインメント)に触れていることが多いです。Youtube、アニメ、漫画、映画を筆頭に、ミュージカルを観に行くこともあります。また先日は町田の経営者の方々と町田市民ホールで音楽座ミュージカルさんの作品も観劇させていただきましたし、様々な角度のエンタメに触れています。野球やバスケットボールなど、他のスポーツ観戦も好きです。」

 

--アクティブな休日を過ごされているのですね。

上田「「アニメを見まくるぞ!」という日は、1日家に篭っていることもありますよ(笑)。動画サービス系は軒並み入っています。」

 

--前職と現職の違いや驚いたことなどはありましたか。

上田「事業面で言えば、デジタルかリアルか。コアとなる部分の違いはあります。サッカーの核となるコンテンツは試合ですし、リアルな世界ですが、デジタルかリアルかによって事業の組み立て方が異なるので、新しいチャレンジをさせていただいております。また、サイバーエージェントも事業部によってカルチャーの違いはありますが、ITベンチャーとサッカークラブのカルチャーという意味では、今までの経験値が違う方々が集まっているという実感はあります。」

 

--J2優勝のために、ファン・サポーターに呼び掛けたいことはありますか?

上田「2つあります。1つ目は先ほど下半期の展望に関することでもお話ししましたが、ブレずに最後まで応援して下さい。今年のゼルビアは黒田監督を招聘したように、今までのJリーグにはないようなことにチャレンジしていきたいと取り組んでいるため、時には風当たりが強いときもあるかもしれません。それでも我々としては、FC町田ゼルビアを日本一のクラブにし、「町田を世界へ」のスローガンに少しでも近づけるように日々努力していきます。そうしたクラブの姿勢を信じて、選手、スタッフ、チームをこれからもブレずに支えていただけると嬉しいです。」

 

--もう1つは何でしょうか。

上田「ファンを広げる活動にご協力いただきたいです。国立開催に向けても、SNSで「〇〇名を誘いました!」といった大変嬉しい投稿を目にしますし、また大変ありがたいことに、最近はYouTubでゼルビアの応援Vlogを投稿していただいている方も増えてきましたので、ゼルビアファミリーの輪を更に広げていくためにも、できる限りの範囲で大丈夫ですので、ゼルビアに関することを身の回りの方にも発信していただけると嬉しいです。。」

 

--Vlog系の投稿にも全て目を通されているのですね。

上田「全部見させていただいてます!スタジアム現地で一緒に戦った気持ちになれますので、自発的に動画の発信をして下さる方が増えたことはうれしい限りです。また、ファン・サポーター目線の「Jリーグのある週末」は自分たちにとっても大変勉強になりますし、始めていただいた方々はぜひとも今後も継続して下さると嬉しいです。今年の皆様の応援の熱量は、過去一番だと思います。」

 

--改めて残りの後半戦に向けて、意気込みを聞かせて下さい。

上田「目標を達成するためにも、後半戦は前半戦の維持ではなく、さらに成長し、チャレンジしていくことが優勝に繋がっていくので、また1つギアを上げていきます。J1昇格経験のないクラブが国立開催を実現させようとしているように、新しいJクラブのあり方を皆様と一緒に作っていきたいですし、町田という地域を一体となって盛り上げていきたいと思っています。悲願の目標であるJ2優勝・J1昇格を皆様と一緒に突き進んでいきたいと思いますので、引き続き、熱いご支援をよろしくお願いいたします。」

 

●編集後記・・・

Jリーグ最年少実行委員の記録を塗り替えた上田さん。

クラブを力強く牽引する姿に尊敬の念を抱き、一つ一つの言葉の重みと選択に誰もが魅了されるリーダー。

 

今日が後半戦最初のホームゲーム。

上田さんを中心にフロント陣もより強固な体制を築き、チームをバックアップしていってほしい。

 

『J2優勝、J1昇格』という悲願を達成するために。

上田さんがクラブとファン・サポーターを力強く導いてくれるはずです。

 

(MACHIDiary 編集長より)