--今回はクラブオフィシャルの映像制作に携わっていただいている武子真幸さんにお話を伺います。まずは自己紹介をお願いいたします。

武子「株式会社パブリックアートの武子真幸です。映像プロデューサーとしてオフィシャルの映像制作に携わっています。」

 

--そもそもパブリックアートさんはどんな会社でしょうか。

武子「撮影、編集、配信など、映像制作全般に携わる会社です。主に茨城の『Lucky Fes』の制作にも携わっていますし、水戸の映画祭に作品も提供しています。またBリーグの茨城ロボッツさんの映像制作にも携わっています。メインの事業という意味では、音楽のライブ配信や、G1サミット(G1経営者会議)の撮影にも携わっています。」

 

--ゼルビアは社内でどんな見られ方をされていますか。

武子「上層部としては、スポーツ事業を広げていけることに意義を感じていると聞いています。またクラブの発展と共に、社内でもゼルビアに対する見方も変わってきています。試合結果に関して声を掛けられることも、社内でゼルビアの話題が出ることも増えてきました。撮影が好きなスタッフがゼルビアの撮影に携わりたいという話を聞くと、1人じゃないなとうれしくなります。」

 

--昨季からゼルビアの映像制作に関わっているとのことですが、きっかけは?

武子「それ以前からもスポットでのご相談はありましたが、クラブに張り付く形で携わるようになったのは昨季からです。ゼルビアの広報部との関わりのスタートは私がスカパー!さんで『Jのミライ』やFC東京の応援番組『俺たち東京育ち!』をプロデューサーとして制作していた時からの接点がご縁の始まりです。」

 

--昨季からより深くクラブと携わるようになったのですね。

武子「広報活動の一環として、映像を有効活用したいという想いがあると聞きました。試合中継とは別の独自の映像素材を活用し、オウンドメディアとして振り切った映像を作りたいという想いを形にするために力を貸してほしいとご依頼いただき、今に至っています。」

 

--ゼルビアに関わる前のイメージは?

武子「言葉を選ばずに言わせていただければ、関わる以前はJ2の常連クラブというイメージでした。特に気にも留めず、東京で3つ目のJリーグクラブというぐらいの認識でした。」

 

--火の玉ストレートですね(笑)。

武子「ちょっと言い過ぎましたかね…。個人的にゼルビアのことが気になり始めたきっかけは、スカパー!さんで大学サッカーを応援する番組を制作していた折に、初回放送で早稲田大を取り上げた時のキャプテンが岡田優希選手でした。その岡田選手が町田に新卒で加入したことがゼルビアを意識するきっかけになりました。「岡田選手、試合に出ているのかな」「結果はどうだったんだろう」と気に掛けるようになりました。また今季は同世代の相馬勇紀選手が町田に移籍してきたことにも縁を感じています。」

 

--クラブと関わるようになってから、ゼルビアの印象は変わりましたか?

武子「180度変わりました。クラブスタッフの方々がどのようにクラブを見せていきたいかという想いが強かったですし、その気持ちは私の中にもスッと入ってきました。」

 

--劇的に印象が変わったのですね。

武子「あえて誤解を恐れずに言うと、「ふれあいサッカーを撮影してほしい」と依頼された際に、最初は「なんで子どもたちのサッカーを撮るの? 選手を見せた方が良いのでは」と思いました。でも撮影前に「FC町田ゼルビアはこういう成り立ちで出来ているクラブです」という話を聞いた後は、「めちゃくちゃ良いクラブじゃん!」と気持ちがひっくり返りました。」

 

--初めて「ふれあいサッカー」を撮影した際は、どんな気持ちになりましたか。

武子「先ほどまでピッチでプレーしていた選手が出てくるんだと、驚きました。ユニフォーム姿のまま一緒にプレーする選手を見て、「夢を売る仕事はこういうものだよなー」と感慨にふけっていました。スタジアムの風景もきれいで美しいですし、毎回ふれあいサッカーを撮ると泣きそうになっています。参加者の子どもたちは良い思い出になるでしょうし、芝生の匂いとか、ボールの感触とか、10年後にそのままの風景を思い出すことができるんじゃないでしょうか。今の時代は映像で残りますし、ふれあいサッカーの様子を結婚式で流すこともできるでしょう。「このクラブをずっと応援しているんだ…」と人生の一部になっていることを思い出せると思います。改めて、ふれあいサッカーは素晴らしい取り組みです。」

 

--ふれあいサッカーはクラブの原点です。

武子「大歓声に包まれていたスタジアムが、急に子どもたちの笑い声とはしゃぎ声に変わる。そのコントラストも素敵です。」

 

--映像撮影や編集で大事にされていることは?

武子「幹として重視しているポイントは、サポーターの目線とズレないようにすることです。勝利、引き分け、敗戦と、試合の結果は3パターンある中で、「サポーターの皆さんは今日の結果をどう受け止めるのか」「この敗戦を受けて次はどんな気持ちで応援するのか」。その気持ちを汲み取ることにズレが生じないように意識しています。結果次第にもよりますが、試合後のフェンス越しにサポーターの皆さんと試合内容を話すこともあります。その中で制作上のヒントを得ることもありますし、とにかく制作する上で独りよがりにならないようにしています。」

 

--そういった姿勢が「サポーター目線の映像」という評判に繋がっているのですね。

武子「いえいえ、とんでもないです。そういった声はありがたい限りですし、身に余ることです。」

 

--比較的サポーターの方々とは近い距離感でコミュニケーションを取るようにされているのですね。

武子「あまりグイグイ行かないようにはしていますが、雑談の中や話している雰囲気や言葉の端々に出てくる今日の想いなどは大事にしたいと思っています。」

 

--サポーター目線はどうやって育まれてきたのでしょうか。

武子「スカパーさん!の番組制作が大きかったと思います。『Jのミライ』はいわゆるトップの選手や人気選手を取り上げることはなかったため、その時の土壌が大きな影響を与えています。現在、横浜FMの経営企画室にいらっしゃる外池大亮さんは、私にとっての恩人でして、『Jのミライ』のプロデューサーを外池さんが務められていた時に、「クラブの周辺の方やバックグラウンドの方をフォーカスしないと、日本サッカーの未来はない」と常々お話されていました。『Jのミライ』ではスクールコーチやクラブの営業スタッフなどを取り上げてきましたし、取材の中でクラブを好きである熱量やパワーを感じ取れるようになりました。“好きパワー”の中にいることで、僕自身もクラブのことが好きになりますし、クラブを取り巻く渦やクラブを取り巻く周辺をたくさん見させていただいたことが今に繋がっています。人生の転機です。」

 

--取材の思い出話はありますか。

武子「青森山田高校にも取材に行きました。市立船橋高校を取材した時はちょうど杉岡大暉選手に教室内を案内していただきました。」

 

--また違った角度で育まれたサポーター目線なのですね。

武子「サポーターの皆さんには毎回いるなと顔を理解していただけるようになりましたし、身近な存在として認識いただいていてありがたいです。思い出深い試合はJ1昇格が決まったアウェイの熊本戦です。その試合は3人の撮影隊で出掛け、2人は試合の様子を撮影していたので、自分はサポーターの方々を撮ることに集中していました。試合の中で福井光輝選手がビッグセーブをした時に思わずガッツポーズをしてしまったら、「すごいガッツポーズをしていましたね」と、その様子を見ていたサポーターの方が同じ気持ちでいてくれるんだと現場で言っていただきました。「同じ気持ちで応援して下さってうれしいです」と言っていただいたものの、「肝心のシーンがブレちゃったけど、良いのかな」と思いました(苦笑)。今ではゼルビアのことを応援していますし、サポーター目線の映像と言っていただけることは、とてもうれしいです。」

 

--ここまで作った映像などで、一番手応えのあったものは?

武子「結局は試合ありきになってしまいますが、アウェイの浦和戦は全体の雰囲気で思い入れがあります。また「自分の気持ちが間違っていなかったな」と一番思えたのはホームの磐田戦です。スタジアムが一体になっていました。アップの際にサポーターの応援と選手たちのウォーミングアップがリンクしていた気がしましたし、サポーターの応援で選手たちの気持ちが一緒に上がっていく相乗効果を体感しました。サポーターの方々も同じ雰囲気を感じていたようです。映像うんぬんは別にして、自分もサポーターの方々と同じ目線でいましたし、選手たちも応援に乗っかっていました。その様子をうまく撮影できました。」

 

--そこまでの熱量が出来上がった原動力は何だったのでしょうか。

武子「磐田戦を迎えるまでの文脈が影響しているかもしれません。横浜FMにも湘南にも勝てず、スタッド・ランス戦も含めればスッキリとした勝利がない中で、サポーターの方々の「選手たちを後押しするんだ!」という強い気持ちを感じました。自分たちの声援で勝たせるためには、どんな後押しができるんだろうかと、歌詞カードを配布したり、模索している空気も感じました。磐田戦の途中で座っていた方々もポツリポツリと立ち始める様子も見ていたので、波が広がっていく様子はありましたし、それに呼応する形で選手たちのテンションも上がっていった気がします。「今日は勝つんじゃないか」と感覚的に思っていたら、実際に勝つことができた時はうれしかったです。」

 

--昌子源選手がのちに、磐田戦は立ち上がりから勢いが違ったと話していました。

武子「『まちだ青城祭』でたくさんの方々がスタジアムに来た熱量が、チームを勝たせるんだというサポーターの気持ちに乗っかる形で選手たちの後押しに繋がり、「これがFC町田ゼルビアのホームゲームだ!」という雰囲気を感じました。その声援に応えようとする選手たちが相手をまさに飲み込んでいたと思います。動画としても素晴らしい作品になりました。」

 

--スタジアムの雰囲気も変わりましたし、クラブの歴史が動いていますよね。

武子「そんな歴史の1ページに携わらせていただいて、ありがたい限りです。」

 

--選手から感想の声をいただくことはありますか。

武子「もちろんありますよ。髙橋大悟選手は良く見てくれていて、「僕のプレーを映像に残していただきありがとうございます」とお礼を言われたりしました。平河悠選手もインタビュー撮影が自分と聞いた時に柔らかい表情になっていたという話も聞きましたし、選手の反応はとてもうれしいです。」

 

--ゼルビアサポーターに対しての印象は?

武子「そのまま文章にしたら、尖った言い方になるかもしれませんが、“地元の親戚”です。」

 

--深くお付き合いするようになってから1年半でそこまでの距離感になったのですね。

武子「ここまで入り込みやすかったのは、開かれたマインドをお持ちの方が多いからだと思います。」

 

--ゼルビアサポーターにお願いしたことなどはありますか?

武子「これまで散々わがままにお付き合いいただき、いつもありがとうございます。またお願いしたいことができた場合は、わがままを言わせて下さい。」

 

--今後のゼルビアがどのように発展をしていくことを望んでいますか。

武子「今の雰囲気を大事にしてほしいです。一生懸命に前に進もうとするパワーを感じていますが、勝手なことを言うと、ホームスタジアムは野津田であってほしいです。個人的にはビッグクラブになっていく過程に携われることがうれしい一方で、J2時代ののどかな雰囲気も好きなので、その雰囲気も残した中で発展していただければ、自分もその過程に携われたことを誇りに思えます。そうしていただけると幸いです。」

 

--ゼルビアサポーターへ、メッセージをお願いします。

武子「選手に同じ質問をさせていただくことはありますが、答えが難しいですね(苦笑)。「いつもありがとうございます」としか言えないです。仮に私がこの仕事から外れる形になったとしても、「来ちゃった」と町田の試合のスタジアムには行ってしまうと思います。そうなった時もよろしくお願いします。そしていつまでもオープンマインドでいて下さいと付け加えさせて下さい。」

 

--最後に、あなたにとってFC町田ゼルビアとは。

武子「ゼルビアの公式映像を撮らせていただいていますと、自信を持って言える仕事の1つです。ゼルビアは、自分の気持ちをいつも豊かにしてくれる存在です。」

 

●編集後記・・・

ファン・サポーターの皆様より大変好評をいただいている「THE DAY OF THE MATCH」

 

 

 

武子さん・広報部サポートメンバー・広報部メンバー

全員が毎試合少しでも、良いコンテンツを届けようと試行錯誤しています。

 

「想い語る」では、武子さんの心の声の質問が出ることも・・・

 

ここまでクラブに寄り添ってくれるクリエイターさんはなかなかいません。

そんな武子さんと共に、2024シーズンを最後まで駆け抜けます。

 

そして、それは今後も共に・・・

 

いつもFC町田ゼルビアのためにコンテンツという観点でも闘い続けてくれる武子さん。

スタジアムで見かけたらぜひ声をかけてみてください。

気さくに話してくれると思いますよ!

 

(MACHIDiary 編集長より)