--今回はマーケティング部の野村卓也さんにお話を伺います。まずは自己紹介をお願いします!

野村「マーケティング部地域振興課長の野村卓也です。2018年の2月入社ですから、ゼルビア歴はまもなく丸5年です。」

 

--現状の過去最高のシーズン入社なのですね。

野村「僕が来たからかなと勝手に思っています(笑)。恵まれたタイミングに入社しました。」

 

--野村さんは町田出身だとお聞きしました。

野村「生まれも育ちも町田市の南つくし野です。」

 

--生粋の町田っ子なのですね。

野村「僕には町田の血が流れています。」

--太田宏介選手と同級生だとか。

野村「そうなんです。小学生の時は私が南つくし野小学校で太田宏介選手が小川小学校です。またつくし野サッカー少年団(つくし野SSS)という同じチームでプレーしましたし、中学は同じつくし野中学校に通っていました。」

 

--つくし野SSSで2人がプレーしていたポジションは?

野村「僕がFWで太田宏介選手はトップ下のポジションが多かったです。」

 

--太田宏介選手のパスを受けて野村さんがゴール!なんてシーンも?

野村「あったかな…。ちなみに私の方がチームに入るのは早かったです。私は兄の影響でサッカーを始めたのですが、まともにボールを蹴り始めたのが5年生の時でした。それまでは倉庫の上に乗ったり、木登りや砂いじりをしていました。」

 

--同じクラスになることはありましたか。当時のエピソードを話せる範囲で聞かせて下さい。

野村「3年生の時に同じクラスになりました。私は「おーちゃん」と呼んでいるのですが、修学旅行で奈良と京都に行った時のことを思い出します。僕とおーちゃん2人で当時の京都パープルサンガの練習場に行くことを勝手に計画しました。でも2人はとても盛り上がっているけど、他のメンバーは一歩引いて見ていましたね(苦笑)。」

 

--なるほど。そんなことが。

野村「他のエピソードとしては、私は堀越高校の出身なのですが、入学の願書を中野の校舎に提出する時に、ちょっと1人で中野に行くのは怖かったので、おーちゃんに一緒に来てもらいました。ちょうどこの間、そんな話をしました。」

 

--太田宏介選手に助けてもらったのですね。ちなみにゼルビアに入社した経緯を聞かせて下さい。

野村「大学4年生の時に、将来的にJリーグクラブで働きたい意向があったので、当時お世話になっていたコーチにどこかJクラブの就職口があるか、相談したところ、FC町田ゼルビアとY.S.C.C.横浜に履歴書を送ってみては、とアドバイスを受けました。そしてYS横浜にも町田にも打診をした結果、YS横浜では吉野次郎理事長とお話をさせていただきました。」

 

--理事長と話をした後、進展はあったのですか。

野村「大学4年の1年間は、スクールコーチと、選抜クラスのコーチとしてアルバイトをさせていただけるようになりました。大学を卒業した後も、そのままYS横浜に就職させていただきました。入社1年目も大学4年次と同じ仕事をしていましたが、14年にYS横浜のJ3参入が決まったタイミングでは、運営とトップチームのマネージャーを兼務することになりました。それ以降はゼルビアさんともお仕事をする機会がある中で、田口智基さんやマネージャーの渡辺直也さんとお会いして、いろいろなお話をさせていただくようになりました。」

 

--当時は同じカテゴリーですから、直接的な接点があったのですね。

野村「そうなんです。ただ17シーズンを終えて、一般企業に就職しようかな…と考えていたタイミングにゼルビアは星大輔さんが退社されるため、田口さんの方から「ゼルビアで働いてみませんか」というありがたいお話をいただきました。地元で生まれ、育った町田でゼルビアのために働きたいという想いが湧き出てきたので、ありがたくお話を受けることにしました。」

 

--YS横浜では運営担当とトップチームのマネージャーを兼務した際にスクールコーチなどの指導者は辞められたのですね。未練はありましたか。

野村「未練はなかったですね。Jリーガーを目指している中で、それが叶わなくなったので、直接的にサッカークラブと関わるには、クラブスタッフになることが一番かなと考えました。責任を持ってサッカークラブの仕事に関わりたいと思っていたので、個人的にはうれしかったです。」

 

--Jリーガーを夢見た時期もあったと。

野村「ただ高校卒業を機にプレーヤーは引退して、それと同時に地元のつくし野SSSでコーチをやっていました。」

 

--太田宏介選手がJリーガーになられたことをどう見ていましたか。

野村「本人も語っている通り、大変なこともあった中で、ブレずに頑張って努力している姿を見てきました。高校選手権も応援に行きましたし、楽しそうに喜んでプレーしている姿を見てうれしかったことを覚えています。勝手に自分が諦めた夢をおーちゃんには叶えてほしいと願っていました。プロになると聞いた時は、自分のことのようにうれしかったです。」

 

--現在、野村さんがゼルビアで担っている役割とは?

野村「私自身は地域振興課の課長を務めさせていただいていますが、地域に愛されるクラブになるために重要な仕事を託されていると思っています。ゼルビアのクラブ理念を、表で体現するために先頭に立つべきだと立場でもあります。そういった想いを持って地域の方々と向き合っています。」

 

--ご自身の仕事をする上で大事にしていることは??

野村「クラブ主催の活動であれば、クラブの想いの部分を伝えることに集中すれば良い部分はありますが、地域の方々と向き合う際には、その個人の方や団体の方々は、今何を求めてゼルビアと一緒にやりたいと思って下さっているか、それを最優先に持ってくるようにしています。その中でプラスα、ゼルビアと関わることでより楽しんでもらえる付加価値を与えられるようにするのは大事にしていることです。」

 

--星の数ほどたくさんのホームタウン関連の活動をされてきたと思います。その中で印象に残っているものは?

野村「例えば直近のもので言えば、昨年の敬老の日に向けて、Jリーグの社会連携部とサントリーウエルネス株式会社さんと共に、「Be supporters!(ビーサポーターズ)“人生の先輩からのエール”企画」をご一緒させていただいたことが印象に残っています。これは地域の高齢者の方々から、クラブへの応援メッセージをいただこうと、1つひとつ施設を回らせていただく企画でしたが、最終的には357名の方々にメッセージをいただきました。エール企画に参加した10クラブの中で、最も多い数の方々にご協力いただけたことがとてもうれしかったです。」

 

--参加した10クラブのトップの数とはすごい!

野村「日頃から繋がっている方々がメッセージを書いて下さったり、新たな方々もご紹介いただきました。そのようにどんどん輪が広がっていったことは、ものすごく喜びでもありましたし、普段の取り組みの重要性を再認識しました。この応援メッセージの企画を通して、高齢者の方々がイキイキされていたことも印象的でした。「普段はこういう表情をされませんよ」、「こんなに喜んでいるのを見るのは初めてです」といったように、そういう話を施設のスタッフの方に聞きました。また直接的にそう言っていただく機会があったことは普段の活動の重要性を再認識しましたし、クラブができることをもっとやっていかなければならないと、改めて責任感が生まれてきました。」

 

--どれほどゼルビアが町田に浸透しているか。その現在地はいかがですか?

野村「私の先輩方がとても長い期間、いろいろな取り組みをしていただいてきた甲斐もあって、地域の意識調査でも90%以上の認知度がありますし、クラブを知っていただけているという実感はあります。あとはその中で密接度というか、地域の方々の日常にゼルビアがあるか、そこまで認知度を上げていくことが重要だと思いながら、5年ほど取り組ませていただいています。その想いがホームタウン活動の回数にも表れていますし、直接的な人との繋がりがものすごく増えているという実感はあります。」

 

--「日常にゼルビアが息づいている」と言えるのは、どんな状況でしょうか。

野村「一番は日常会話にゼルビアの話題を出していただけるか。あるいはゼルビアを感じないまでも、その背景にゼルビアが関わっているといった形で1人ひとりの身近にゼルビアがある状況を作っていきたいと考えています。」

 

--ホームタウン関連の活動では、マスコットであるゼルビーはかなり引きがあると聞きました。

野村「ゼルビー人気はすごいですね。子どもから大人まで楽しく接していただいていることもありがたいです。ただクラブとしては選手のこともPRしつつ、選手の顔を覚えていただき、その選手を応援にスタジアムへ行くんだと、そういった形でクラブを後押しして下さることも重要です。コロナ禍では地域に選手たちが出かけていくことにいろいろな制限はありますが、今一度選手たちに力を借りる機会も作っていければと思っています。」

 

--野村さんが5年間いらっしゃる中で、選手サイドの考え方が変わってきている部分もあるのでは。

野村「選手自身もなぜプロサッカー選手として成立しているのか。そういったことを考える場面が多くなってきているのかもしれません。実際に選手たちとホームタウン活動をする中でそういう話をする機会も増えてきました。プロ選手として応援していただけるように、何らかの行動をしなければならないという自覚が出てきているのか。「こういうことはできますか?」といった相談を受けることもあります。「また何かあればいつでも声を掛けて下さい。いつでも行きますから!」と声を掛けてくれる選手もいます。そういった選手が年々増えていることを実感しています。」

 

--選手個々の変化もあるのですね。

野村「選手・スタッフや私たち地域振興課側が選手を街に出したいと思っていても、それだけで成立するものではありません。また社内ですり合わせる体制が整ってきていますし、選手からも賛同してもらえるような返答があることも非常にありがたいです。」

 

--少しずつコロナ禍も変化していく中で、選手絡みのホームタウン活動において、今後何かやってみたいと考えていることは?

野村「文化や芸術、スポーツは自分の想いや感情を表現できる場だと、個人的にはそう思っています。町田市民やファン、サポーターの方々がこういうことをやりたい、こういう街になってほしいと、そういった想いを具体的なイベントや事業系のものとして、体現していくことにトライしていきたいです。町田という街が発展していく。その役割の一部をゼルビアが担っていると認識しているので、今後やっていきたいです。」

 

--5年いらっしゃる中で、ゼルビアのこれまでの歴史とこれからの歴史の変化について考える機会もあるかと思います。

野村「町田でずっと生まれ育ってきた身として、スタジアムが様変わりしていく様子も見てきました。また選手たちの環境が変化し、クラブの中の体制も変わっていくことを外から見る機会もありました。そして実際にクラブのスタッフとして活動する中で、今まで多くの先輩方がしっかりとクラブの基盤の部分や、3つのクラブ理念(町田市民が誇れるクラブであること、地域の発展に貢献できるクラブであること、次代を担う子どもたちの健全育成と夢の創造に貢献するクラブであること)を体現し、築き上げて下さっていたことを実感しています。」

 

--まさに先人の想いが受け継がれて発展したクラブの形ですね。

野村「私としては、先人の方々とじっくりと対話をさせていただく機会が多いことにも感謝しています。先人の方々に当時の想いと現在の想いをお話しいただき、それらをしっかりと受け継ぐこと。そしてここから先、「町田を世界へ」というクラブビジョンを実践できるように、クラブを発展させていく使命がとても重要だと思っています。町田市民の方々にゼルビアがあって良かった。応援していきたいな。もっとそう思っていただけるようなクラブにすることが、次代の人々へクラブの想いが継承されていることに繋がっていくと思っています。今後もそういったことは意識してやっていきたいです。」

 

--クラブは転換期ですが、先人の想いを受け継ぐクラブの伝統は大事にしたいですよね。

野村「大友健寿前社長や唐井直前GMをはじめ、素晴らしい功績をバトンタッチしていただき、サイバーエージェントグループを筆頭として、新しくクラブに関わって下さっている方々にも、働きやすい環境を作っていただいていることに感謝しています。そのありがたみは今後より一層、感じていくことになると思います。」

 

--クラブが変わりゆく中で、野村さんが社内で刺激を受けるような場面はありますか。

野村「直属の部下である小池万次郎の入社は、ゼルビアに入ってから一、二を争うほどの刺激的な出来事です。私自身、地域に出て、常にいろいろな方々と接する中で、慣れではないですが、どこか頭の中で凝り固まっている考え方が優先されていることがあったかなと、万次郎が入社した後に感じることがありました。彼はとても熱量がありますし、チャレンジ精神もあります。「自分はこういうやり方をしていた」という話をしても、「ここをこうしたいので、少し変えても良いですか」と、どんどん提案してくれます。「今まではこうだから、今後もこう」ではなく、少しでも良くしたいという想いがあるので、それがとても刺激になっています。いまは小池万次郎がライバルだと思っています。」

 

--ゼルビアのアカデミーでプレーしていた選手が、形を変えてクラブに貢献する。それは長く積み重ねてきた歴史があるからこその現象ですよね。

野村「先日、守屋実さんが社内全体に話をする機会があった時に表現されていたことが印象に残っています。「地域に愛されたいと考えているのであれば、まずはFC町田ゼルビアというクラブを愛した方が良い」と言って下さいました。そういった考えは改めて大事だなと思いました。小池万次郎はアカデミーで育ってきたからこその想いを感じますし、自分のクラブを愛して、地域を愛することによって、地域に愛される存在になれるのかなと、守屋さんの話を聞き、万次郎の姿を見ていて、気持ちを新たにしました。」

 

--最後に野村さんにとって、FC町田ゼルビアとは。

野村「自分の想いを表現させていただける場所です。ゼルビアには社内でも相談できる場所がしっかりとあります。またメンバーが聞く耳を持っていて、「これをやってみよう!」と即座に動けるエネルギーがあることは、とてもありがたいです。私自身地域に出ていくと、クラブに対する想いや、町田をこうしたいという想いを聞くことが多々あります。その中で、クラブがやりたいことを快くサポートして下さる方々や、町田という地域のために、一緒に手を組んで何かを実現させたいという方々が、社内だけではなく、地域にもいて下さることにとても感謝しています。風通しの良い風土が、町田という地域に根付いている。ありがたいことに、そう実感する日々を過ごさせていただいています。」

 

●編集後記・・・

記念すべき第50回は、地元出身スタッフとして誰よりも町田への深い愛を持つこの方にご登場いただきました。

 

大友前社長、唐井前GMなど、クラブを長く支えた方々がチームを去る中、野村さんの存在は改めて重要になりそうです。

 

地域振興課という、クラブが地域に根差すための最前線に立ち続ける野村さん。

 

「自分のクラブを愛して、地域を愛することによって、地域に愛される存在になれる」

 

まさにこれを体現すべく、今日も野村さんは町田市内を走り回ります。

地域のイベントや様々なところで野村さんを見かけた際は、ぜひお声がけください。

町田市のことを熱く語ってくれると思いますし、FC町田ゼルビアの未来について語ってみてください。

(MACHIDiary 編集長より)