--今回はアカデミーの山崎啓貴チーフトレーナーにお話をうかがいます。まずは自己紹介を願いします。

山崎「山崎啓貴です。今年でゼルビア加入通算5年目となりますが、1年目は非常勤のアシスタントトレーナーだったため、常勤のトレーナーとしては4年目になります。チーフトレーナーという立場の下、アカデミー全体のトレーナーを務める一方で、今はユースをメインに活動しています。」

 

--チーフトレーナーとはどんな業務なのでしょうか。

山崎「現在2名体制でやらせていただいているアカデミーのトレーナーが少しでも働きやすくなるように、集約した意見をクラブに上げて、仕事がやりやすい環境を作ることが大きな役割です。またユースであれば、2種登録の選手もいるため、主に怪我の状況報告にはなりますが、トップチームのトレーナーと­コミュニケーションを取ることもあります。」

 

--トレーナーとはどんな業務でしょうか。

山崎「選手の体調管理全般です。怪我の状況や、新型コロナウイルス感染症や風邪といった体調不良などがあるかどうか、選手の身体全てを預かっている仕事です。体温、体重などのデータを集めている一方で、練習前に選手たちの表情を観察しながら、あまり芳しくない選手とはコミュニケーションを取り、選手個々へのアプローチもしています。」

 

--練習後のケアもされているのでしょうか。

山崎「アカデミーでは基本的に痛みがある選手以外は、そういった治療はしていません。その分も選手たちに対しては、セルフケアができるように徹底指導をしています。またセルフケアだけでは追いつかない痛みが出れば、治療するようなことはあります。」

 

--ユースは今季から監督が代わりました。コーチングスタッフが代わると、トレーナーとしての役割も変わるのでしょうか。

山崎「正直、そこまで仕事の内容は変わりません。ただ監督が代わったことにより、怪我の種類が変化したり、シーズン開始当初は怪我をする選手の人数が少し増えるような傾向はありました。ただ、それはある意味つきものだと思います。」

 

--ゼルビアとの関りはどのようなスタートだったのですか。

山崎「ゼルビア加入前は町田市内の整形外科に在籍していました。その時の勤務先の整形外科とゼルビアのアカデミーが提携を結んだ結果、受診する選手や回数自体が増えてきたため、最初の頃は病院が休みの日を利用し、非常勤のアシスタントトレーナーとして関わってきました。」

 

--加入当初は1人でやられていたのですか。

山崎「そうですね。今年から2人体制になりました。」

 

--2人体制になったことでの変化は?

山崎「ユースとジュニアユースを分担する形を採用し、ジュニアは2人で見る形になりました。以前のように1人の時は、100人以上の選手を抱えていましたが、例えば今のユースは36人いるので、見ている人数が単純に減りました。1人だと、どうしても広く浅くという形になりがちでした。また確実に僕自身の負担も減りましたし、助かっています。」

 

--アカデミー年代を指導するにあたり、どのようなことに注意をしていますか?

山崎「アカデミーでは教育的な部分が入ってくるものですが、僕の場合は一般的なアカデミーのトレーナーよりは教育的な部分が少ないと思います。仮に怪我をしてしまった選手に対しては、プロ選手と同じようなケアを提供することを心掛けていますし、そういった意味ではいわゆるマッサージはしないようにしていますが、その分をカバーする意味でもセルフケアを教えることは徹底しています。また怪我のリハビリに関しては、教育的側面よりも、一番良いケアを提供できるようにしています。」

 

--アカデミーのトレーナーのやりがいとは?

山崎「一番は試合に勝つことですが、それ以上に怪我人が出ることなく、試合に勝つことがうれしいです。また、たとえ怪我人が出たとしても、ベストな状態で今後の試合に臨めるように、ケアを頑張るように努めています。その結果、怪我をした選手が早く復帰する姿を見た時は、やっていて良かったなと思える瞬間です。トレーナーの仕事は成果を数値化できるものではないのですが、アカデミーとしての活動時間が限られている中で、長期離脱や怪我人の数を最小限に押さえ、選手たちがサッカーに集中できるように、また少しでも長くサッカーができる身体を作っていければと、仕事に取り組んでいます。」

 

--過去見てきた選手で長かった離脱期間はどのぐらいでしたか。

山崎「アシスタントの時に中学生の選手が膝の靭帯を切ってしまいましたが、成長期特有の現象で手術はできませんでした。そのため結果的に3年間離脱するような形になった選手は、高校進学後に手術をしましたが、そういった選手をこの間、2人見てきました。やはり年単位で離脱した選手に関しては、特にピッチに立っている姿を見ると、言葉には形容し難い感慨深さがあります。また僕自身はできる範囲でサポートをしてきましたが、チームメートが「復帰おめでとう」という声を掛けている姿を見ると、見守ってきた自分もなんだかうれしい気持ちになります。」

 

--仕事をする上で大事にしていることは?

山崎「選手やスタッフを含めて、視野を広くし周りを見るようにしています。」

 

--ユース時代の樋口堅選手は、山崎さんの立場からはどんな選手に映っていましたか。

山崎「ピッチ外では大人と話すことが上手でした。高3でトップチームの練習に参加し、結果的にトップチーム昇格のチャンスに繋げたことは、彼のパーソナリティーらしいなと思いました。」

 

--トップに昇格する教え子が出てきたことに対しては、どんな想いでいますか。

山崎「5年間ゼルビアにいる中で樋口選手が初めてトップ昇格を果たした選手です。トップの試合に出た時は、親のような気持ちで応援していました。」

 

--樋口選手は怪我には強いタイプでしたか。

山崎「頑張り過ぎて、疲労や自主練による怪我がありました。それでもすぐに復帰してきましたし、長期離脱をするようなことはなかったです。」

 

--ちなみにコロナ禍による苦労話などはいかがでしょうか。

山崎「コロナに罹った選手が出た結果、週末の試合に向けて練習を重ねてきたのに、試合が延期になるケースが多く、ここ数年は選手のモチベーション維持という意味では難しかったです。最初の頃は大会自体が中止になり、プレーを見てもらえる機会が減ることで、サッカーでの進路や進学先に影響が出ていました。自分は制限を掛けないといけない立場ですが、選手の感情を汲み取ると、ここ最近は「何が最善だったのかな…」とずっと考える日々です。」

 

--そのように気持ちが張り詰めている中でのリラックスタイムはありますか。

山崎「普段からいろいろな連絡がくるのですが、オフにボーっとする時間を少しでも作ってリフレッシュするようにしています。」

 

--今後ゼルビアのアカデミーにはどのように関わり続けたいですか?

山崎「通算5年目となり、クラブの中でも古株であるため、他の方が気づかないようなことにも気を配れるようにありたいですし、結果的にクラブとしてのメリットを生み出せるようにしたいです。また最善のトレーナー業務を選手やスタッフに提供できれば良いなと思っています。」

 

--最後にファン、サポーターへメッセージをお願いします。

山崎「アカデミーの試合にもたくさんの方々が応援に来て下さり、とても感謝しています。僕がサポーターの方にご挨拶をすると、名前を呼んでいただき、「頑張ってね!」と声を掛けていただけると、この仕事をやっていて良かったと思えます。コロナ禍により、サポーターの方々の声援を受けてプレーできない期間がほとんどでしたが、少しずつサポーターの声援の中で、試合ができるようになってきました。状況がいろいろと変わる中で、僕自身はベンチからチームを支えていきたいです。」

 

●編集後記・・・

アカデミーチーフトレーナーの山崎さんは本当に業務領域が広い。

トレーナーとして、通常の勤務から、コロナ対策。

そして、時には選手の愚痴を聞いたりなどいろいろと業務があります。

 

ただ、山崎トレーナーはどんなことに対しても、しっかりと耳を傾け、誠実に対応します。

ここ数年、コロナ担当も務める私は、山崎さんと連携を密にし様々なアカデミーのコロナ対応を構築しておりますが、どんな時でも選手を第一に考えてくれています。

 

試合会場でアカデミーを支える山崎トレーナーにもぜひ声を掛けてみてください!

 

(MACHIDiary 編集長より)