--今回は2022東京国際ユース(U-14)に出場した新福優コーチと梅津康士郎選手にお話を伺います。まずは自己紹介からお願いします!

梅津「FC町田ゼルビアU-14のMF梅津康士郎です。ポジションは中盤で、アンカーやインサイドハーフでプレーすることが多いです。」

新福「東京国際ユースでは監督を務めさせていただきましたジュニアユースコーチの新福優です。まだゼルビアに来て2年目ですが、指導者歴は8年目。ゼルビアに来るまでは主に女子チームの指導をしてきました。経歴としては東京ヴェルディの女子チームであるベレーザの下の世代であるメニーナを3年間指導し、その後は、なでしこリーグのチームで2年間指導してきました。」

 

--ゼルビアに加入するまでは、主に女子サッカー畑で指導されてきたのですね。ちなみにゼルビアに加入することになったきっかけを聞かせて下さい。

新福「私はヴェルディの育成で現在のアカデミーダイレクターである菅澤大我さんに小、中と指導を受けました。個人としてはユースに昇格して、大学までサッカーを続ける形になりましたが、菅澤さんは他のクラブで指導されている中、指導者4年目の時に、「今何をやっているんだ?」と連絡をい頂きました。当時は「スクールコーチをしています」と答えました。その後、菅澤さんが移籍されて、その2年目になでしこリーグのチームでコーチとして招聘していただきました。そして、ずっとお世話になっている菅澤さんからゼルビアにお誘いいただき、加入することになりました。」

 

--率直に東京国際ユースに参戦されての感想はいかがですか。

梅津「ゼルビアは、東京国際ユースに呼ばれていない期間があったと聞いていました。下の世代の選手たちが今後もこの大会に出られるように、後輩にバトンを繋ぐ意味でも、3位入賞という結果を残せたことは良かったなと思います。」

 

--後輩たちのことも背負って大会に臨んでいたのですね。

梅津「コロナ禍で大会に呼ばれていなかった分も、結果を残せれば、次の世代に繋げられると思っていましたし、後輩たちには自分たちと同じ想いをしてほしくなかったので、頑張りました。」

 

--新福コーチは監督としてこの大会の指揮をされたとのことですが、どんなことを意識して指揮されましたか?

新福「14歳のカテゴリーの選手たちはコロナの関係で遠征に行けていなかったですし、宿泊ありきの大会にもなったため、サッカーの部分はもちろんのこと、サッカー以外の部分でも選手たちはストレスを感じるだろうと大会に入っていきました。またU-14は22名の選手が在籍していますが、初の遠征ということで、クラブとしては全員を連れていきたい意向を大会側に伝えていました。しかし、コロナ禍の影響による人数制限がある中で、メンバーを絞るという難しい決断をしました。大会前に関しては、メンバーに入った選手たちに伝えたことがあります。それは落選したメンバーがいることを忘れずに全力でプレーすることと、ゼルビアのエンブレムを背負い戦うことに恥じないよう自覚してほしい、ということです。ピッチ上の部分ではシーズン当初からやってきたサッカーを実践しながら、結果と内容を追求していうことを強調してきました。」

 

--シーズン当初から追求してきたサッカーの部分をもう少し具体的に聞かせて下さい。

新福「基本的にはボールを大事にして、相手のゴールに前進していくスタイルをやっています。ビルドアップでは細かいパスを繋ぐだけではなく、状況に応じて最適なプレー選択をできるように、こちらとしても促しながら、やっています。」

 

--チームのストロングポイントとウイークポイントはいかがですか。

新福「どちらも難しい部分ですが、ボール回しのトレーニングの中で、シーズン当初は相手の逆を取るプレーや、ワンツー、スルーパス、股抜きなどの良いプレーを発揮できていたので、こちらとしては「ナイス!」と声掛けをするのですが、割とあまり反応がありませんでした。シーズン当初特有の様子見だろうとこちらは思っていましたが、そういった大人しさがサッカーに繋がらなければ良いかなとも思ってきました。それでも、自分たちのサッカーにも慣れてくる中で、盛り上がるプレーが出れば、それをお互いに共有し合った方が良いよね、という形にもなってきました。少しずつ大人しかったチームが良い方向に変わろうとしています。」

 

--その他に強みとなることはありますか。

新福「非常にまとまりのある学年ですね。試合の時は試合、練習の時は練習と、メリハリがある形でトレーニングや試合ができています。」

 

--選手の立場ではいかがですか。

梅津「選手同士ぶつかることもありますが、試合では切り替えていこうという、プラスな声掛けが多くなっていますし、チームとして戦いやすい雰囲気になってきています。」

 

--チームとして、この大会を通してどのような収穫と課題がありましたか。

梅津「Jリーグの下部組織のチームや選抜チームが出場している中で、大会を1失点で抑えられたことは収穫です。その一方で相手の堅い守備を崩せず、シュートチャンスをなかなか作れませんでしたし、ボールを奪った後、攻撃に移る際に相手のプレッシャーが速くて、ボールを失うこともありました。あとは引いてブロックを作られると、そこを突破することが難しい状況もありました。」

新福「もちろんサッカーの面では内容も結果も満足していません。戦術的にも技術的にも足りないことはありますし、シーズン中に1つひとつを積み重ねて、少しでもうまくなれるように、少しでもギリギリの戦いを勝てるようにやっていければと思っています。サッカー以外の部分では3年になって、関東大会や全国大会に参加した時に、今回の宿泊付きの大会に参加できた経験が今後の良いシミュレーションとなったでしょう。次回似たようなシチュエーションでもすんなりと大会に入っていけるのかなと思います。」

 

--特に印象に残った試合、もしくは場面などありますか?

梅津「最後の3位決定戦である宮城県トレセンとの試合前日に、FC東京戦に負けて、泣いている選手もいたのですが、その悔しさをバネに、集中力を切らさずに、チーム一丸で戦った結果、勝てたことが印象に残っています。個人的には終盤にヘディングシュートを外してしまったことが忘れられません。」

 

--FC東京戦に勝てなかった理由をどう分析していますか。

梅津「基礎技術やパスのテンポなど、相手のレベルが1つ上でした。また切り替えの部分も速かったですし、相手は試合中の声掛けも途切れなかったので、勝ちたい気持ちで相手に上回られてしまいました。」

 

--今後、FC東京との差を埋められますか?

梅津「相手も同じように練習をすると思いますが、強度のレベルを上げることや、集中力を高めること、また基礎技術など全体的に差を埋めていかないと、中3で追い越すことは難しいと思います。日々の練習の中で、チーム全体で力をつけていって、次に対戦するチャンスがあれば、勝ちたいです。」

 

--FC東京戦の敗戦から、3位決定戦に向けて切り替えられるきっかけになったようなことはありましたか?

梅津「常日頃からのムードメーカーの選手がおり「切り替えていこう!」と言い聞かせてくれましたし、そういった声掛けがあったおかげで、3位を獲る気持ちを翌日にぶつけていこうという気持ちになれました。」

 

--3位の裏側にはそんなことがあったのですね。新福コーチは選手たちの変化を感じていましたか。

新福「1試合目に比べると、大会4試合目だった3位決定戦の方が集中力高く戦えていましたし、こちらがハッパを掛けなくても、選手間で声を掛け合って、チームを盛り上げながら試合に入っていきました。大会を通して成長してくれたと思います。」

 

--ここからは少し梅津選手個人のことを伺います。改めてご自身の長所を教えて下さい。

梅津「自分の長所は冷静な判断でチャンスを見つけて、そこに両足で正確なボールを供給する技術があることです。」

 

--仮にJリーガーで例えるならば…。

梅津「左利きなので、(横浜FCの)中村俊輔選手です。」

 

--ちなみにFC町田ゼルビアで好きな選手は?

梅津「平戸太貴選手です。パスもうまく視野も広い選手ですし、自らゴールチャンスを作って、自分でゴールを決める力があるので、参考にしています。」

 

--世界も含めて、他に参考にしている選手は?

梅津「ケヴィン・デ・ブライネ選手やクリスティアン・エリクセン選手を参考にしています。人が驚くようなパスで相手を切り崩したり、うまくタイミングをズラしたり、敵の隙を狙ってシュートを打つような技術が長けているので、参考にしています。」

新福「なるほど。康士郎のプレーを見ていると、同じ左利きであるレアル・マドリーでプレーしていたグティに似ているのかなと思っています。グティは意表を突くスルーパスも出せますし、ゲームをコントロールできる選手です。実際のグティの映像を参考材料として渡しています。康士郎は攻撃と守備両面で周りを見て、指示を出せますし、個人での局面を打開できる選手でもあります。アンカーやインサイドハーフはもちろんのこと、3バックを採用すれば中盤の枚数も増えるため、トップ下やシャドー、時にはセンターFWをやってもらうこともあります。さらには相手の状況によってプレーを変えられる選手です。」

 

--パーソナリティーな部分はいかがですか。

新福「一見、大人しい印象ですが、サッカーになると、良い意味で人が変わります。常に周りを見て、味方を動かしたり、プレーで味方を動かす選手でもあります。こちらの意向を汲み取ってくれる選手でもありますし、サッカーを通して見ている限りでは、素直なパーソナリティーなのかなと思います。」

 

--明日にでもトップチームに来てほしい人材です!

新福「ただ康士郎に求めていることは、今のプレーにプラスαでゴールやアシストなど、目に見える結果をもっと残してほしいということです。これからに期待しています。」

 

--今後のチームと個人の目標はいかがですか。

梅津「チームの目標としては、中3の代が戦ってくれているT-1リーグで優勝したら、関東リーグの参入戦に出られます。もし出られたら、チームを関東リーグに昇格させられるように、着実に練習で力をつけていきたいです。個人としては、ユースに上がって、ゼルビアのトップチームに昇格し、人に憧れてもらえるような選手になりたいです。」

 

--ファン、サポーターの皆様へメッセージをお願いします。

梅津「練習で力をつけていって、皆様に見ていて楽しい試合をしますので、ぜひこれからも応援して下さい。」

新福「いつも応援ありがとございます。ジュニアのカテゴリーもトップチーム昇格を目指しています。コロナ禍ではありますが、もしお時間があれば、トップチームだけではなく、ジュニアやジュニアユースチームも合わせて応援して下さると幸いです。よろしくお願いいたします。」

 

--最後に梅津選手。ゼルビアでサッカーをやっていて、楽しいですか?

梅津「とても楽しいです!」

 

●編集後記・・・

様々な想いを背負って闘った2022東京国際ユース(U-14)サッカー大会。

インタビューをしてみて、ここまでの想いを背負って闘っていることに素直に驚きました。

 

「下の世代の選手たちが今後もこの大会に出られるよう」

 

3位という結果は喜びと同意に安堵も強かったのではないかと思います。

 

一つ上の学年が戦う、T1リーグでの出場を目標に日々新福コーチと練習に取り組む梅津選手とU-14の選手たちを引き続き注目していきたいと思います。

(MACHIDiary 編集長より)