--今回はFC町田ゼルビアのゼルビアアシストファミリーの「町田焙煎珈琲株式会社」代表の岡健司さんにご登場いただきます。まずは簡単に自己紹介をお願いします!

岡「大阪生まれの町田育ち。日本がオーストラリアに勝つ3日前に56歳になりました(笑)。永らくサラリーマンをしていたのですが2011年、玉川学園の自宅脇に自家焙煎の珈琲屋を開業しまして、2016年に鶴川街道の本町田の店舗にやってきました。

FC町田ゼルビアのホームゲームで町田市名産品のれん会の品を扱っていただいていますが、そののれん会の会長を務めています。

サラリーマン時代に地域での交流が乏しかった状態から始めたものですから、様々な集まりに首を突っ込むことに熱中し、みなさんとの町田ぐらしを楽しむ日々を送っています。」

 

--現在の町田焙煎珈琲は2011年が原点なんですね。

岡「最初、玉川学園の商店会に店を出そうかと思ったんですけど商売をしたことがなくてまったく自信のないところから始めました。

自宅の庭を測ったらログハウスが一軒建つくらいのスペースがありました。整地は業者の方にしていただきましたが、2カ月くらいかけて自分ひとりでログハウスを建てて、2011年の2月に開業して、3月に地震があった年。

それが個人事業で始めたときですね。2015年に法人化して2016年に今のところに移転しました。」

 

--FC町田ゼルビアのサポーターのみなさんだったらおなじみかと思いますが、あらためて、FC町田ゼルビアとの接点はどのような形だったのでしょうか?

岡「初めての自営業で右も左もわからなかった時期に金井商店会にお誘いいただいたんですね。

その商店会の観戦ツアーでFC町田ゼルビアのホームゲームを観て面白いなと思っていました。すると、新年会の席上で当時FC町田ゼルビアの社長だった下川浩之会長にお会いして、ウチはコーヒーのノベルティをやっているんですよ、という話をした記憶があります。

実は下川会長の奥さんが同級生なんですよ。そんなこともあって接点が出来ました。商店会がFC町田ゼルビアさんをサポートしていなかったらお会いする機会もなかったし、立地的にも直接社長にお越しいただける地域だったので、そういう偶然が重なっての出会いでした。」

 

--後援会ブースでは毎年、選手の写真入りのコーヒーが大人気ですが、どのようなキッカケで販売を開始したのですか?

岡「J2に再昇格する前年の2015年に当時、部長職だった大友健寿社長に『以前、下川社長とノベルティをつくろうという話をしたんだよ』と言いましたら『岡さんそれ良いね、やりましょうよ』と言ってくれたんです。

クラブとしては前のめりでOKだったんですが、当時のJリーグエンタープライズの許諾が下りれば実現とのことで、ライセンス契約を結ぶためにお店を法人化しました。

パッケージの申請はすんなりいったのですが、レギュレーションに合わせるためのロゴの位置などミリ単位の修正に時間がかかり、商品化までに4カ月を要しました。」

 

--さきほどものれん会の話が出てきましたが、FC町田ゼルビア後援会がホームゲーム会場で実施している「まちだみやげ」の窓口を「まちだ名産品のれん会」として務めるまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

岡「そのようにJリーググッズとしてのコーヒーをつくっているなかで2017年頃、競技場内で町田みやげを売りたいと後援会さんからお話があったんです。

町田ではなく新横浜でおみやげを買って帰るアウェイ側のサポーターの方が多いとのことで、それは機会の損失だということをのれん会の会合で仰っていただいて。

野本倫央事務局長(当時、現マーケティング部)が個店を回って商品を集め、始めたという経緯があります。」

 

--岡さんが、ゼルビアにハマったのはどのようなキッカケですか?

岡「珈琲屋を始めた当時はワールドカップを観るのは好きだったんですがJリーグを観て地元のクラブを応援するという習慣はなかったんです。

スタジアムで生観戦をする経験も商店会の観戦ツアーに参加するまではほとんどなかったので衝撃的でした。

李漢宰さんがまだ現役の頃で、すごく面白かった。そこからさらにのめり込むのは選手のパッケージを作らせていただくことになってからだと思います。

やっぱり、足を運んでみないとあの感覚はわからないですよね。サポーターの応援、歓声を間近に感じながらの観戦はドキドキしました。」

 

--そこからゼルビアアシストファミリーになられたのはいつ頃ですか?

岡「ゼルビ屋にも名を連ねていたんですが、ゼルビアさんの商品を作らせて頂いて、売上を還元したいと思い、2015年に正式にパートナー企業とさせて頂きました。」

 

--これまでに印象に残っている試合などありますか? それとその理由は??

岡「2018シーズンの松本山雅FCとのアウェイゲームですね(J2第29節)。アディショナルタイムも終わろうかという試合終了間際に平戸(太貴)選手がフリーキックを直接決めて1-0で勝った試合です。

駐車場から緑のサポーター(松本山雅FCサポーター)をかき分けてビジター側の入場ゲートに行かないといけないロケーションでけっこうワクワクしました(笑)。

あのカーブのかかったフリーキックには鳥肌が立ちましたね。それより前、セレッソ大阪の試合を観戦しに行ったとき(2016シーズンJ2第24節)も印象に残っています。

杉本健勇選手に先制点を決められて0-1のビハインドだったのですが、後半(鈴木)孝司の2ゴールで逆転、最後は(中島)裕希がとどめを刺した。

あの競技場がサッカー専用(キンチョウスタジアム、現在はヨドコウ桜スタジアム)で壁から何からピンクじゃないですか。

そこにぼくらが青いユニフォームで……あれもなかなか刺激的で、帰りはドキドキしました。すぐ着替えましたけど。敵地での勝利は想いが残りますね。」

 

--ちなみに好きな選手などはいますか?

岡「ユニフォームのナンバーも54(コーシー)にしているほどでふだん特定の選手を応援することはしていないんですけど、

中島選手だとか、職人的な奥山選手とかね。おすすめというか、まだまだがんばってほしい選手ですね。

どうしても先発に定着したフォワードが得点を重ねて目立ちますけど、試合を構成出来ているのは奥山選手のような選手のおかげなんですよね。

そういう彼も昨年と一昨年はゴールを決めていますけれども。ヴェルディ戦のミドルシュートは驚きましたね。」

 

--そういう選手たちのパッケージコーヒーを制作することが仕事のひとつで、珈琲屋を営んでいたからこそFC町田ゼルビアとの接点も出来たわけですが、それほどまでに岡さんの人生を貫いているコーヒーの魅力はどんなところですか?

岡「私は商社に勤めていたこともあるのですが、商社というのは右から左にものを流していく仕事です。

一方で個店では商品に思い入れがないと仕入れてものを売っていくのはなかなか難しいだろう、自分で原料を加工して販売したほうがいいだろうと商売を始める前に考えていました。

この業界は徒弟制度なんですよ。えらい人の門を叩いて調べるうち、軽井沢の師匠に出会い、週末に修行をしていました。それを一年もやっているとそろそろお店を始めようかな!?と、なるじゃないですか。

そのように選んだものがコーヒーだったわけなんですけど、たとえば紅茶だと、ブレンドは出来ても加工が出来ない。全部、茶園でつくられてくるものなので。そうすると商社とあまり変わらない。

コーヒーは原料である豆を仕入れて自分で焙煎して味が決まっていくので、それをお客さんに評価していただけるという面白みがある。

それこそ世界中の生豆を仕入れてそれぞれの個性があるので、奥深いところを知ってしまったがためにですね、抜けられなくなりました。焙煎自体は調理するのと同じ感覚なんですよ。

ただそれをどうお客さんに『おいしい料理ですよ』とお見せしてお届け出来るか。FC町田ゼルビアさんでは選手のパッケージをつくっていますけど、あのように加工している人はあまり見ないですね。

最初は試飲用にとドリップパックを配っていたんです。そうしたらウチの子どもの写真を貼ってパッケージにすることは出来ないか……というところから始まり、拡がってきました。

いまは何もPRしていないですけど、月に1万個つくっています。そういう商材に育ったのはFC町田ゼルビアさんのおかげです。」

 

--お勧めのコーヒーや、飲み方のこだわりなどあれば教えてください!

岡「ないですね(笑)。最初の頃はこうやって飲んだほうが良いよと、いま考えると押し付けていたところもありました。

でもたくさんの豆があるので、いまはお客さんに選んでいただきたいんですよね。『200グラムください』と言われたら私のおすすめとお客さんのチョイスとで100グラムずつにして飲み比べて、というようにご提案しています。

ウチの店には苦いコーヒーがいっぱいあって、私は好きではないんですけど、それが好きなお客さんはいっぱいいて、好みが合わないんですよね。

だから難しくて。朝、濃いコーヒーを飲みたい人もいれば、あっさりしたものを飲みたい人もいます。とにかく飲む人がおいしく感じられるものがいちばんいいわけで。

あえておすすめするとすればゼルビアコーヒーです(笑)。あとはウチの名産品になっている薬師ブレンド、まほろブレンド。」

 

--これから、岡さんはFC町田ゼルビアとどのように関わっていきたいですか??

岡「そこまで深く考えたことはないんですけど、J1を体験したいですよね。地元のクラブがJ1に上がったときに自分がどういう感情になるのだろうかと。

そのとき、自分がクラブに貢献出来る企業になっていればと思います。商売はしなくなっても応援はしていくと思うんですが、FC町田ゼルビアが強くなれば自分もともに成長したいと、そういう想いです。」

 

--近年クラブの状況も変わってきましたが、岡さんが今後のクラブに期待することは?

岡「クラブとしては環境も整い、これからJ1常連チームになってもらいたいと期待をしていますが、まだまだ町田の中で市民全体が応援しているという感じではないと思うんです。

歴史としてはほんとうに長いので、ぜひ町田市民をもっと巻き込んだクラブに成長してほしい。ゼルビーが朝礼に行ったりいろいろな地域活動をしていると思うんですけど、天空の城 野津田が絶えず1万人を入れているようになりたいですね。」

 

--岡さんにとって、FC町田ゼルビアとは?

岡「サッカーのシーズンが始まると、生活に一定のリズムが出来るんですよ。週末にサッカーがある、そのリズムと夢を実現してくれる存在だという想いがあります。まず優勝したい。」

 

●編集後記・・・

「J1・・・」

「優勝したい・・・」

何度か出てきた、言葉。

 

インタビュー中、終始落ち着いた声で丁寧に取材対応していただいた、岡さん。

しかし、その言葉の奥にはクラブへの深い愛情を感じずにはいられませんでした。

 

コーヒーに興味を持ち、そこからFC町田ゼルビアに繋がるとは、誰も思わなかったのではないでしょうか。

とてつもない、探求心とプロフェッショナル精神で、どんなことも乗り越えてきたであろう岡さん。

そんな岡さんと共に歩む道はもちろん「J2優勝、J1昇格」

その歴史的瞬間にはもしかしたら、岡さんオススメのコーヒーがコップに注がれて置かれているのではないでしょうか!?

(MACHIDiary 編集長より)