--今回はインターン生である植野さんにお話を伺います。まずはサッカーとの接点から聞かせて下さい。

植野「小学生から高校生まで12年間プレーヤーを続けました。僕はどこか特定のチームのサポーターというわけではないんです。」

 

--どこかのクラブのサポーターというパターンが多い中、プレーヤー出身でインターンにはなかなか結びつきませんが、なぜFC町田ゼルビアのインターンに参加したのですか?

植野「インターンに参加する前に、ドイツ・ブンデスリーガのドルトムントへ1週間ほどスポーツマネジメントの研修に行きました。ドルトムントでの研修では試合運営やクラブのブランディングを学ぶ中で、少しずつスポーツマネジメントというジャンルに興味が出てきたため、日本はどうなっているのか、それを学ぼうとインターンに応募しました。」

--そもそもドルトムントの研修へ行くことになったきっかけは?

植野「大学2年生の夏に1カ月間ほど、東南アジアでバックパッカーをしたことで海外に興味が湧きました。さらに2年生の後半に学校の研修でドイツに行けるという企画があり、興味があるサッカーについて学べるのであれば、欧州にも行ってみようと応募しました。」

 

--学生時代にバックパッカーとは、伊東さん(パートナー事業部)と同じ系統の学生ですね(笑)。数多くあるJクラブの中でFC町田ゼルビアを選んだ理由は

植野「自分がスポーツマネジメントを学びたいという意欲を示したところ、研修の責任者である教授の紹介でゼルビアを選びました。同じ大学の出身であるクラブスタッフの方と教授の間に、共通の知人がいまして、その方との繋がりからインターン入りが実現しました。」

--ちなみにドルトムントへの研修で印象に残っていることは?

植野「ドルトムントのスタジアムは、約8万人を収容できるスタジアムだったので、8万人の応援が地響きのように聞こえたことがすごく印象に残っています。また試合日になると、『老若男女の世代がこんなにいたのか!』と思うぐらい街から人が出てきて、スタジアムに集まる光景もすごかったです。ゴールが入った時の一体感、そこから生まれるコミュニケーションに、ただただ圧倒されました。」

--ドイツでの生活で印象に残っているエピソードはありますか。

植野「東南アジアでは現地の方々とコミュニケーションを取っていたので、自由時間を利用して、ドイツでもコミュニケーションを取りたいなと、3人ぐらいで街を歩きながら多くの人に話しかけたりしていました。ドイツではアジア人であることを珍しがられて、話し掛けられることも多く、『ビールをごちそうしてやるから来なよ』と言われることも。」

--ラッキーですね。積極的に動いたことで、良いことがありましたね。

植野「英語が通じにくい環境でも、ジェスチャーを交えながらコミュニケーションを取ることで言葉の壁を越えられました。おいしいお店の紹介をしてもらったり、『若いんだからこれを食べなよ』とお店では1品余分に提供していただいたり、積極的にドイツの方とコミュニケーションを取ることで、自分自身の世界観が広がりました。日本ではなかなか体感できない貴重な経験ができました。」

 

--いつからインターンを始められて、実際にはどんな活動をしているのですか。

植野「2020年の9月頃から運営・広報部に所属させていただいています。運営や広報の業務を手伝いながら、昨年の10月からは学生の新規顧客を集めるインターン生企画がスタートし、僕は僭越ながら、プロジェクトリーダーを拝命しています。」

 

--インターン生企画では、学生の新規顧客を集めることに焦点を絞っている背景を教えて下さい。

植野「インターン生は一人一個のプロジェクトを担当しているのですが、僕はホスピタリティー向上委員会のメンバーでした。ホスピタリティー向上委員会では、試合後に運営改善のためのアンケートを募る取り組みをしていますが、そのミーティングをしている余談で、『どうすれば学生にスタジアムへ来てもらえるだろうか』という話になりました。まず学生に新たにスタジアムへ来てもらうためには、その動機付けを知る必要があるという話になり、アンケートを取ることに。そしてそのアンケートは僕たち学生がやった方が良いのでは、ということで、学生の新規顧客を集めることに焦点を絞ったインターン生企画がスタートしました。」

--貴重なサンプルが集まれば、インターン生が卒業した後も、受け継いでいけそうですね。

植野「インターン生を統括しているクラブスタッフの方からは、短期ではなく中・長期的にやっていこうという話を提案されています。来年以降はアンケート結果を元に、学生の新規顧客に向けたブース展開の実行に移していこうという話も出ています。」

 

--学生を振り向かせるにはどうしたら良いのか、興味深いですね。

植野「5月30日に行った北九州戦に学生を無料招待して、そこでガイドブック(インターン生が自作)なども配布し、どんな企画を打ち出せば、学生にスタジアムへ来てもらえるのか。そういったことを調査するアンケートを取りました。今後、学生の新規顧客を獲得するために、学生をターゲットにした刺さるイベントを展開するためのヒントを掴めればと思っています。」

 

--アンケートの中で見えてきたことはありますか。

植野「初めてスタジアムへ来る学生は、そもそもサッカーのことや、そのチームや選手のこと自体を知らないケースが多いので、そこを広めていく必要性があるなということです。もう1つは、Jリーグ全体の観戦者の年齢層が上がってきていることで、学生をターゲットにしたイベントが少ないという事情も見えてきました。観客の年齢層を引き下げるためにも、学生が刺さるようなアプローチを仕掛けていく上で、インターン生だからこそ、できることがあると思います。」

 

--学生の立場でもあるからこそ、学生に対しては何が刺さるのか、それが理解しやすいと。学生に刺さるという意味では、どんなことがポイントになってきそうですか。

植野「11日の水戸ホーリーホック戦と18日のSC相模原戦で実施している『ゼルビア・クエスト』のように、試合観戦以外に焦点を当てたイベントや、試合観戦以外でも楽しめる要素を作ることが学生に刺さるのではないかなと思います。この『ゼルビア・クエスト』もインターン生が中心になってアイデアを出し、実際に実施までできました。」

 

--意地悪な言い方になりますが、試合というエンタメ要素だけでは、学生の最初の観戦動機にはなりにくい、ということですね。

植野「2、3回目の観戦になってくれば、試合の面白さやファン・サポーターの方々の迫力ある応援が、見に来た方々の興味を惹くかもしれませんが、最初の動機付けとして、試合だけにスポットを当てた形ではハードルが高いかもしれません。ただアンケートで得られた意見としては、イベントに関することの指摘が多いのかなと思ったのですが、意外にも試合内容やスタジアムの雰囲気に触れる回答が多かったです。」

 

--なるほど。ちなみに植野さんはプロジェクトリーダーとのことですが、自分が就任した理由はどのように考えていますか?

植野「そもそも能力は高くないと思っていますが、1つだけ言えることがあります。僕はどこのサポーターでもないので、サッカー観戦に関心が向かない人を振り向かせる意味でも、ターゲットに寄り添った意見を言えるのかなと思っています。またもう1つの要因があるとすれば、インターン生のバランスを取っていくのがうまいということです(笑)」

--バランスを取るのはうまい。そこまで言える自信の原動力は?

植野「中学はサッカー部のキャプテンで、高校はキャプテンではなかったですが、ずっとムードメーカー的な立ち位置でした。そういうキャラでいることでバランス取りがうまくなりました。また大学のゼミでは大人との関わりが多く、たくさんのミーティングもしてきたので、周りを気遣える力が養われてきました。」

 

--インターン活動を始める前と後では、クラブの中に身を置いたことでJリーグクラブの印象は何か変わりましたか。

植野「サッカークラブのスタッフはキラキラしているイメージでした。選手たちとの関わりや、スタジアムにスーツ姿で立っている方々を見ると、そんな姿が僕からは眩しく、キラキラして見えたんです。でもいざ入ってみると、もちろんキラキラしている部分もあるのですが、それ以上に、事前準備が多いことにビックリしました。スタッフの方々を中心に入念な事前準備をしているからこそ、試合当日、サポーターの方々があれだけ熱狂できる空間が作れるということにあらためて驚きました。地味な作業や仕事をしていることを含めても、キラキラしている仕事だなと思っています。」

 

--こうしてインターンとしてゼルビアと関わるようになり、ゼルビアに対してはどんな想いでいますか。

植野「ゼルビアのインターンはすごく自分を成長させてくれる場です。インターン生として与えられている裁量権も非常に多く、自分にできることは何かを常に考えながら行動に移しています。ゼルビアのインターンでなければ、ここまで成長はできていないと思います。」

 

--クラブの雰囲気はいかがですか。

植野「クラブスタッフの方々の温かさが、そのままゼルビアというクラブ全体の雰囲気を形作っていると思います。自分が分からないことだったり、『こんなことを質問しても良いのだろうか…』ということをインターン生に思わせないぐらいの雰囲気が、事務所の中に漂っています。それが一番良いところだと思います。」

--今後のゼルビアにはどうなっていってほしいと思っていますか。

植野「クラブとしてはJ1昇格が目標ですが、一人のインターン生という立場として思うことがあります。それは今後僕が社会人になった後に、ゼルビアのインターン生のOBであることが自慢できるようなクラブになってほしいということです。もちろん今でも十分自慢はできるのですが、『町田を世界へ』というスローガンがあるように、日本だけじゃなく世界で自慢したいですね。」

 

--クラブスタッフの方にとっては、大きなプレッシャーですね(笑)。ご自身の将来像はいかがですか。

植野「どのコミュニティからも必要とされる人になりたいです。社会人として会社に必要とされる人でありたいですし、今後家庭を持つことがあれば、奥さんはもちろんのこと、息子や娘からも必要とされる父親でいたいです。」

 

--ゼルビアのインターン生を経験したことで良かったことは何ですか。

植野「昨年のホーム最終節のセレモニーで試合が終わった後、スタジアム中からの拍手が鳴り止まなかった状況を聞いて、鳥肌が立ちました。また自分にとってのやりがいが何なのか。それに気づくことができました。自分のやってきた仕事が多くの方々の目に触れて、それを称賛されたり、喜んでいただけるような仕事をやっていきたいと思うようになりました。ゼルビアのインター生をやらせていただくことで、今後の方向性が見えてきました。」

 

--それでは未来の自分に一言、お願い致します。

植野「健康で良い父親になれているか? またグローバルな活躍しているか? です」

 

--えっと、もう少し、こうゼルビアのインターン生と関わる話でお願いします(笑)。

植野「では、ゼルビアのインターンでやってきたことが役立っているか? でお願いします!(笑)」

--最後に、植野さんにとってFC町田ゼルビアとは?

植野「自分自身を飛躍的に成長させてくれた環境です。まだインターン期間はありますが、社会人になる前にゼルビアで“プレ社会人”の経験を積めてとても良かったです。またクラブスタッフの方々に感謝していますし、同じインターン生の仲間にも感謝しています。意識の高い仲間がいたことで切磋琢磨できる環境ですし、そうした環境で自分自身が頑張ることで、僕自身は飛躍的に成長できたと思っています。」

 

●編集後記・・・

インターン生の中でいじられキャラの植野君。

最初は「大丈夫かなぁ・・・」という心配もしておりましたが、今では誰よりも頼れるリーダーです。

 

インターン生だけでなく、社員からも愛され、どんなことにもブレずに全力で取り組む姿勢を見ると、とても頼もしく感じます。

 

いつか・・・。

植野君が自慢できるクラブになり。

そして、植野君が家族と共にゼルビアのサポーターとして『天空の城 野津田』の観客席にいる日を心待ちにしたいと思います。

今後のインターン生の活動も楽しみにしていてください!

(MACHIDiary 編集長より)