--今回は記念すべき第10回目ということで、背番号10番の平戸太貴選手に現在の想い。そして、これまでとこれからのことについてお伺いします。まず現状のチーム状態はいかがでしょうか?

平戸「昨季からの上積みがある中で、今季は経験があって、力のある選手がたくさん加入してきました。現状はそうした新加入選手の力が合わさって、試合の中でもチームとしてやりたいサッカーをうまく表現できていると思います。ただ個人的には勝ち点を失った試合が多いと感じていますし、もっと上の順位にいてもおかしくないぐらいの戦いはできていると思います。」

 

--勝ち点を失ったという試合は、例えばどの試合でしょうか。

平戸「東京V戦、金沢戦、山口戦、相模原戦、千葉戦などです。ただ自分たちが勝てたと思える試合内容であったとしても、必ずしも結果に繋がらないのがサッカーの世界ではよくあることです。ほんの少しの差で勝てなかったと感じる試合もあったので、上位に行くためにはそういう試合を勝っていける力をつけないといけないと感じています。」

 

--個人の戦績という意味では、ここまで3得点3アシスト(※)。この結果はどう捉えていますか。

平戸「他にも決めるべきチャンスがたくさんありましたし、数字としてはまだまだ足りないと感じています。『僕が結果を出すこと=チームが勝てる』と思っていますし、そういう意味では自分の数字はまだまだ足りません。」

--ここからは少し昔話を。最初に町田に来たのが2017年でした。当時のことを振り返って、最初のチームの雰囲気は覚えていますか。

平戸「自分は下から二番目ぐらいの年齢でした。非常にチームの仲が良く、毎日の練習に取り組む姿勢や、試合になった時にチームが1つにまとまって戦う、そういった色が強いなと思っていました。率直にとても良いチームだなと感じていました。」

--町田加入2年目は8得点17アシストと目に見える結果も残せました。2年目になって良い意味で変化したことは何でしょうか。

平戸「鹿島アントラーズでトップチームに昇格したことでプロになりましたが、プロ1年目は自分が思い描いていたものとは程遠いものでした。プロ2年目は出場機会を求めて町田に来て、試合に出続けて結果を出さないと、自分の夢や目標には到底辿り着かないと思っていました。プロサッカー界はすごく厳しい世界ですし、町田で結果を出さないと、このままサッカー人生が終わってしまうという強い覚悟を持って町田に来ました。レンタル1年目は個人としても、想い描いている結果とは全然違いました。その中でのレンタル延長の2年目は、何が何でも結果を出さないといけないという強い気持ちで残留しました。当時はこういう言い方が正しいかはわかりませんが、チームの結果というよりも、自分が得点やアシストをして上のレベルに行きたいという想いの方が強かったです。そういう想いのなかで得点やアシストのいう目に見える形でチームに貢献でき、チームの結果にも繋がりました。」

 

--プロ1年目の時点でどんなキャリアを想い描いていたのでしょうか。

平戸「トップチームに昇格した時は自信もありましたし、シーズンの最初から試合に出る段階までは行かなくても、試合に出て、チームの勝利に貢献するというイメージを想い描いていました。また試合に出ることで、年代別代表にも繋がっていくと思っていました。でもなかなか出場機会を得られずに、プロ1年目は苦しいシーズンでした。」

 

--そして18年の好成績を引っ提げて、19年に鹿島へ復帰することになりました。鹿島に戻る時にはどんな覚悟だったのですか。

平戸「一定の結果を町田で残せて、改めて自信をつけましたし、町田で成長した自分が鹿島に帰って、力を発揮して、バリバリ試合に出て活躍してタイトルを獲るという気持ちでした。」

 

--鹿島に戻って外から町田を見ることはあったのでしょうか。

平戸「結果は気にしていましたが、実際には自分が想い描いていたような結果が出ないという状況もあり、他のことをそこまで気にしていられませんでした。自分がどうなっていくのか。どうやったらポジションを取れるのか考える日々でした。鹿島に戻ってからはサイドバックをずっとやっていたので、そこでの葛藤の方が大きく余裕がなかったです。」

--夏に町田復帰のオファーがあった時、率直にどんなことを思いましたか。

平戸「いろいろなチームからオファーをもらった中で、町田からは自分が求められていると感じていました。在籍している時に試合出場して活躍していたイメージもありましたが、他の選択肢もあっただけに、率直な想いとしては迷いました。最終的な決め手となったのは、自分がプロになって試合に出て、成長できたのは町田に来てからだということを強く感じたからです。町田というクラブに対する愛着もとてもありましたし、いろいろな選択肢の中から最終的に、町田のために頑張りたいという想いに至りました。」

 

--町田に愛着を感じる理由は何でしょうか。

平戸「町田はチームが1つになって戦って、皆がチャレンジして、誰かがミスをしても、カバーして、チームとして戦っていました。また皆が目の前の試合に向かって、まとまって戦える、そんな良いチームでありました。僕自身も試合に出て活躍して、町田のファン・サポーターをはじめ、監督やフロント、クラブのスタッフからも、僕が必要とされているなと感じたので、そういった方々の力になりたいという想いが決め手となりました。」

--10回目にちなんで、サッカーでの背番号10はどんなイメージでしょうか。

平戸「10番はエースナンバーと言われますし、実際に僕もそう思って見ていました。10番はチームを引っ張っていかないといけない立場。チームが苦しい時やうまくいっていない状況の中で、チームのために戦って走って結果を出すことが、10番の役割だと思ってきました。」

 

--平戸選手は以前から8番に愛着を持っていると聞いています。8番に戻すチャンスがある中で、今も10番をつけている理由は何ですか。

平戸「この背番号をつけているということは、その番号を背負うに恥じないプレーをしないといけません。またクラブを大きくする、クラブを引っ張る想いも強く持たなければいけないので、そういう意味でも10番を背負って、チームのために戦おうという決心から、今も10番をつけています。」

--町田の10番と言えば…。

平戸「僕の中では、トキさん(土岐田洸平)の印象しかありません。」

 

--今でも十分に町田の10番は平戸選手というイメージがついていると思います。これから先、町田の10番像をこうしていきたいといった想いはありますか。

平戸「町田の10番と言ったら、平戸と思ってもらいたいです。10番は見た人が分かりやすいようなテクニックがあって、華のある選手が多いですが、自分はチームのために戦って、自分が持っているものを最大限に発揮して、チームを勝たせられる選手になりたいと思っています。この町田で新しい10番像を作っていきたいです。」

 

--ここからは少しプライベートの話を。ご結婚されたことが最大の変化だと思いますが、新婚生活での変化はどんなことですか。

平戸「奥さんが家事全般をしてくれますし、食事のことに関しても、栄養のことやこのタイミングでこれを摂取した方が良いとか、これが疲労を回復するのに良いといったものを考えて作ってくれています。そういう意味では結婚してプラスの面しかないです。もちろん家事を手伝うことはありますし、洗濯や洗い物、掃除は自分がやれる時に率先して自分からやるにしています。」

 

--結婚したんだな、所帯を持ったんだなと実感するのはどんな時ですか。

平戸「出かけることや買い物など、何かをする時にはまず奥さんに相談をしたり、何事も一緒にすることが多くなりました。今までは自分が何をするにしても、好き勝手にしていましたが、結婚してからは自分1人だけではなく、まずは家族のことを最初に考えるようになりました。」

 

--例えば、お子さんは何人欲しいという願望はありますか。

平戸「2、3人は欲しいですね!賑やかな方が良いかなと思うので。」

 

--改めて今季の目標を聞かせて下さい。

平戸「J1昇格です! 昇格できる力はあると感じていますし、試合をしていてもそういった手ごたえを感じています。一戦一戦全力で戦いながら、その先にJ1昇格がついてきたら良いなと思っています。」

 

--バックスタンドができたことで、よりJ1昇格に向けた想いが強くなったのでは?

平戸「僕が町田に来た時には考えられない状況になっていると思います。J1規格のスタジアムが出来上がって、練習場も天然芝になりましたし、クラブハウスも完成する・・・。想像できなかったです。そして新しいスタジアムでプレーしてみると、新潟戦での手拍子はスタジアム中に響き渡って、プレーしている選手たちは耳に入ってきづらい中でも、試合中にふと『すごい!』と感じました。ファン・サポーターの皆様も含めて、一体となって戦っている感覚がしました。これからホームの雰囲気を毎試合作れるとなれば、選手たちもモチベーションが高くなると思いますし、より一層目の前の1試合に懸ける想いや、J1に挑戦する気持ちが自然と高まります。」

 

--ちなみに個人としての今季の目標は?

平戸「2桁得点2桁アシストを目標に掲げています。」

 

--町田では140試合近く出場しています。その中で最も印象に残っているゴールシーンを教えて下さい。

平戸「18年の(松本)山雅戦の直接FKですね。当時の上位直接対決で、アウェイのアルウィンが満員の中で、後半のアディショナルタイムに劇的なゴールを決められて、個人としても気持ちが良かったです」

--あのFKは蹴った瞬間に入ったという手ごたえはあったのですか。

平戸「壁を超えたぐらいで『キタ』と思いました。イメージ通りです。相手選手がゴールラインに入ろうとしていて、その上を狙えば入るなと思っている中で、狙い通りに入ってくれました。」

--キックの正確性を磨く上で、小さい頃はどんな練習をしてきたのですか。

平戸「僕はユースの寮に入るまで団地育ちでした。住んでいる団地に壁があったので、ひたすら狙ったところに蹴る練習をしてきました。それは間違いなく活きていると思います。ただ、今の子供たちにそれをマネして!とはなかなか言いにくいかもしれませんけど・・・。」

 

--鄭大世選手は平戸選手のプレースキックの特徴を「同じところに何度も狙って、そこへ正確に蹴ることができる」と話していました。そういったボールを蹴るコツはありますか。

平戸「1回そこに蹴れたら、その感覚を身体が覚えていて、この軸足で、この蹴り足で入って、こうすればそこに蹴れると分かります。感覚的に身体が覚えますね。頭から発信して、身体が自然と動いてくれます。」

--今後自分がどうなっていきたいか。将来的なプレーヤー像を聞かせて下さい。

平戸「僕自身としては何でもできる選手になりたいと思っています。攻撃ではシュートを打ってもしっかりと決め切れる選手で、正確なパスを出して、チャンスメイクもできて、アシストもできる。攻守において、走れて、戦えて、守備でもボールを奪えて、チームのために戦える選手になることです。器用な選手というよりも、何でもできるチームに必要な選手になりたいです。また太貴がピッチにいたら頼もしい。あの選手がピッチにいれば勝てると言ってもらえるような選手になりたいです。」

 

--まだシーズンは続きます。最後にファン・サポーターの皆様へメッセージをお願い致します。

平戸「J1昇格という目標がある中で、選手たちの力だけでは、間違いなく上には行けません。ずっとゼルビアを見てきたファン・サポーターの皆様の力が必要ですし、ここまで大きなクラブにしてくれた方々の想いも背負って、今後も戦いたいと思っています。クラブも含めて、チームのためにやれることを、全力でやらないと上には行けないと思うので、共に戦っていただけるとうれしいです。」

 

●編集後記・・・

「10番を背負って、チームのために戦おうという決心から、今も10番をつけています。」

今回のインタビュー中。

言葉の端々から町田を引っ張るという強い責任感を感じることが多かったです。

 

様々な『想い』をえて、現在の平戸選手がいる。

 

そんな強い責任感の漢がインタビュー中に笑顔を見せたのが、プライベートの話しをした瞬間。

24歳の好青年の横顔を見た瞬間にどこか安心をしてしまったのは、私が歳を重ねているからでしょうか(笑)

 

今週末は自身にとっても、そしてファン・サポーターの方々にとっても印象に残っているアウェイ松本戦。

太貴がきっと僕らを『熱く』させてくれる。

(MACHIDiary 編集長より)