--今回は長年ボランティアスタッフの一員として、ホームゲームの運営に携わっていただいている石黒さんにお話をお伺いします。まずはボランティアスタッフの方々は、具体的にどんな活動をされているのですか?

石黒「ゲート周辺の業務が中心です。現在は紙チケットを利用される方も少なくなったため、QRコードの読み取り、配布物がある場合は、配布物を来場者の方々に配ります。私はスタジアムに着いて、どこにどう行って良いか分からない方をご案内する、案内係をやらせていただいています。現在ボランティアスタッフの登録総数は200人ほどで、1試合の参加人数は30人ほどになります。」

 

--そもそものゼルビアとの接点の始まりは?

石黒「息子が2001年にFC町田のジュニアユースに入ったことです。当時覚えたてだったインターネットで検索をして、FC町田について、いろいろと調べました。その中でFC町田が戸田和幸さんや酒井良さんを、輩出したクラブであると知りました。そしてFC町田にゼルビアという愛称が付いたトップチームがあることを知ったのもインターネット検索からでした。

その後、決定的になったのは、『FC町田ゼルビアはJリーグを目指します』というブログを見たことです。その中でブログを書いていた小森忠昭事務局長にお会いしたいなと思うようになったことで、ますますゼルビアに興味を持つようになりました。ちょうどその頃、2004年の東京都リーグに所属していたタイミングで、現在のユース監督である竹中穣さんがゼルビアに加入したことも大きかったです。」

--そんなご縁だったのですね。

石黒「それまでは自分もO-40のサッカーをやっていたので、チームの活動もありますから、そんなにゼルビアを熱心に見ていませんでしたが、頻繁に試合を見に行くようになったのは2007年から。関東1部リーグで優勝して、地域決勝大会に臨んだ年です。刈谷での予選ラウンドを見に行きましたが、全国の壁の高さを痛感する結果に…。サポーターも傷心した気持ちで町田まで帰ってきました。そんな出来事もクラブに本気で関わろうと思ったきっかけになりました。」

 

--そこからなぜ、ボランティアスタッフに?

石黒「地域決勝の敗戦があまりにも悔しくて、もう漫然と見るのではなく、本気で応援しよう!と思ったんです。でも本気で応援するにはどうしたら良いのか分からず、当時できたばかりだったゴール裏の『CURVA MACHIDA』の集会に行ってみたりしました。そこに入れてもらおうかなと思っていましたが、年齢的には40代後半だったので、さすがに難しいなと思いましたね。そんな折に、ゼルビアのスクールが展開しているアンチエイジングサッカーの第1回目が07年12月に開催されました。それに参加したところ、ボランティアスタッフの方々もいらっしゃっていて、いろいろとお話を聞いたんです。話を聞いていると、ゴール裏で応援するよりも、ボランティアの方が直接クラブの力になれるのかなと思い、ボランティアを始めることにしました。」

 

--初めてボランティアに参加された時のことは覚えていますか?

石黒「当時は関東リーグなので、無料試合でしたが、ボランティアの仕事はそれでも結構ありましたし、設営もやっていました。関わっているクラブスタッフも面白い方が多かったですし、選手との距離もすごく近かった。こんなに楽しませていただいて良いのかなと思えるほど、楽しませていただきました。伝説のボランティアと言われていた中野めぐみさんにもその時、初めてお会いしましたが、『こんな方がいらっしゃるんだ』と、良い意味で衝撃でした。今でも大変リスペクトしています」

 

--当時は選手との距離感も近かったとか。

石黒「そこらへんのお兄ちゃんがサッカーをやっているぐらいの感覚でした。石堂和人選手とか、当時はスクールのコーチも務めていたので、スクール生は選手たちのことを『●●コーチ』という呼び方をしていましたから、余計に距離感が近かったのかもしれません。」

--スタジアムの空気感が変わる転換期のようなものはありましたか?

石黒「09年にJFLへ上がった時はお客さんが急に増えました。ゴール裏の人数も増えましたし、声出しの人も増えて、今まで来なかった人たちがスタジアムに来たかなという感触はありました。さらに、2010年に相馬直樹さんが監督になった時は、サポーターの数はもちろん、ボランティアの応募者が急激に増えました。当時は“相馬バブル”と言えるほど。相馬さんが監督になったことで、クラブの本気度を感じたという人が多かったようです。」

--5月16日のアルビレックス新潟戦ではついに「シン・ノヅタ」がお披露目されます。古くから野津田を知る方として、変わりゆくスタジアムをどう思っていますか?

石黒「あの牧歌的な雰囲気のスタジアムがここまでなるとは…と思うと、感慨深いです。最近、野津田まで行って、工事用フェンスが外れたので外からバックスタンドを見ましたが、すごく立派でした。これまで何度かスタジアム問題で寂しい想いをしてきましたが、あの時があったから今があると思えます。これは個人的な話になりますが、今はメインスタンドの階段下で案内係をやっているので、可能であればバックスタンドの案内係に配置転換してほしいです。これは切なる願いです(笑)」

--石黒さんの願いはきっと届きますよ! 今後のチームへの期待感を聞かせて下さい。

石黒「在籍期間が長い選手に対しては、どうしても思い入れが強くなります。なので、深津康太選手や中島裕希選手にはクラブの象徴として長く活躍してほしいなと思います。あとは佐野海舟選手のような生え抜きの選手がもっと増えると良いですね。そういった意味では晴山岬選手や奈良坂巧選手にも出場のチャンスがあるとうれしいです。サッカーは移籍が多いスポーツですが、ゼルビア一筋〇年とか、いつかはゼルビアだけに所属して、現役を引退する選手が出てくることも願っています。また最近は2種登録や特別指定の選手も増えてきたので、ワクワクしています。」

 

--ちなみにこんなクラブであってほしいといったリクエストはありますか?

石黒「クラブスタッフの方にはクラブの伝統や象徴、ストーリーを大事にしてほしいなと思います。私自身、歴史や物語を知って、クラブを好きになった部分があります。またクラブの創設からご尽力いただいている守屋実相談役や初代監督である菰田省二さんたちが紡いできたストーリーがあることで感情移入できる部分もありますから、そういったゼルビアに関わる人々のサイドストーリーを読める『MACHIDiary』には期待しているんです。」

--ありがとうございます! スタジアムの話と同様に、最近はクラブの規模感も次第に大きくなっていますが、どんなことを感じていますか?

石黒「単純にスタッフの人数も増えていますし、クラブスタッフへの期待感が高まっています。外から見ていると、やりたいことや動きのスピード感が上がっている気もします。『天空の城 野津田』プロジェクトもすごく良いですよね。最近はスタジアムから、3〜5km圏内に向けた広報活動を強化しようという動きがあることも聞いていますし、クラブの本気度を感じているので、すごく期待しています!」

 

--石黒さん個人としては、今後どういった形でクラブに関わっていきたいですか?

石黒「これまでもボランティアや後援会活動など、さまざまな活動をしてきましたが、体が動く限りは、クラブの広報活動のお手伝いをしていきたいです。ゼルビアと関わる方々にお話を聞いて、それを広く伝える“伝道師”的な役割ができたら嬉しいですね。定年でリタイアした後に、これからどうやっていきがいを見つければ良いのか…という方がいらっしゃれば、ぜひ野津田に来ていただきたいです。例えば、一人ぼっちでスタジアムに行くのは寂しい。そういった方々を集めて、場内をご案内したり、仲間をご紹介したりする、“初心者ツアー”もぜひやってみたいです。」

--“初心者ツアー”良いですね! クラブスタッフの方、ぜひご検討をお願いします。最後に石黒さんのこれからの夢は何ですか?

石黒「最初に願った夢は、『いつかJリーグに行けたら良いな』でした。その夢が叶い、『スタジアムが立派になったらな』『専用練習場ができたら良いな』と思ってきたことが、どんどん叶っています。ただ、まだ叶っていない夢があります。それは常時満員のお客さんが詰め掛ける野津田を見ることです。野津田はスタジアムの快適性がすごくあるので、初めての方にも気にいっていただけると思います。
『オレらの夢の続きはまだ終わらない』
私が好きなチャントのフレーズにあるように、まだまだ夢の途中です。
これからもクラブが発展していく力になりたいと思っています。ゼルビアは町田市という1つのホームタウンで形成されているクラブです。だからこそ、皆さんとの距離感はすごく近いです。この世界観の中で、皆さんとゼルビアのサッカーを今後も楽しみたいと思っています。」

 

●編集後記・・・

MACHIDiaryのオファーを出したとき、「いつも楽しみにしてるんですよ!」と仰っていただいた石黒さん。

バックスタンドが開設するこのタイミングは、絶対に石黒さんにお願いをしたいと思っていたので、快諾いただいた時はとても嬉しかったです。

 

クラブの『伝道師』的な役割も担いたいと仰っていただいた石黒さんが大事にされているクラブの『歴史や物語』。

まさにこのMACHIDiaryのコンセプトにも通じます。

 

このクラブに関わった様々な人の『想い』をこのMACHIDiaryで繋ぎ、そして『夢の続き』を追いかける。

 

石黒さんが描く夢は一つずつ叶っていっています。

 

『常時満員の野津田』

石黒さんの『次の夢』もきっと遠くないはず。

 

『オレらの夢の続きはまだ終わらない』

石黒さんと共に追いかけ続けます。

(MACHIDiary 編集長より)