--FC町田ゼルビアユースは4月1日に開幕するT-1・T-3リーグを戦います。その公式戦の開幕を控えている、現在のユースチームの状況や心境を竹中監督にお伺いします。

(取材は3月24日に行われました)

竹中「昨年のリーグ戦を終えてから、公式戦を一度も経験していません。また例年であれば、春先のサッカーフェスティバルに参戦することで実戦の場を積んできましたが、今年はコロナ禍により、参加できていないため、実戦経験が乏しい中での開幕となります。各チーム同じ条件ではありますが、物差しを持っていない状況でシーズンの開幕を迎えるため、全くの未知数ですね。」

--新チームの手ごたえはいかがでしょうか。

竹中「今年から菅澤大我さんがアカデミー全体を統括していただくことになり、アカデミーとして取り組むべき、チームとしての指針を再構築しながらチーム作りを進めています。まず大きなテーマは変わらずにトップチームに多数のアカデミー出身選手を輩出し、活躍できる選手を育成すること。そして『巧く・賢く・タフに』戦える選手を育成しようというコンセプトを掲げて取り組んでいます。まだまだ完成型には程遠いですが、選手たちはポジティブに取り組んでくれています。」

 

--新チームの特徴や色はいかがでしょうか。

竹中「非常にエネルギッシュで、一人一人が強い個性を持っています。

1つの同じベクトルに向かってチームのために個性を集結できれば強く観ていて楽しいチームになれると思います。一方で空中分解してしまう個性の強さも感じます。

チームというグループに活かされることを一人一人が認識し戦うことができれば多面的で素敵なチームになると思います。」

 

--今年の目標設定はいかがでしょうか。

竹中「T-1リーグを優勝すると、関東プリンスリーグに自動昇格できるので、優勝が1つの目標になります。」

 

--大会を制覇するために、重点を置いているポイントは何でしょうか。

竹中「チームは生物(なまもの)なので、リーグ戦を戦っていく中で、良いものと悪いものが少しずつ見えてくると思います。その良いものをより最善な形にしていく努力だったりを、見失わずにできれば、最終的に力を発揮できるチームになるのかなと思っています。」

 

--アカデミーとしては、こんなサッカーを志向しているといった指針はあるのでしょうか。

竹中「ボールを保持して、創造的なサッカーを追求する。クラブの創業者の1人である重田貞夫先生の残された言葉を継承し、それを理念の根底としてのビジョンに掲げています。」

--近年は2017年のクラブユース選手権で決勝トーナメント進出を果たすなど、全国大会で結果を残す年代も出てきました。ユースチームの歴史が積み重なっている中で、代々受け継がれているようなものはありますか。

竹中「これは個人の話になりますが、ユースの監督を8年間続けてきた中で、僕自身が過去のことを気にしないというか、引きずらないタイプの人間でして…。1年1年が新しいものに見えますし、『昨年のチームはこうだからこう』という考え方はあまりありません。ただ選手の中には受け継がれているものがあると思います。今の代で1つ受け継がれているものがあるとすれば、17年にクラブユース選手権でベスト16まで行った時のチームを、中1や中2の時にスタンドで見ているんですよね。その時の動画が残っていますし、そこから何かを感じて、クラブユースがどういう場所なのか。そういったことに対する理解も深まることでクラブへの愛着が生まれますし、そういう部分は歴史から来るものかなと思います。」

 

--例えば「先輩の代はこうだった」といった、指導のアプローチはされていますか。

竹中「プレースタイルがそれぞれ違うので、重ねるのは難しいですが、昨年に在籍していた選手の中で、取り組み方や姿勢に関して手本となるような先輩の名前を挙げてアプローチをすることはあります。」

 

--選手たちがそういった話を聞くと、目の色が変わったり、取り組み方は変わるものですか。

竹中「先輩のそうした姿を見てきて、感じたことを試行錯誤重ねる中で、3年の夏前の頃に、ようやく自分のものになるといったことはありますね。またトップチームの練習に参加し、大人に触れることで、逞しくなる。そんな変化を見せることがあります。それを周りに波及させることで、ほかの選手たちは刺激になっていると思います」

--青木義孝選手のように、ユースからトップチームに昇格はできなかったものの、大学を経由して、トップチームに加入するケースが出てきました。

竹中「18歳でプロのレベルに到達し、トップチームで活躍する選手が出てきてほしいものの、長い期間ユース年代を指導していると、多くの選手が18歳の時点ではプロになるための準備まで辿り着かないですね。大学生はサッカーをするだけの環境ではない中で、いろいろな見聞を広げ、それでもサッカーの道を志したいという想いが強くなるというケースもあります。プロ生活は決して長くはないですし、大学での4年間は、むしろその人生の方が長いと言える、プロ生活が終わった後に必要なものが身につく時間でもあると思います。」

 

--ちなみに18歳の時点でプロになれる選手は、どういった要素をすでに持っているのでしょうか。

竹中「当然技術的な部分がないと強化部の評価は受けられないので、それは前提ですよね。あとは、例えばトップチームの練習に呼ばれた際のトレーニングマッチや、ユースの公式戦でワンチャンスをしっかりとものにする自己表現をできるか。それがスタンダードにできる選手は、確率論で言うと18歳でプロになれる可能性が高いです。1回のチャンスをきっちりと仕留める。そのための準備をいつも繰り返しできていることが、大前提にはなると思います。」

 

--竹中監督なりの指導する上でのポリシーとは。

竹中「サッカーに限らず、1人の人間として向き合う、でしょうか。そのために言いたくないこともきちんと伝えることが大事ですし、良いものは良いと伝えるようにしています」

--今年から就任した菅澤大我アカデミーダイレクターと一緒に仕事をしてみて、竹中監督にとって何か新たな学びなどありましたか。

竹中「すごく深いところまで見ていると思います。僕の頭の中をほじくり返すほど、物事を見ているなと感じますね。それが毎日なんですよ。だから本人にも言いますよ。『人の細胞に入ってこないでください』と(笑)。例えばトレーニングの振り返りをしていた時の話で、菅澤アカデミーダイレクターから『あの時、子どもたちに何を考えさせてた?』と言われたことがあります。僕なりの方法論があるにはあるのですが、こういう角度で物事を見ていたのか!?と、考えさせられますね。あとは本人に聞いてください(笑)。こんな考え方や方法論があるのかと、本当に学びが多いです。この歳になってそう思えるのは、なかなかあることではないので、とてもありがたい存在です。」

 

--竹中監督が現役当時、ゼルビアに加入したことは、クラブにとって1つのターニングポイントになりました。そうしたクラブの歴史を知る方がユースチームを率いるという意義について、ご本人はどう捉えていますか。

竹中「そういった歴史の部分を周りの方々につなぎ合わせていただいて、とても幸せな気持ちです。このクラブはファミリーというか、家のようなものになっており、気が付けば長く在籍させていただいています。これは誤解を招く表現かもしれませんが、僕自身はここにしがみついているわけではないですし、このクラブでやってきたことに対する自負はあるものの、変化していくことを楽しんでいます。このクラブで仕事をするためにユースの監督をやっているという感覚ではありません。もちろんクラブに対する強い愛着は持っていますが、ユースの監督という仕事が、やりがいを与えてくれるからこそ、続けさせていただいています。」

 

--ユース年代を指導することのやりがいとは。

竹中「高1から高3になっていく過程で、頭の中も、パワーもだんだんと大人に近い感覚になっていくんですよね。中学年代の3年間と高校年代の3年間はまた違った成長過程があるので、そういった選手たちと一緒に時間を共にすることは面白いですね。」

 

--また別の機会でお話を聞くことになると思いますが、クラブのことを昔から知っている方にとって、近年クラブのスケール感がだんだんと上がっていることに対して、思うことはありますか。

竹中「クラブに携わっていただいた方の中にはすでに亡くなられている方々もいます。そうした方々の想いが凝縮されて、こうして先人たちの想いが脈々と受け継がれてきたものが、価値のあるものへと発展していく。そう思うと、とても感慨深いです。」

--それでは最後にユースチームを応援していただいているファン・サポーターの皆様へメッセージをお願い致します。

竹中「ユニフォームスポンサーの企業様を筆頭に、地域や子どもたちの発展をサポートしていただいていることに対しては、感謝という言葉に尽きます。選手たちにはサポートしてくださる方々のためにも、一生懸命に試合をするだけだと話しています。これまで多くのファン・サポーターの皆様に試合会場まで足を運んでいただいているので、選手たちの一生懸命戦う姿を見せることが、その応援に応えることに繋がりますから、選手たちにはそうした姿勢を常に求めています。さらに試合に勝つことで喜んでいただけるので、チームの勝利を目指しながら、トップチームのユニフォームに着替えられる選手を1人でも多く輩出していけるように頑張ります。これからも末長く一緒に戦ってください。よろしくお願いいたします。」

 

●編集後記・・・

タイトルにもした「一生懸命戦う姿を見せること」は、竹中監督が現役(選手)時代にも心掛けていたことなのではないかと思います。

そして、「サッカーに限らず、1人の人間として向き合う」という部分が竹中監督の選手達と向き合ううえで非常に重要なのではないかと感じました。

これらの源は、FC町田ゼルビアに選手として加入をしてから、これまで歩んできた竹中監督の道にも関係するのでは・・・。

また、別の機会に竹中監督にお聞きしてみたいです。

 

トップチームとはまた違う魅力のあるFC町田ゼルビアアカデミーの活動にも注目です。

 

本日より開幕する、T-1・T-3リーグを闘うFC町田ゼルビアユースへのご支援・ご声援を何卒宜しくお願いいたします。

 

FC町田ゼルビアアカデミーの情報はこちら