--今回は2020シーズンに自宅でも楽しめるコンテンツとして好評だった「ゼル塾」の立ち上げに関わった、FC町田ゼルビアのマーケティング部地域振興課の野本倫央さんにどのような『想い』から「ゼル塾」を立ち上げたのか聞いてみました。

野本「新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令されて、リーグも中断しているタイミングで、クラブは「#いまゼルビアにできること」というハッシュタグでさまざまな活動を始めていました。その活動の一環として、僕たちの部署でも『何かできれば』とミーティングをしたことがきっかけでした。その中でスポーツの競技の枠を超えて、ほかのクラブが何を展開しているか、研究すると、教材を提供しているクラブや遊び感覚でできる簡単な掛け算などを展開しているクラブがあったんです。そこで『うちのサポーターは家族も多いので、こういったものが家族の会話に繋がるんじゃないか』という話になりました。」

--アイディアベースからどのようにブラッシュアップさせたのですか。

野本「まずは国語の書き取りから始めてみようかという話になりました。ひらがな、カタカナ、ローマ字でサンプルを作る中で、『ほかの科目もやろう』となり、そこで僕のほうから『せっかくならば1回出して終わるよりも、継続性を持たせて毎日やりたい』と提案しました。」

--毎日ともなれば、その分労力を伴いますが、なぜ毎日やりたいと思ったのですか。

野本「毎日出していくことで毎日ゼルビアに触れるきっかけになるだろうと思いました。大変な社会情勢で、サッカーやゼルビアに対して、興味や関心が向きにくい中、『ゼルビアを忘れないでほしい』という想いがありました。ゼル塾として毎日コンテンツを作って、その内容がSNSに投稿されれば、毎日何かしらの形でゼルビアが発信され触れてもらうことができますから。」

 

--ゼル塾というネーミングも響きがすごく良いですが、誕生までのプロセスは?

野本「割と最初の段階でゼル塾というネーミングが出てきました。ZOOMでの会議の中で、自然と生まれたネーミングです。それからは、これ一択だろうとなりました。残念ながら発案者は僕ではないのですが(笑)」

--話は戻りますが、ゼル塾の科目は国語だけではなく、複数の科目で成り立っています。

野本「毎日コンテンツを発信するとなると、科目数が絶対に必要です。とはいえ、問題はクラブスタッフによる“手作り”なので、できる科目にも限界があります。国語、算数、社会、体育…。さすがにサッカークラブなので、体育はマスト。体育に関しては、アカデミーやトレーナーなどに協力を仰ぎました。実は理科も候補に挙がったのですが、できる人がいなかった(苦笑)。結局、国語は選手の名前の書き取りがあるため、1日1選手で何日もやれる。そこで午前は国語、午後は科目の持ち回りという形に落ち着きました。」

--ユーザー受けに関しては、どう受け止めていましたか。

野本「子どもたちがゼル塾にトライしている写真をSNSにアップするファン・サポーターがたくさんいましたし、SNSでのそうしたリアクションは、僕たちのモチベーションになりました。大変感謝しています。また選手たちにもご協力いただけたことに対して、この場を借りてお礼を言わせて下さい。自分の名前が書き取りで出題された時には、インスタなどのSNSにアップしてくださったり。特に水本裕貴選手は、お子さんと一緒にゼル塾の問題にトライしている様子をSNSでアップしていただきました。水本選手にはシーズンが終わった後、感謝の気持ちを伝えました。」

--問題を考える上での苦労話は?

野本「問題によっては、サッカーやゼルビアを絡めることが難しいケースもありました。そこはあの手この手を尽くして、サッカーやゼルビアが目に触れられるように工夫をしました。」

 

--夏休みにはゼル塾の「なつやすみの時間割」も登場しました。スタンプカードを導入するなど、新たな試みもありました。

野本「最初のゼル塾は結局、40日ほど展開したのですが、何らかの形で続けたかったですし、『やっぱり夏休みにもやるべきだね』という結論にも達したため、『なつやすみの時間割』も作りました。スタンプカードを作ったのは、毎日続けるという壁を取り払うためであり、ラジオ体操に通う感覚で続けられるようにするため。そして『ゼル塾をやったよ!』とSNSにアップしやすくするという狙いもありました。」

 

--続ける中で、課題も見つかったと思います。

野本「ゼルビアを好きな方には広がったのですが、あまりゼルビアに馴染みがない方々には伝わり切らず、ライトな層への訴求力が足りませんでした。そうした昨年の課題を今年は改善していきたいです。実は新たにパートナー契約をさせていただいた企業様にご協力いただき、2021シーズンから1、3、5年生向けの算数をゼル塾のコンテンツとして始めます。クラブスタッフの知識で作る問題には限界がありますし、昨年は役立つよりも、楽しむ方がメインだったので、今年は学年に合ったコンテンツを提供できればとプロジェクトを進めています。」

 

--ゼル塾というコンテンツを介して、ゼルビアに馴染みのない、ライトな層に訴求するために、何か検討しているアプローチはありますか。

野本「昨年はゼル塾の問題を印刷して、学童保育の方に配布したところ、喜んでいただけたので、今後は町田市内の学校や施設に行き届くような体制を整えたいですね。そのほかでは昨年はありがたいことに、町田市の広報誌などにも掲載していただいて、露出できました。期待の持てるコンテンツですし、公式サイトだけで訴求するのは限界がありますから、とてもありがたいお話でした。」

--ここからは少し野本さんご自身のことを聞かせて下さい。入社歴は?

野本「2019年なので、入社3年目です。FC町田ゼルビア後援会には立ち上げから携わってきましたが、そのご縁もあって、クラブスタッフとして働かせていただいています。」

 

--所属している部署では、具体的にどんな業務を?

野本「ホームタウン活動、ファンクラブ周り、DAZN関連、グッズ、ゼルビアアシストなど、多岐に渡っています。僕は主に、21シーズンから始まった町田と子どもたちの未来のための魅力的な街づくりをアシスト(協働・地域貢献)するプラットフォーム、『ゼルビアアシスト』を中心に、グッズ、ホームタウン活動、そして後援会周りに関する業務をしています。」

 

--すごく多岐にわたっていますね…。ちなみにゼルビアとの接点の始まりは?

野本「スタートはゼルビアがまだ関東1部リーグを戦っていた2007年です。実は最初のきっかけはボランティア活動でした。サッカークラブの運営に携わりたくて、当時フットサルを含めて、東京近郊のフットボールクラブにボランティアをやらせてほしいと、片っ端からアプローチを掛けて、ご縁があったのがゼルビアでした。」

 

--印象に残っているゼルビアの試合を一つ教えてください!

野本「一つには絞れないので、二つで(笑)。一つはJFL昇格を争った2008年の全国地域決勝リーグ一次ラウンド最終戦の矢崎バレンテ戦。負ければ敗退の試合で後半44分まで0-1でリードされている中、土壇場で同点ゴールを決めて、PKで勝った試合です。もう一つは2015年12月、大分トリニータとの入れ替え戦。J2復帰を決めた瞬間ですね。」

 

--以前からサッカークラブの運営に携わりたいという強い想いがあった野本さんは、今後ゼルビアをどんなクラブにしていきたいと考えていますか。

野本「町田という地域に必要とされて愛される。そうしたクラブの理念を実現させたいです。ゼルビアは首都・東京の中のクラブでも、地域密着色の強いクラブにしていきたいんですよね。試合がない日もゼルビアが会話に出てくる。そんなクラブになるための力になりたいです!」

 

--では最後に、野本さんにとって、ゼルビアとは?

野本「自分の生活の一部であり、生きがいです。ゼルビアのことを考えない日はありません!」

 

--キラーワードいただきました(笑)。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとうございました。」

 

●編集後記・・・

野本さんの『FC町田ゼルビア 愛 』しか感じない取材現場でした(笑)

私もゼル塾の配信に少し関わらさせていただいておりましたが、ゼル塾の問題を作成している時は、相当大変だったように見えました。

それでも、ゼルビアのファン・サポーター皆様や町田市民の皆様に少しでも楽しんでもらえれば・・・。という『想い』に突き動かされ、なによりも制作をしている野本さん達スタッフも楽しんでいるように感じました。

2021シーズンのゼル塾はバージョンアップして開始する予定ですの、皆様お楽しみに!

(MACHIDiary 編集長より)