府民総体による日程変更がまさかこんなにメンバーに重圧をかけることになるとは試合が始まるまでは考えもしていなかった。
もちろんヨシムとしてはココ1週間ほどは最悪の状況ばかりが頭に浮かんで普段は寝床について1分で眠ってしまうのに、ついつい考え込んで寝付くまで2分はかかってしまっていた。
「たった2分か~い!」と突っ込まれそうだが普段の2倍の時間なのだからすごいことなのだ。
実際、俺は口内炎に悩まされていたのだからプレッシャーがのしかかっていたに違いないのだ。
俺って意外と繊細なのだ。
最終節の戦う男山FCとは今までの公式戦と練習試合で負けたことがないし内容も圧倒していた。
ただ今シーズンの男山FCは八幡FCにしか負けておらず現時点でリーグ3位の好成績を残している。
もし万が一負けることがあれば得失点差で勝る八幡FCに逆転で優勝をさらわれてしまうことになるのだ。
せっかく八幡FCに勝ったのに優勝を逃したら笑い話にもならん。
今の状況は俺たちにプレッシャーを与えるにじゅうぶんな状況なのだ。
しかも浦和レッズが最終節で最下位の横浜FCに破れて優勝を逃した事実を目の当たりにしたばかりなのだ。
八幡FCに勝った燃えつき症候群、負けたことのない相手、負ければ優勝を逃す・・・。
あ~嫌な感じなのだ。
それでも優勝の瞬間をみんなで迎えようとたくさんのメンバーとサポーターが集まってくれた。
前ちゃんは残念ながら就職試験の面接で来れないが「終わりしだい駆けつけるのでメンバー登録しておいて下さい」とメールが来ていた。
先発メンバー発表
【GK】ヤンマー【DF】浦ちゃん マンモス ケンチャン【MF】(ボランチ)ナカヨシ 和久チャン(右サイド)ユウ(左サイド)サッチン(トップ下)マック【FW】タカシ マーシー
【サブメンバー】ダイ ノブリン キング シバキョー ヤマショー 前ちゃん コモダさん
【監督】ヨシム【スコアラー】エッチャン【マネージャー】ヨータロー【カメラマン】村ちゃん
【サポーター】エミ子ちゃん カエデちゃん マリちゃん アヅちゃん カナエ カトチャン エミチャン【子供たち】リョータ タイガ ユウキ ユースケ ソラ ヒカル ヨシカ
WE ARE NOMAD!
グランドの準備をみんなでやっていつものようにユウを中心にウォーミングアップをしてメンバーに特に気負いもないようだった。
そして優勝に向けての全員円陣を組んだ。
たくさんのメンバーでいつもより大きな円陣になった。
最終戦と言う事でヨシム自らが掛け声をした。
俺は昨シーズンぐらいから【一体感】をテーマに掲げてきた。
仲間のプレーを信じプレーの選択を認め合いミスや苦しい時は励まし励まされゴールや勝利を共に喜びあえるようなチームにしたかった。
勝つことは目標ではあるが目的ではない。みんなで力を合わせて一体感をもって勝利してこそ意義がある。それが[WE ARE NOMAD]我々はノマドなのだ。
その成果が今実を結ぼうとしているのだ。
その思いを込めて声を出した。
「いくぞっ!」「おーっ!」「いくぞっ!」「おーっ!」「いくぞ~~っ!」「お~~~っ!」
前半が始まった。
圧倒的に攻めるノマド。
時おりカウンターで攻め込まれるも圧倒的にノマドが優勢だった。
左右をワイドに使った攻めが男山FCゴールに襲いかかる。
しかしゴールが奪えない。シュートは放つもののワクを捉える事ができない。
ほとんどの時間を相手陣内でプレーしたにもかかわらずゴールが奪えない。
そしてこのまま0-0で前半が終了してしまった。
前半、再三にわたり右サイドを攻められていたのでケンチャンの消耗を考えて後半から右サイドバックを和久チャンにしてボランチにこの試合限りで引退を表明していたキングを入れた。
気合を入れるためにもう一度メンバーとサポーター全員で円陣を組んだ。
さあ泣いても笑っても残り30分なのだ。
勝って優勝を決めたいとみんなが思っていた。
後半が始まると少しずつノマドのリズムが崩れだした。
ゴールが奪えない焦り、そしてこの日の審判の不甲斐ない笛に苛立ちが募り始めていた。
こうなると守備のリズムが崩れ出すのがノマドの悪い癖だ。
少しの時間も相手にボールを与えたくなくなる。
闇雲に相手を追いまわし奪ったボールも繋がらない。
まだピンチらしいピンチは迎えていないのに攻め込まれている気分になっていく。
そんな嫌な時間の中でカウンターから左サイドのサッチンが相手ディフェンスラインの裏へ抜け出し中央へ低いクロスを入れた。
このクロスにタカシが飛び込み気持ちで押し込んだ。ついにゴールだ。先制点だ。
タカシがベンチへ向かって走ってきて我々と抱き合った。
次々にメンバーがベンチまで走ってきて喜び合った。
ついに長い長い均衡が破れ1-0とノマドがリードを奪ったのだった。
これで落ち着くかと思われた。
しかし優勝への重圧は思ったより重くのしかかっていたのかもしれない。
ボールを奪いたい自分のものにしたい思いがディフェンスのリズムを狂わしていく。
しかし狂い始めたリズムの中でも必死にボールを追うメンバーたち。
狂ったリズムを元に戻す事はもう不可能だ。
しかし必死でボールを追うことだけはみんなの気持ちの中から失われてはいなかったことが救いだった。キングが落ち着かせようと奪ったボールを早めに左右に展開した。
センターバックのマンモスは冷静に1対1のピンチを救っていた。
しかし勝利の女神は優勝へ向かうノマドに最後の試練を与えられた。
ゴール中央付近やや遠目の相手フリーキック。
相手選手と競り合いもつれ合って倒れたナカヨシの肩に当たってボールはゴールに吸い込まれた。
オウンゴール・・・。再び1-1の同点になってしまった。
同点でいいのか?勝ちに行くのか?守りにはいるとやられそうな気がする。勝ちに行けば失点のリスクを背負う。正直迷ってしまった。どちらでいくのか俺自身がメンバーに示す事ができないでいた。
チャンスとピンチが交互に訪れる展開が続いた。
残り3分でマーシーに代えてダイを入れた。
前線で体をはってのキープ力と一発の爆発力に期待した。
囲まれながら倒れこみながら必死でボールをキープしようとするダイ。
早くホイッスルが鳴ることを願った。
そしてタイムアップ!
しかし喜びを爆発させる者はいない。
優勝した喜びよりも勝てなかったことの悔しさがメンバー達の表情に表れていた。
俺はうなだれるみんなを集めて言った。
「勝って優勝を決めることはできなかったけど、この厳しいプレッシャーの中で最後までよく守りきった。誰も力を抜かず最後まで走りきった。俺たちは負けなかった。胸を張ろうや。俺たちは優勝したんやぞ。」
重苦しい微妙な空気が徐々に徐々に喜びに変わっていった。
若者たちが俺を胴上げしてコーラをかけた。
そしてシバキョーも宙に舞った。
みんなで声をあげながら記念写真を撮った。
じわじわと優勝の喜びが湧き上がってきた。
たぶんこの喜びの頂点は忘年会なのだろうな。
飲むぞ~!
八幡FCのオーリョージくんと話をした。
オーリョージくんは「なにやってたんですか?もたもたしてはるからちょっとうちの逆転優勝を期待してしまいましたよ。」と笑った。
「ノマドが喜んではるとこ観てたら、優勝したいなって思いましたよ。」とも言った。
そして赤川杯、これからの対戦に「いい試合をしよう」と言って握手して別れた。
なんだかほっとした。
八幡FCに勝ったときは本当にうれしかったが今日は喜びよりも安堵感が強いってのが本音だ。
本当に優勝できてよかった。
ノマドはまだまだ常勝チームではない。
俺もチームも未熟な面がいっぱいあるし来年また優勝できる保障なんてない。
だからいろんな面でもっと頑張らなければならない。
まだまだ発展途上なのだ。つまりもっと強くなる可能性もあるのだ。
それに俺たちの一体感はどのチームにも負けないのだ。
WE ARE NOMAD!いいチームなのだ。
FC.NOMADはYリーグ2007シーズンの優勝を勝ち取りました。
応援に来てくださったり気にしてくださったみなさんありがとうございました。
WE ARE NOMAD!みんなの応援が力になりました。
これからも頑張りますのでみなさんどんどんノマドに絡んでくださいね。
FC・NOMAD戦いの記録
http://ameblo.jp/fc-nomad/entry-10031678600.html