6・ギュッとまとまり決勝戦へ
準々決勝はPK戦だ。
PK戦のメンバーを相談するために女子メンバーの輪に入る。
「どうする?ここまで来たんだ女子メンバーで勝負するか?」
「いや、勝ちたいです。男性にも蹴ってもらってください」
PKは3人が蹴ることになる。
サユリちゃん、ケッツンは蹴るとして後1人は俺が選んだ。
トウキックのシュートが有利と思いアヤヤを選んだ。
後は気持ちだ。
「行けるか?」
「はい。やってみます」
ジャンケンで先攻を取ってPK戦が始まった。
全員が手をつないで息をのんで見守った。
第1キッカーはサユリちゃん。
ボールをセットしてすぐに助走に入った。
インサイドキックで蹴られたボールは難なく右サイドネットを揺らした。
歓喜するベンチ。メンバーがサユリちゃんを取り囲む。
相手の第1キッカーがボールをセットする。
それを近くで見つめるケッツンがゆっくりゴールラインまでさがる。
キッカーが助走を取る。
ケッツンが飛ぶ。
ボールはケッツンがはじき出した。。
「ケッツーン!!」みんなが叫ぶ!
1-0だ。
第2キッカーはケッツン。
ボールをセットする。
一瞬の静寂の後、蹴られたボールは右にそれた。
「あーっ!」悲鳴の後で「ケッツン止めて!」と願う。
相手の第2キッカーがボールをセットする。
ケッツンはそれを目の前で見ながらゆっくりゴールラインにさがる。
キッカーが助走を取る。
ケッツンが飛ぶ。
再びケッツンがはじき出す。
「うぉ~~!」「ケッツーン!」「ケッツーン!」
すごいまた止めた。
1-0のままだ。
第3キッカーはアヤヤだ。
これが決まれば勝ちが決まる。
「がんばって!」「思い切って!」
アヤヤはうなずいてゆっくりボールをセットした。
手をつなぐみんなが一歩前に出て駆け寄る準備をする。
小さなステップの助走からアヤヤが蹴る。
アヤヤが蹴ったボールは確かにゴレイロの手が触れることなくゴールへ向かった。
しかし、ポストを叩いた。
「あ~っ!」みんなが息をのんだ。
「大丈夫!ケッツンが止める!」「ケッツンがんばって~!」
全員が手をつなぎ祈る。
相手の第3キッカーがボールをセットする。
前と同じように目の前に立ったケッツンがじっとボールを見ながらゆっくりゴールラインにさがる。
ケッツンが大きく手を広げる。
キッカーが助走を取る。
ケッツンが飛ぶ。
キッカーが蹴ったボールは大きくゴールの外へとはじき出された。
「やったー!」「ケッツーン!」
走り出すメンバーたち、ケッツンを取り囲んでみんなが抱きついた。
「すごいぞ!ケッツン!」相手のPKを3本とも止めてしまった。
エツが言った。「ギュッとまとまってきたな先生!」
みんな口々に「ギュッとまとまったな」と興奮がさめない様子だ。
俺は「うんうん、ほんまやな、ギュッとまとまったな。ギュッとまとまったな」と一体感を噛み締めたのだった。
GDEX.FC準決勝進出である。
準決勝が始まる前に本部から放送が入った。
「準決勝進出4チームの代表の方は本部席まで起こしください」
俺とナカタくんが本部に向かった。
「ほんますごいっすね。優勝するんとちがいますか?あはあはあは」とナカタくんは日に焼けた真っ赤な顔で興奮して言った。
本部では「試合までの時間をたっぷりとってありまして次は40分後です。もしよければ準決勝まで15分、それからまた決勝まで15分でやりたいのですがどうでしょうか?」と言うことだった。
4チームとも「あまり時間が空きすぎるよりもいい」ということで話がまとまった。
予選で負けたホットパンツチームは準々決勝で負けたようだった。
リベンジの機会はなくなったが正直ほっとした。
やはりガツガツ来られると消耗した彼女たちの体が心配である。
準決勝
準決勝の相手はミックスチームだ。
このチームも一体感で勝ちあがってきていた。
準々決勝の時は男性のみで戦っていたようだが女子メンバーが応援しておおいに盛り上がっていた。
「あんな雰囲気のチームはワンデーでは強い」と誰かが言った。
しかし今のGDEX.FCは一体感では負けていない。ギュッとまとまっているのだ。
試合前に再び全員で円陣を組んだ。
「ABCD-!」「ジーデックス!」「オンライン・ゲーム・ストアー!」「ストアー!」「オンライーン!」
「がんばれー!」「がんばれー!」
GDEX.FCの一体感はさらに増していった。
試合序盤は相手チームは女子2人を入れたミックスで勝負してきた。
これが彼らの一体感を作り出しているのだろう。
GDEX.FCは当然のように押し込んで得点を奪う。
すぐに相手チームは女子1人を男子に交代してきた。
しかしGDEX.FCは2点目を奪った。
もう相手チームは全てのメンバーを男子に交代してきた。
早い段階で2点を失った相手チームは前からプレッシャーをかけてきた。
そしてすぐに1点を返されてしまった。
暑さは確実に彼女たちの体力を奪っていく。
消耗しているのが観ていてもわかる。
「切りかえろ~!」「シンプルに!」それでも声をかけ合って必死でボールを追う。
「大丈夫か?」と足を引きずるトミに声をかけるが「いける」とまたボールを追いかけた。
その後、GDEX.FCが1点を追加し3-1で決勝進出を決めたのだった。
決勝まで15分。
選手たちは消耗していたが、みんな笑顔だった。
この暑さの中、体力の限界に近い中で、みんなこのチームでプレーする事を楽しんでいるようだった。
「すごいことですよ、これは!」とシミズ社長も興奮していた。
我々GDEX.FCは、彼女たちは、ついに決勝戦まで突き進んだのだった。