前日は夜遅くまで飲んでいたので俺が大会が行われるコートに着いたのはDDGが2試合目を戦っている時だった。
カナエにメールして1試合目は2―2だときいていたので苦戦しているのだなとは思っていた。
それでも2試合目の途中を駐車場から歩きながら観ていると、ちょうど前ちゃんがPKを成功させていたのできっと勝っているのだなと思いながらコートに到着すると2試合目が終了し、メンバーやヤマショーが厳しい表情をしていたので負けたのだとわかった。
ヤマショーがなにやら「試合中に切れたらアカン!」と言うようなことを誰かに言っていた。
当日は曇りながらかなり暑くて湿度もかなり上がっているようだった。
不快指数100%って感じの日なのだ。
応援に来ていたエミ子ちゃんですらバテているようだった。
メンバーたちが消耗した表情で話をしていたので差し入れのスポーツドリンクとチョコスティックパンを渡してからちょっとだけ声をかけて現在コートで行われている試合を観ていた。
あらら、かなりのハイレベルやん。これは苦戦するはずなのだ。
個人技はもちろんだがディフェンスはしっかり組織で守っていたしオフェンスも各自の動きが連動していた。
タカシが「京都府リーグ1部のチームです」と観戦していた俺に教えてくれた。
そしてその京都府1部のチームも苦戦していたのだ。
前回DDGが優勝した大会はミドルレベルの大会。
今回はオープンレベルなのだ。
ミドルで優勝してしまうとその施設ではもうミドルには出場できない。
そんなミドル以上のチームが集まったハイレベルな大会に今まで個人のスキルだけで戦ってきたDDGが苦戦するのは当たり前の事なのだった。
3試合目もマンツーマンで守るDDGは組織的に攻める相手チームに振り回されて体力を消耗しボールを奪っても速攻に転じる余力がない。
ゆっくり攻めれば組織的に守られてパスの出しどころがなく簡単にボールを失っていた。
先行された後半はパワープレー(*1)で攻撃を仕掛けるもボールを持ち上がったゴレイロ(*2)以外の4人に動きがないためにまったく機能せず、簡単にボールを奪われ次々に無人のゴールに得点されてしまった。ミドルのゲームでしか試した事のない未成熟なパワープレーは成熟した組織ディフェンスに見事に粉砕されてしまった。
予選最後の4試合目の前に前ちゃんと話した。
それまで俺は特に何も言わずに観ていたのだけれどディフェンスについて俺の考えを話した。
DDG監督のタカシの考えでは、まだ組織のディフェンス練習していない状況なのでマンツーマンの方がわかりやすくメンバーに伝えることが出来たからの選択だったのだろう。それはそれで納得できる選択なのだ。
しかし個人技やスピードで互角以上の相手に対し、さらに暑く厳しい状況の中でマンツーマンでは対応しきれていなかったのは確かだった。
それで前ちゃんがタカシに「先生と話してゾーンで守ってみたらどうかと思ったんやけど」と話した。
タカシは、やはり「急には無理かも」と考え込んでいたがゾーンディフェンスにしてみる決断をしたようだった。
4試合目が始まってみるとメンバーは少しずつゾーンディフェンスに対応していった。
ゾーンディフェンスの戦術がわかっているものの指示がメンバーに浸透し共通した意識が芽生え始めコーチングの声も出始める。
そして都合のいいことに相手チームは今までのチームとは実力的に下回り、ディフェンスがあまり上手くなかった。
中途半端なゾーンディフェンスは簡単にピヴォ(*3)にボールを当てることが出来て攻撃に関しては、いい展開でゴールする事が出来た。
しかしDDGのゾーンディフェンスも練習していない組織ディフェンスなので穴が多くて危なっかしかった。ただ、やろうとすることの共通意識が芽生えた事は大きかったのだ。
そして勝ったことが自信にもつながったように思う。
屋上から試合を観ていたカエデちゃんが「今までの試合とは違ってしっかり守れていた。」と言っていた。
予選4試合を戦って1勝2敗1分、滑り込みで予選を突破し決勝トーナメント進出を決めたのだった。
決勝トーナメントの最初の試合は予選3試合目に敗れたチーム。
安物の白いTシャツに手書きの背番号とチーム名、そんなユニフォームとは裏腹に個人のスキルも組織力もかなりの上級者たちなのだ。
それでも予選4試合目のいいムードで試合に入り前半は互角に近い戦いをした。
リスタート(*4)などで集中が切れたスキを突かれて得点され、リードを許したまま後半へ。
後半も互角に戦ったものの得点できずパワープレーのギャンブルに出るも失敗。
その後はズルズルと点差を広げられてしまった。子供たちをほったらかして遅れて応援に来たマリちゃんは「マークを見ているけど付ききれていない」とディフェンダーらしい指摘をしていた。
DDGのオープン大会初出場の成績は決勝トーナメント1回戦、準々決勝敗退というほろ苦いものだった。
もともとDDGはノマドの若手たちが競技志向とは別に自分たちが楽しむために作られたチームだ。しかし、ここのところG-FCとして出場する大会に向けて勝つことを目標に練習をしてきた。
その練習の中で自分たちのすべき事が何であるのかが掴みきれずに模索していた。
今大会は、その自分たちがすべき事、自分たちに足りないものを明確に出来た有意義な大会になったことだろう。
「もっと強くなりたい。もっと強くなれる。」そう思ったに違いない。
ただそれは競技志向になることではなく、自分たちのチームとしての力を高める喜びを得るために努力する事なのだ。
ただ、彼らにも不利な面があったことも付け加えておきます。
タカシ、前ちゃん、ユウ、ダイ、サッチンは、それぞれが前日を含め連日のフットサルで疲労が蓄積して体が重かったこと。マーシーが負傷したこと。まだフットサル経験がほとんどないリョ-がいたこと。そしてエッチャンが応援に来ることが出来ずにユウのテンションが上がりきらなかったこと・・・。
その上での予選突破で決勝トーナメント進出は彼らの潜在能力を物語っているのだろう。
さあ彼らの本当の意味での逆襲がこれから始まります。
DDGはもっと強くなります。ヨシムが保障します。
楽しみがひとつ増えたのだ。
また、応援ユニを来て応援に行くから頑張るのだよ、チームだいどんごん!
追伸、スポンサーの名前が入っている以上は相手チームへの挑発行為及び審判への抗議は謹んでほしいものですね。ほんま焦るわ(^^;)冷静に冷静に・・・。
(*1)【パワープレー】得点を取るためにゴレイロ(キーパー)がフィールドプレーヤーに加わり5人で攻める戦術。失点のリスクが高いため短時間にギャンブル的に行う事が多い。
(*2)【ゴレイロ】サッカーで言うところのゴールキーパー。フットサルではゴレイロと呼ぶ。
(*3)【ピヴォ】サッカーで言うところのフォアードに位置する選手。
(*4)【リスタート】フリーキックやキックインやコーナーキックなどでゲームが再スタートすること。