たぶんこういうネタを書くのは初めてのことだと思う。
そしてこれから先ももう書くことはないと思うが。
2年半に渡り、1STBITの屋台骨を支えてくれていたメンバーのひとりが退職した。
忘れもしない市ヶ谷の私学会館の喫茶店で面接をしたときのこと。
2005年の10月。会社は10人ほどでまだ有限会社だった頃の話。
よく晴れた日で木々の葉は少しだけ色づきはじめ、
窓から見える線路沿いの土手を気持ちよさそうに散歩する人たちを眺めながらいろいろな話をした。
大きな目をクリクリさせた少年はまだ22歳だった。
少し話をしたら、すぐにデキる子だとわかった。
彼と働ける未来にワクワクした。
誰よりもきちんと自分の意見が言える子だった。
会社の雰囲気をいつも明るくしてくれる子だった。
本気で叱ったこと。夜中に長電話したこと。
相談したこと、されたこと。
飼っている犬を連れて、幾晩も会社に泊まり込んでいたこと。
送別会の最後にそんなことが次々と思い出されて涙がこぼれそうになった。
誰かが退職する夜、ボクは必ずひとりの時間を過ごす。
車を遠回りさせて海を眺めたり、家の近くの公園のベンチに腰をおろして星を見上げたり。
もっとこんな風になっていたら、もっとこんな風に接していたら、もっとこんな風に・・・
海や星や大地、時をこえてずっと変わらずそこに在り続けるものをぼうっと眺めながら
意味のない if だけを、必死に考え続ける。
経営とはきっと仮説を立てて、その仮説に身を委ねること。
正しくても間違っていても、その結果や痛みを受け入れ胸に刻み歩き続けなくてはならない。
無意味に甘やかすだけではなく、無意味に厳しくするのではなく。
最高の未来と最悪の未来。
対立する二つの概念の間をバランスを取りながら、if について迷い考え、結論を出して受け入れる。
そんなことの繰り返しなのだと思う。
全てのスタッフに100%の気持ちと時間で接することはできない。
ただできないことを、無理という言葉で片付けることだけはしたくないと思う。
きっとどれだけ素晴らしい会社でも人は辞めていく。
それでも仕方ない、という言葉で片付けることもしたくない。
これほどまでに弱い自分が、これから先もそんな作業を繰り返していけるのだろうかと
ときどき不安に思うこともある。
でも自分がそうであるように、辞めていったスタッフが何年か先に、
会社の噂を聞き、誇らしい気持ちになるようなそんな会社にしたいとそのたびに決意を新たにする。
幸運なことにインターネットは全てのひとを繋いでくれているのだから。
近づいたり離れたり、また近づいたり、そんな風にしながら。
そして同時に、1STBITという会社の中で同じ時間を過ごしたスタッフが
光に満ちた将来を送り、愛され祝福されながら生きていけることをいつも心から願う。
おつかれさま、本当におつかれさま。そして・・・何より、ありがとうを伝えたい。
頑張るんだぞ、オレも必ず頑張るから。
じゃあ、またな。