友人のライター・RENさんの2冊目の著書「氷の楽園〜失われた自尊心〜」を読んだ。僕とRENさんは、2月12日に行われる、Favorite Banana Indiansの常連の出演者である西村守正さんが主催するライブイベント「夢色音楽祭vol.2『まふゆの陣』」に朗読で参加する。RENさんの1冊目の著書「破壊から再生へ」を、朗読ライブ用に再構成したテキストを読むので、それに繋がる作品である「氷の楽園」も読もうと思ったのである。随分前に紙媒体の本をいただいていたのだが、「エーテルコード」の準備に入ってしまい、読みたくても読めないままきてしまった。ご本人も言っていたが、「破壊から再生へ」はエッセイだが、「氷の楽園」は自伝的小説である。というより「自叙伝」といった方がいいかも知れない。
「破壊から再生へ」が、いくつかのエピソードのエッセンスを取り上げ、そこで感じたこと、考えたことを簡潔に、分かりやすくまとめていたのに対して、こちらは一つ一つのエピソードがより詳しく書かれている。「破壊から再生へ」の背景や深層にあるものを描いているのだ。これを読んだ後に、もう一度「破壊から再生へ」を読むと、きっと新たな発見があると思う。



サブタイトルが「失われた自尊心」となっているのは、幼い頃から学生時代まで、彼女が実の両親から心身ともに虐待された経験から、自己評価が低くなり、自尊心が失われたという思いからつけられたものだ。しかし、僕は「氷の楽園」を読んで、必ずしもか彼女から自尊心は失われていないのではないかと思った。
RENさんは親からの虐待を受け、愛情を注がれることなく育ったので、「信頼の欠如」の状態に陥った。そんな彼女が、付き合っていたヤクザから言われた言葉「人を信じれなくなったら終わりだ」を胸に抱えながら、生きにくい世の中を渡っていく。不器用なのに破天荒。そして、最終的には、信頼していた人間が自分から離れていっても、その相手を憎むことなく、愛し続ける境地に至る。「信頼というものは、まるで海のようにそこにある」(本文より)。それが汚されるのは、私達が汚染されているということだ、と。
あらゆる辛酸を嘗めながら生きてきて、この言葉にたどり着くピュアさに、僕は驚嘆する。まるで、マザーテレサのようだと思う。しかし一方、彼女はこの世を「氷の楽園だ」というのである。氷のような冷たさの中で、全てを信頼し、自分に愛情を注いでくれた人達を愛し、今度は自分が愛情を注ぐ番だという。裏切られてもなお、自分の中が愛情で溢れそうになっているという。熱いのか冷たいのか分からない彼女の体温によって綴られた文章が、かえって彼女の力強さを印象づける。
何故「氷の世界」ではなく、「氷の楽園」なのか。それが読み進めるにつれてよく分かってくる。そして、「破壊から再生へ」で度々語られ、「氷の楽園」と対になる概念として登場する「輝く草原」の姿が徐々に見えてくる。



文字数の関係でカットされた部分もあるようだが、その部分も読んでみたいと思った。何故彼女が書くことに執念を燃やすのかの答えがここにある。いくつかの試練はあったものの、彼女に比べればまったく甘ちゃんの人生を送ってきた僕からすれば、彼女は立派に自尊心を持って生きているように思える。もしかすると、僕達が考える「自尊心」が失われたからこそ、本当の意味での自尊心や純粋さを獲得できたのかも知れない。月並みな「自尊心」の持ち主なら、一連のエピソードを同情を誘うための苦労話として書いただろう。しかし、この本は違う。彼女のブログのファンが多いのも納得できる。
そんな彼女の文章を、僕は本人と一緒に人前で朗読するのである。これはなかなかのプレッシャーではある。僕のように心が汚れきった人間が、ちゃんと彼女の言葉に込められた純粋さを表現できるのだろうか。来月になったら稽古をすることになっているので、それまでの間によく読み込んでおかなくてはならない。
RENさんの言葉を、僕とRENさんの「声」で聞くと、どのような形になるのか。
是非それを体験しに来てほしい。



夢色音楽祭vol.2『まふゆの陣』
2月12日(祝)
LIVE BOX Gaba-Sugoka(渋谷)
http://gaba-sugoka.comhttp://gaba-sugoka.com

11:30 open
12:00 start

料金
前売・当日 2000円+1dr500円

出演
Tears Rain
松坂南
坂元瑛美
息吹肇with REN

and more …

※息吹肇with RENの出演時間は未定です

お申し込みは、息吹まで直接ご連絡下さい。



Favorite Banana Indiansサイト

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