昨日は、Facebookで繋がっている方が出展している展覧会に行ってきた。「日本の美術」という展覧会で、これは日本人の様々なアーティストの絵画(洋画・日本画・彫刻等)を展示するもので、審査員と来館者による投票?により、アワードが決定されるという。1995年から続いていて、今回が22回目だ。展示されるためには審査があるのだと思う。
美術館に行ってみると、本当にたくさんの作品が展示されていた。お題があるわけではないので、それぞれが自分の思いのままに表現したという感じである。絵画だけをとってみても、日本画と洋画の違いは勿論、同じ日本画の中にも様々なタッチがあり、抽象的なものから写実的なものまで幅広かった。洋画も然りである。所謂抽象画というのも結構あった。僕の知り合いの方も抽象画を出展していた。



僕は美術館にはあまり行かない。理由の一つは、あの人の多さだ。じっくり鑑賞しようとしても、後ろからどんどん人が来るので、立ち止まるわけにもいかない。人混みなので、離れて鑑賞することもできない。解説文もろくに読めない。結果、作品を鑑賞したという実感に乏しいまま、美術館を出る羽目になる。僕が行こうとするのが、話題になっている大きな展覧会ばかりだから悪いのかも知れないが、昨年の伊藤若冲展などは最悪だった(僕は行っていないが)。入場に3時間待ちということもあったそうである、常軌を逸しているとしか思えない。また、僕は演劇や映画等の「動く芸術」の方が好きなので、基本動かない絵や彫刻・オブジェにあまり食指が動かないのである。
加えて、僕にはそもそも絵心がない。だから、絵のどの辺に焦点を当てて見ればいいのかが分からない。そんなことは考えず、むしろ感じるだけでいいと分かってはいるのだが、ついつい「解読」しようとしてしまうので、余計に面白味が分からなくなる。



しかし、昨日の展覧会を見て、どうやらそれは、自分の感性が何を求めているのか、何に反応するのかよく分かっていなかったからだということが分かった。何故なら、昨日見た展示は、まさにノン・ジャンルだったからである。普通、展覧会は1人の画家(芸術家)、または同じ方法論の画家を集めたもの(印象派の展覧会とか)、同時代の何人かの芸術家で構成するもの等、大概テーマが決まっている。だから、方法論が似ている人達の絵が並ぶことになる。しかし、昨日の展覧会は、平たくいえば「てんでんばらばら」。何の縛りもないので、それぞれの個性の違いが際立つのである。上手い下手の話ではなく、よくもまあここまで違うものだと思わせるようなバラエティに富んだものだった。絵本のイラストのような絵の隣に、いきなり何の形か分からないような、抽象的なタイトルが付いたものが並んでいた。
しかし、考えてみれば当たり前のことだ。絵や彫刻やオブジェといったものには、表現方法がたくさんあり、それをどう取り入れるか、どう組み合わせるか、どうアレンジするかは、アーティストごとに違う。有名な画家になると、大抵単独の展覧会になるから分かり難くなるが、ゴーギャンの隣にケランジェロとか、ピカソの隣にボッティチェリとかが並んでいたら、その違いは明瞭である。それと同じことなのだ。(1人の画家が、生涯のうちに画風を変えていく場合も多く、そういう人の展覧会だと、同じ画家が描いたとは思えないような、全く違ったタッチの絵が並ぶことになる。)
全く違うものが並んでいるのを見ることで、自分がどんな表現により強く惹き付けられるかが分かる。それでいくと、どうやら僕は抽象画が好きらしい。何処かの風景や人物画、ファンタジー的な世界を含めて、何か具体的なものが描かれているよりも、一見すると何だか分からず、タイトルを見るとさらに分からなくなる、そんな絵が魅力的に見えるようだ。これは発見だった。



僕は、小説でも芝居でも映画でも音楽でも、比較的分かりやすいものを求める傾向にある。だから、芝居でいうと寺山修司、暗黒舞踏系、音楽でいうと武満徹などは、あまり魅力を感じない。といいつつ、かつて、夢の遊民社の野田秀樹さんの芝居が分からないという人に、僕は「全てを理解しようと思わず、絵を鑑賞するのと同じように見ればいい」とアドバイスしていた。しかし、それは遊民社の舞台には、割と入りやすい部分が用意されていたからこそ成り立った。別の言葉で言うと、絵解きができる絵だったのである。判じ物のようなものだ。
要するに、僕はどこまでも「意味」に支配されている「ロゴス」の人なのである。
それなのに、こと絵については、全く逆のものを求めていた。何故なのか不明だ。それこそ、説明がつかない。ただ、好きだとしか言いようがない。しかし、もし僕が絵を描くとしたら、抽象画は描けないだろうなとも思う。
何にせよ、芸術は奥が深い。これだけ表現したい人達がいて、表現形態のバリエーションがある。当然、ここに出展されていない作品もたくさんある。他の美術館に行けば、また違った作品がたくさん展示されている。あらためて、そのことに驚いてしまう。



自分がどんなものを心地よいと思い、どんなものに接すれば自分の中にエネルギーが湧いてくるのか、何に魅力を感じるのか、それを知るためには、広く浅くでもいいので、多くの芸術作品を知り、触れてみることが大切だと思う。これは全てに通じる話だ。今まで知らなかった感動に出会えれば、それは今まで知らなかった自分と出会ったことにもなるだろう。
もっと美術館に出かけ、映画館や劇場に足を運び、書店や図書館で本に親しみ、コンサートホールやライブハウスに通いたい。勿論、日本だけではなく、異国の地でも。そんな生活ができれば、人生豊かになるし、もっと奥行きのある作品が生み出せるだろう。
お金や時間がいくらあっても足りない。



日本の美術展は、今日の12時で終了してしまった。次はどんな人達の、どんな絵画やアート作品が展示されるのだろうか。



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