今月の25日に「朗読ファイトクラブ」というイベントに出場することになったのは先日書いた。久し振りに演者としてステージに上がるので、それなりの格好はしなくてはいけないと思ったのだが、手持ちの服でこれというものがない。そこで、「セルフコーディネート」を頼むことにした。株式会社ライフブランディングというところで、スタイリストの方とみっちりお話をし、ファッションについての基礎の講義をマンツーマンで受け、採寸をしてもらい、最後に服を選んでもらった。
実際に選んでもらったものを着てみると、普段の僕から随分と印象が変わるのが分かった。ファッションによってこうも見え方が違うものかとあらためて知らされた。



スタイリストはそれで服を買ってもらって商売をしているので口が上手い。しかし、まったく真実を語っていないわけではなく、参考になる話が随分あった。その人の言葉で印象的だったのは、
「ファッションもコミュニケーションツールです」
というものだ。
男性は女性ほど着るものに関心がない(人が多い)。それは、ビジネスシーンのような謂わば「お決まり」の時以外は、自分をどう見せるかをあまり考えていないのが原因である。婚活の時、初対面の女性に会うのにTシャツにジーパンで来る男性が実際にいるらしい。公の場ではないので何を着てもいいと思っている。「カジュアル」の意味を誤解している。そういったことがあるらしい。一方、女性はファッションも髪型も相手にどういう印象を与えるのかを第一に考えて選ぶ。TPOで変えるのは当然のことだ。「自分はこういう人間(女性)です」というのを外見で発信するのを重視しているのである。
だが、男性も本来は女性と同じように考えて然るべきなのだ。どんなに中身が素晴らしくても、服のセンスがダサかったり髪の毛が放りっぱなしになっていたりすれば、それだけで印象が悪くなってしまう。内面を分かり合う手前でコミュニケーションを拒絶されてしまうのである。



内面と外見はまったく切り離されているものではない。「美女と野獣」の世界はどこまでもおとぎ話である。現実の世の中では、野獣は野獣としてしか認知されない。だからこそ、何を着て、どんな髪型をして、どんなアイテムを使うかに気を配らなくてはならないのである。僕達が芝居の現場でこの役はどんな服装にして、どんな履き物で、どんなアイテム(小道具)を持たせるべきかを役者や衣装さんとともに綿密に検討するのも、その役を表現する重要な手段だからである。
僕は「セルフブランディング」で自分自身を売っていかなくてはならないので、この点に関しては今までの何十倍も何百倍も気を遣う必要がある。その取っかかりとして、今回スタイリストさんにご相談したというわけだ。この年になって今更という感がないわけではない。何年か前にも同じようなことを考えて、やはり違うスタイリストさんにお願いしたことがあったが、僕が病気になったこともあって長続きしなかった。婚活をしていた時も服装に関してのちょっとした講座を受けてはいたのだが、後々に活用したとはいえない。



何事も第三者の目は大切だと思った。まずはここで僕自身のファッションの基礎を固めて、その上でどんな応用ができるのかを探っていくようにしたい。
といっても、勿論スタイリストさんがつくとそれなりにお金はかかる。僕もいい歳なのでそれなりの値段のものを着る必要があるが、懐具合との兼ね合いもあるのでそうそう贅沢はできない。それなのに、僕の体型ではシャツやジャケットは既製品でスタイリッシュに見せることはかなり難しいと宣言されてしまった。となると、オーダーメイドしかない。僕はそもそも着るものに金がかかるようにできているらしかった。困ったことである。
しかし、相談してよかった。僕がイメージしていた「舞台衣装」的なクリエーターのイメージとスタイリストさんのイメージはかなり違ったが、さすがにプロの方が正しいと実際にサンプルを着てみて分かった。
当日見に来ていただいた方は、「なるほど」と思うだろう。
素材や形の違いによる見え方の違いといったことは、頭では理解しているつもりでも具体的にどういうことかはイメージできていなかった。それも今日ある程度は確認できた。



ファッションは本当に奥が深い。本来は髪型もヘアメイクさんについていただきたい位である。
それはきっと、自分の見せ方(伝え方)が何通りもあるというコミュニケーションの奥深さの表れであろう。言葉によるコミュニケーションでも、語彙や表現方法をたくさん知っていた方が、より的確にかつ多様に伝えることができる。
また、外見を変えることで内面を変えることもできる。これもまた大切なことだ。
今日鏡で見てみて、「馬子にも衣装」ではないが、僕も着るものによってそれなりに見られるようになるんだなと実感した。素直に嬉しかった。
ただし、そう見せるためのシャツとジャケットに関してはオーダーメイドになるのだが。



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