ホテルに限らずレストランでお気に入りの
傘を傘立てから持ち去られた経験は
誰しもあるだろう傘立てには
『お客様の傘の保管については
一切当店は責任を負いません』と
書かれてあることが殆ど
実はこんな場面ではどう考えるかを
示した条文が商法に存在するのだ。
文語体なので口語体に翻訳すると
・商法594条1項:ホテル・レストラン・銭湯
その他多数の客がやってくる施設は
『客から預かった』物が無くなった
場合には不可抗力以外は賠償
責任を負う(例:ホテルのクローク)。
・商法594条2項:客からハッキリ
預かっていなくても、客が『施設内に
『携帯してきた』物が無くなった場合、
【施設側の不注意により】無くなった
場合には賠償責任を負う。
・商法594条3項:客の携帯品に
ついて責任を負わないと告知して
いても前2条の責任は免れられない。
・商法595条:お金など高価なモノに
ついては、予め種類と価額をハッキリ
預ける際に明示しておかないと、
たとえ無くなっても施設側に賠償
請求することはできない。
先ほどの傘立ての例で言えば
『客から預かった』といえる形態で
預けられていたならば無くなった
際は原則賠償責任を追及できるし、
『預かった形態でなくても施設の
不注意で』携帯した傘が無くなったと
言えるときには、同様に賠償責任を
追及できることになるのだ。
商法595条に関しては、神戸
ポートピアホテルで、宿泊客が在中品が
3000万円弱の宝飾品であることを
告げずベルボーイにバッグ2つを部屋に
運ぶよう依頼した後、当該バッグが
盗まれた際、宿泊約款の〈予め
種類や価額の明示がなかった
場合には15万円を賠償上限と
します〉という条項の適用範囲が
争われたケースがあり、最高裁
2003/2/28判タ1127号112頁は
ホテルに故意重過失あるときは
(寄託の有無に関わらず)
(商法595条もそして)当該宿泊
約款が適用されるものではないと
説示した↓
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130618068711.pdf
ちなみに物品運送に関する(商法
595条と同旨の)商法578条において、
商法578条もそれを敷衍した賠償額
上限を画する約款も、債務不履行
責任を問う場面のみならず不法
行為責任を問う場面についても
適用されると最高裁1998/4/30
判時1646号162頁は説示する↓
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130757760235.pdf
消費者契約法8条1項2号4号が
その後設定されたので、上記
判例の意味は希薄化してしまった
けれども、商法594条自体は
知っておいて損はないと思う
なお商法594条2項の不注意が
軽過失と同程度の意味なのかに
ついてはハッキリした裁判例は
見当たらなかった
ベルボーイへの指示自体は
寄託には該当しないだろうが、
バッグの中身が宝飾品である
ことを知らされなかったがため
軽率な取扱をしてしまい、まんまと
フロント近くに置いていたバッグが盗難
されたことをもって、重過失とみるか
軽過失にとどまるとみるかは評価の
分かれるところだろうから、差戻に
なったのであろう。差戻審は和解で
終結したとの話である。
ろぼっと軽ジK